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83波_執着と相応の対応

「ぬ!?」

「回避重視、全力遅滞戦闘開始!」

「ちょっ、鈴木君!?」

「いや助かる、抜けるぞ!」


 まぁ僕だって、今すぐここでどうこう、ってするつもりはない。だって、どう頑張ったって邪魔だからね。それに角井さんが待ち構えてたのは、大きな道路の真ん中だったから、周辺被害も出ちゃうだろうし。

 だからパペットを、絶対一瞬では倒し切れない数で出して、時間稼ぎを指示した。3万体。確かに籠家さんのパペットに比べれば経験も積んでないし、進化もしてなければ装備も持ってない。

 けど。


「――ドラゴンのブレスでも持ってこない限り、1秒百体も吹き飛ばせればいいところ。無視して走り抜けようとしても、パペットの重さは人と変わらない。数千人分の重さがかかれば、流石に鬱陶しい筈……っ!」

「1秒百体って何を想定してるの鈴木君」

「大型召喚獣でも、人間サイズの相手やと一度で10体が精々では」

「まぁ群れの中を走り抜けたらそんぐらいいくか?」

「でも走り抜けたらしがみついてくるんだろ?」


 戦力想定は、わたげかな……一度も進化していない宝石竜と、何度も進化した大型召喚獣だと、どっちの力が強いかは分からないけど。あと、わたげの場合本気になったら、しがみつけすらしなくなるんだけど。こう、風を纏えるようになったから。近寄るだけで吹っ飛ぶよ。相手が。

 とはいえ。流石に、素のパペットとはいえ、僕にとっても3万体は少ない数じゃない。緊張もあって大きく息を吐いている間に、どうやら上手く振り切れたみたいだ。

 もちろん、3万体なんて数、追いかけてくる角井さんの召喚獣と、攻撃されていた「シエルズメイド」の探索者さんの召喚獣の間には入らない。両方の周りにも含めてパペットは出現する。だからまぁ、多少蹴散らされたのは仕方ない。そこを躊躇いなく走り抜けてくれたから、振り切れたんだろうし。


「……追いかけてきてるんですけど」

「えっ」

「うわマジだっ!?」

「ていうか引きずってるあれってまさか」

「鈴木君、あれ君の指示?」

「ち、遅滞戦闘だと、ああやって重しになるのは有効だったので……」

「いやまぁお陰でスピード落ちてるけど」

「人より早い時点でおかしいのよ」


 という事で、休憩も兼ねてちょっとスピードを落としたら……後ろに、こう、人で出来た鎖か網みたいなものを、ずるずる引きずりながらこっちに来る、巨人みたいなのが見えたんだよね……。

 嘘でしょ? 3万体だよ? いやまぁそれなりの数は倒されちゃったんだろうけど、それでもこの短時間で動けるだけの数に減らしたって事?

 あ、でも、大鬼って確か、小鬼を召喚できるんだっけ? じゃあそっちも足止め戦闘してて、それを抜けてついて来れたパペットだけがしがみついてるって事かな? ……それでも結構な数がいる筈なのに、ほんと、何で追いかけて来れてるの?


「これ、どうするよ? 流石にちょっと逃げ切れるか怪しいが」

「つっても門環町に連れて入る訳にもいかんだろ」

「店長に連絡は?」

「してるけど応答無い。あっちも忙しいか妨害入ってる」

「ほんともう、そこまでするかよっつーな……」

「勝つ事が楽しいまではいいとしても、手段を択ばないのはアウトなんだよ」


 それでも何とか、せめて人が少ない場所に移動している大型召喚獣の背中の上で、僕を守ろうとしてくれてる『シエルズメイド』の人達はそう、相談してたんだけど。

 召喚獣には、どんなに離れていても、召喚主の声が届く。これはどういうことかって言うと、召喚主と召喚獣の間には、すごく細いけど魔力の繋がりがあって、それを伝わせてるからなんだって。

 まぁ、探索中にも、特にわたげは大きな技を使ったら魔力を持って行くから。そういう風に、魔力を届ける繋がりにもなってるらしくって。だからつまり、召喚主の方からも、その繋がりを頑張って辿れば、召喚獣がどこにいるか、大体の位置ぐらいは分かるんだよね。


「っ避けて下さい!!」

「は!? おっっわぁあ!?」


 だからさ。分かったんだよ。……僕が召喚したパペットが、絶対に出せる訳ない速度で、こっちに近づいてきてるのが。

 まだ僕は荷物の下で固定されてる状態だったけど、それでも顔を上げて大声を出す事ぐらいは出来る。突然の僕の警告に、それでも逃げる方向で召喚獣を走らせてくれてた人はぎょっとして振り向いて、叫びと共に姿勢を低くした。

 同時に、僕にも横方向の強い力がかかって、他の人が悲鳴を上げたのが聞こえた。たぶん、警告は聞こえても、それに対する反応が間に合わなかったんだと思う。


「あの、馬鹿力!!?」

「うっそだろ、パペット砲弾にするかよ……」

「あれ人間と同じ重さあったよな?」

「つまり人間砲弾も出来る……」

「止めろ、マジでやりかねねぇ!」


 まぁ、でも。

 流石に、パペットを力任せに投げつけてくる、なんてことをするとは、思わなかったかな。

 投げられたパペットが、それこそ、僕の目では見えない程の速度で飛んでいくとも思って無いし……。


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