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75波_日程完遂と、最終報酬

 光武さんは気絶している。こういう時はどうなるのかなと思ったんだけど、木透さんによれば、この時他に召喚できる召喚獣がいたら、ペナルティが追加される代わりに係の人が回復してくれるらしい。

 ペナルティって何だろう、と思ったんだけど、神様が審判をしてる試合なんだから、たぶん何でもありなんだろうな。それこそ、どんな不思議な事が起こってもおかしくない。

 観客席にいた人達の避難も大体終わったみたいで、会場にはローズさんの唸り声だけが響いている。うん。その。何というか。……怒ってるなぁ、って感じだ。気のせいか、ねぇそいつ焼いていい? 焼いていいよね? みたいな事を言ってるように聞こえるけど。


『――――試合終了! 試合終了の合図が来ました!』

『……驚き、というほか、ありませんね。ここで試合終了という事は、光武氏は、あのゴーストしか召喚獣がいなかったという事になりますが……』


 どうやら無事だったか、それともお仕事だからその場に残ったのか、実況と解説の人の声が響く。……ゴーストを倒したら、試合終了の判定が出た。もちろん光武さんは降参していないし、籠家さんも降参していない上に、パペットはまだ召喚できる。何より、怪我だらけでしんどそうだけど、それでもまだ、宝石竜のローズさんが生き残ってる。

 ローズさんの召喚権は、籠家さんに戻った。そして試合終了の判定が出たって事は、光武さんが召喚できる召喚獣がいなくなったって事だ。つまり、解説の人が言ったように、光武さんは、あのゴーストだけしか召喚獣がいなかった、って事になる。


「だろうと思ったわよ、あの小物ならその程度だわ」

「ドラゴン5体がいるなら、他の召喚獣は必要ないでしょうからね!」


 ……2人が、その。辛辣なのは元からだし。うん。

 ただこれで、籠家さんが御前試合の優勝者になった。それはすごい事だ。なんかちょっと、総合優勝決定戦の最後で、籠家さんが「緋薔薇の魔女」だったとか、ローズさんが籠家さんの召喚獣だったとか、神様が直訴を受けて召喚獣の貸し借りが出来ないようにしたりとか、色々あったけど。

 ここで僕は、ん? と思った。そうだね。籠家さんが優勝した。最後はちょっと色々、そう、あんまりにも色々こう、一気に色々な事が起こったし分かったから、大変だったけど。

 どうやら召喚獣は一旦送還されるみたいで、ローズさんの姿が消えて行った。そして係の人達によって光武さんが担架に乗せられて、外に運び出されていく。その間に、あれだけボロボロだった地面(床)は、本当に魔法みたいに綺麗に直っていた。


『それではこれより、優勝者を讃えて、景品の授与が行われます!』

『景品というか、神様にお願いを聞いてもらえる権利ですが。とはいえ、まさか謎のパペット使いがドラゴンを奪われた「緋薔薇の魔女」だったとは思いませんでした。既に余人が手に入れられるものはほとんど持っているとも言える彼女ですが、何を願うのでしょうか』


 あぁ、そうだ。これは御前試合。大勢の人が参加して優勝する為に頑張っていた理由は、神様がお願いを聞いてくれるから。少なくともダンジョンや召喚獣に関する事は何でもできる、ダンジョンをこの世界に作った神様が。

 すごい事の筈なんだけど、籠家さんが実は「緋薔薇の魔女」だったとか、ドラゴンを「とられる」と……今から考えると、たぶん「盗られる」だったんだろうな……言った意味とか、そういうのが分かってちょっと霞んでたけど。

 ……そう言えば、籠家さんは何をお願いするんだろう? と、今更ながら、僕は画面のこっち側で首を傾げたんだけど。


〈それじゃあ、事前の取り決め通り(・・・・・・・・・)。優勝賞品として、オーバーフロウの条件付き解放を行うよ〉


 初めて聞いた、神様の声。

 男の人とも女の人とも思えない、でも綺麗だと思える声。

 けどその声が知らせたのは


『は?』

〈条件1、レベル10以上のダンジョンが1ヵ月以上放置される事〉

『お、い。おい、ちょっと待て!』

〈条件2、レベル5以上のダンジョンが6か月以上放置される事〉

『何の話を、違う、事前の取り決めってどういう事だ!? 優勝者の願いを叶えるんじゃなかったのか!?』

〈条件3、レベル1以上のダンジョンで、クリアストーンを3つ以上内部に放置したまま探索者と召喚獣がいなくなる事〉

『っち、自動音声か! シエル! 今すぐ店に戻って避難所としての機能を始めろ!』

〈以上のいずれかの条件満たした場合、1分の待機時間の後でオーバーフロウが発生。内部のモンスターが全部いなくなるか、内部のクリアストーンが全部運び出されるまでオーバーフロウは継続〉

『木透さんもだ! 急いで探索者ギルドに移動して防衛戦の準備!』

〈今この時点から適用するよ。そうそう、参考までに伝えておくけど――〉

『鈴木君はシエルについてってその指示に従う事! 私はこのまま門環町の外縁部に移動する!』


 終わった筈の。

 お願いで止められて、もう起こらなくなった筈の。


〈――現在の該当ダンジョンの数は、97個だ。百個は越えてないね。これなら何とかなるんじゃないかな? うん。きっと大丈夫。じゃあ、頑張ってね〉


 悪夢が、復活する。

 そういう事だった。


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