ATMになった男暗号資産編
あれから1ヶ月たった。
強盗犯がきてからである。
謎の強盗犯は警察達に捕まって今頃檻の中だ。
だが、気になる。
あの時、確かにATMの、自分の体にUSBメモリらしきものが、接続されたのだ。
中身が気になるが強盗とはいえ、プライベートがある。
勝手に中身を覗きこんで、家族との写真だらけだったら泣けてくる。
もし、ちょっとエッチな写真だったら、ドン引きである。
何か爆弾的な物の、作り方だったら、責任を、持って、データを消去しておきたい。
うん??誰だろう。
強面の男が、自分の体付近を何やら覗きこんでいる。
銀行の警備が、何かお探しですか??と聞いたら、テメェここら辺で、USBメモリみてないか??昨日落としたんだが。と言った。
昨日は強盗事件で警察の捜査が入りましたから、もしかしたら、警察に、、、。
舐めてんのかてめぇ、あれがどれだけ大事なものだと思ってる。
警察が持って行っただと、それじゃあ、あのメモリは警察に交渉しなきゃあ帰ってこないっていうのか??ふざけんな。と自分に思いっきり蹴りを浴びせてきた。
コンニャローとご利用のボタンを押して下さいとこちらも挑発するも、人睨みで、またのご利用をお待ちしておりますと、アナウンスを切り替えた。
おい、警備員。もしUSBメモリみつけたら、ここに連絡しろ。警察には言うんじゃねぇぞ。
うっ、怖い。
警備もATMも真っ青である。
これで分かった、あんな強面の男が探す位だから、中身は、凶器の作り方のマニュアルが入ってるんだ。
じゃなきゃあ、強面自体が来ない。使いの者でも良かったはずだから。
まあ接続されてるんだし、一応見てみるか。
ちゃんとウイルスバスター全開にして、そっと見てみよう。
うん??パスワード。
パスワードが聞かれた。
しかも結構高難易度のパスワード。
結構ガードが固い。
確かにさっきの強面も、格闘技経験者っぽくて、ガードが硬そうだったって何のこっちゃ。
自分はATMだ。コンピューターの塊だぞ。
こんな暗号位、解いてやらぁ。
お客さんには、故障のアナウンスをして、一心不乱にパスワードを解き出すATM。
分かった。解けた。
パスワードが分かったので恐る恐る中身を覗いてみた。
中身は暗号資産だった。
ATMも人間だった頃、ちょっとだけ、暗号資産をやった事があって、金額をざっと、算定してみた。
63億円位。これは不味い。
さっきの強面が探す訳だ。
この大金どこから。
強面が社長さんで稼いだ??
いや稼ぎにしては多すぎる。それに、商売をしている風格ではなかった。むしろどこか後ろめたさを抱えてそうな人間だった。
どうしよう。また強面が来て、自分の体を壊して、USBを探そうととしたら。
ATMが壊れてしまう。
その時、自分は??意識は残る??自分という存在は残る??人間に戻る所か御陀仏になりやしないか??
いっその事データを消去しようか。
でも、強面にはデータが消去されているかどうかは中身を開けるまで分からない。
万事休す。終わった。
そう思っていると、何だかガタイのいい人がきた。
このATMか。壊れやすいATMってのは。
そうなんです。よく故障して、現在故障しておりますって、アナウンスばっかりで、今日も仕事になりやしない。
なら内の支店で扱う。
故障中の方が便利な時もある。
まだ使い道はある。
何だ。どこに連れて行くんだ。
おーい。
うん、寝てたのか。ここどこだ。
海の音がする。
一体何が起こったんだ。
自分は何処へ向かうのか。