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異世界転生・転移関係

同人作家、異世界に転生する

作者: よぎそーと
掲載日:2024/01/11

「さーて」

 迷宮から帰還、報酬も確保。

 この先数ヶ月は働かなくて済む。

 あとは筆を手に取り紙と机に向かうだけ。

「やるか」



 異世界転生してきて19年。

 迷宮に挑んで稼ぐようになって5年。

 そこそこのレベルになり、稼ぎも手に入れた。

 そうなればやる事は一つ。

 本作りである。



 もちろん、ご大層なハードカバーの書籍を作るわけではない。

 紙を束ねただけの簡単なもの。

 ホント言うよりは紙の束という方が近い。

 いわゆる、薄い本。

 それが転生者が行ってる作業。

 前世に続きこの世界でのライフワークである。



 すなわち、同人活動。



 前世の日本において、転生者は同人作家だった。

 とはいえ、鳴かず飛ばずの底辺。

 ネットにあげていた絵や漫画はそれなりに評価されたが。

 結局、プロにもなれず、同人界隈でも底辺だった。



 そんな転生者は僅かな稼ぎで生活を支え、趣味に全てを捧げていた。

 オタクの鑑というか、駄目人間というか。

 両者の特性を存分に発揮した彼は、描きかけの原稿の上に突っ伏する最後を遂げた。

 趣味に準じた者としては天晴れというべきだろう。

 人間としてはどうなのだろうと疑問符が付くにしてもだ。



 そんな彼は前世の記憶を持ったまま転生。

 迷宮と怪物の存在する異世界にて再び生まれた。

 この世界でも彼は、好きな事に人生を注ぎ込む事にした。



 幸い、この世界には迷宮がある。

 怪物がその中にいる。

 怪物を倒せば金が稼げる。

 食い扶持にはこまらない。



 しかも。

 ここが重要なのだが。

 やろうと思えば稼ぎは青天井。

 いくらでも積み上げる事が出来る。



 その理由はレベルだ。

 この世界、ゲームのようにレベルが存在する。

 能力を上げる事が出来る。

 そして、レベルを上げれば怪物を倒しやすくなる。

 稼ぎをより多くする事が出来る。



 なので同人作家だった転生者はひたすらレベルを上げた。

 上げるに上げて、稼ぎを簡単に確保出来るようにした。

 本当はすぐにでも紙と筆を手にして本作りをしたかったが。

 まずは先立つものが必要だ。

 なので最初のうちは泣く泣く怪物退治に勤しんだ。



 そうしてレベルが順調にあがり、一人で日当数万円は確保出来るようになった。

 ここまでくればしめたもの。

 同人作家の転生者は稼ぎで宿の個室を確保。

 紙と筆も大量購入。

 自ら缶詰になる幸せな日々に突入していった。



 なお、この世界では宿の個室は贅沢品である。

 一泊値段はかなりのものだ。

 そこに長期間にわたって泊まってる転生者は良い客になっていく。



 だいたい、一か月ほど迷宮で稼ぎ。

 それから数ヶ月にわたって本を作る。

 このくり返しが男の基本的な生活形態になっていた。

 なお、一か月を費やす迷宮探索では、こもりっきりで過ごす事になる。

 奥に進めば滞在期間が増えるのが迷宮探索ではあるが。

 ほぼ単独で迷宮に籠もる転生者は、やはり変わり者とみられていった。



 そんな転生者は、一か月の労働機関を経て、再び宿屋に戻ってきた。

 紙もインクも予備の筆も確保。

 あとは描いて描いて描き続けるだけ。

 この一か月の間、本作りが出来なかったフラストレーションを叩きつけていく。



 そんな男の作ってる本は、ギャルで美少女で萌えなものだった。

 前世に続き、今生においても業を貫いている。



 そうして描かれた16ページの原稿。

 これを魔術式複写機によって大量生産。

 とりあえず50冊ほどの薄い本を作り出す。



 出来上がれば提携してる雑貨店に持っていく。

 試しにもっていったら店主が気に入ってくれた。

 出来るだけ卸してくれないかと頼まれた。

 願いを聞いて男は出来上がった本を雑貨店にもちこんでいった。



 これがかなり売れる。

 たいていは完売だ。

 日本円にして1000円ほどの販売価格なのにだ。

 しかも、一巻あたり500冊は売れる。

 これが前世だったらと思う事は何度もある。

 だが、ここまで売れるのも、競合相手のいないこの世界だからというのも分かってる。



 漫画のない世界だ。

 小説だってほとんど存在しない。

 そもそも、書物というのは貴族の贅沢品のようなものだ。

 一般庶民が手に取る事はない。



 そんな世界に、それなりに上手な絵による物語が登場したのだ。

 興味を持つ者が大量発生した。

 市場規模が小さいので販売部数はそれほど多くはないが。

 なにせ、今のところは迷宮前にある都市の中でしか出回ってないのだ。



 人口数万の都市での話だ。

 その中で、本や物語に興味がある者はまだそう多くはない。

 必然的に市場規模も限定される。

 むしろ、一巻当たり500冊も売れてるだけでも脅威といえる。



 今後、話題が更にひろがっていけば、更に売り上げも上がるかもしれないが。

 新聞も電話もない世界だ。

 情報伝達に時間がかかる。

 上手くいっても、結果が出るのは当分先になる。



 それでも男は構わなかった。

 売れると思って描いてるわけではない。

 好きでやってるのだ。

 生活がかかってるわけではないからのんびりやっている。



 そもそも、食っていくための手段としては効率が悪い。

 1000円の本が500冊売れてるのは脅威ではあるのだが。

 これでえられるのは50万円ほど。

 紙代とインク代と印刷代でほぼ消える。

 この世界、まだまだ紙もインクも高い。



 それなのに、一か月に一冊は新刊を出している。

 ほぼ無収入なのにだ。

 これを趣味といわずして何という。



 それでも転生者は後悔しない。

 好きな話を描いて、好きなだけ本を作る。

 それを求めてる者がいる。

 オタクとしてやり甲斐を感じる。



 そんな男はただひたすらに新作を作りつづける。

 売れるかどうかではない。

 やらずにはおれないのだ。

 男にとって筆を止める事の方が苦痛だ。

 頭に描いたお話を紙に記さない方が地獄だ。



 だからこそ血眼になっても描き続ける。

 睡眠や体力減少、腱鞘炎などを治療魔術でなおしながら。

 一日24時間を最大限に使いながら。

 食事も持ち込ませ、ただひたすら机に向かう。

 席を立つのはトイレにいく時だけだ。

 これだけはさすがにどうにもならない。



 そんな転生者は、ただただ描き続けていく。

 自分の欲望のままに。

 あふれる妄想を形にしていく。



 右手に筆。

 目の前に紙。

 頭に妄想。

 心に熱狂。



 転生者は止まることなく描き続ける。

 薄い本が作りたいから。



 そんな情熱も数ヶ月ほどすると止まる。

 生活費が尽きるからだ。

 そこで、泣く泣く迷宮へと向かう。

「なんで金がなくなるんだ!」

 馬鹿げた怒りを抱えながら。



「いっそ、レベルをもっと上げるか……」

 そしてもっと多く稼ぐ。

 稼いで執筆時間を多くとる。

「それか、迷宮入りしてる時間を増やすか……」

 単純にそうすれば稼ぎも増える。



 ただ、そうなると一時的に迷宮にいる時間を増やさねばならない。

 レベルをあげるために、稼ぎを増やすために。

 それはそれで本末転倒になってるような気もした。



「とりあえず、稼ぐか」

 結局どうするかは決める事も出来ず。

 この時も迷宮へと入っていく。

 そこに徘徊する怪物を求めて。



「待てええええええええ!」

 迷宮の中で転生者は叫ぶ。

 遭遇した怪物に向かって。

 なぜか逃げだす背中を追って。



 それはそうだろう。

 転生者の鬼気迫る顔と、漂う異様なオーラ。

 それを察した怪物は戦慄をおぼえた。

 こいつはまともに相手をしてはいけないと。

 生存本能が理性に告げていく。



 それに従って怪物は逃げるのだが。

 転生者が逃がすわけもない。

「俺の!

 金!

 稼ぎ!

 生活費!」

 転生者の目には怪物がそううつっていた。



「薄い本の、原材料!」

 間違ってはいないだろう。

 正しいかというと悩ましいが。



 そんな転生者は今日も迷宮を徘徊する。

 泣く泣くレベル上げを実行し。

 少しでも奥へと進み。

 より強い、より稼げる怪物を倒すために。



 やがて転生者は、一か月の迷宮探索で一年分の生活費を確保する。

 そうしてほぼ毎日を執筆作業に費やすようになる。

 そうして出された欲望の塊たる薄い本は、更に知名度をあげ、多くの人間が手にするようになっていく。



 ここから一般大衆にも創作文化がひろまっていく。

 俺もやってみたい、私もやってみようという者が出現していく。

 そうした者達が転生者に合流し、共に迷宮に挑むようになっていく。

 そんな創作仲間との集団を、転生者はサークルと称した。



「この世界でも同人サークルが作れるとは」

 感無量。

 自分に続く者達の姿を見る転生者の目から、一筋の涙がこぼれた。




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