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74波_両題決着

 すっかり赤い薔薇が全身に飾られたような、魔女姿は魔女姿なんだけど見慣れた真っ黒とは真反対な華やかな装備を着ている籠家さんは、まぁそれでも籠家さんだった。ちゃんと手加減はしてるんだろうし、余計な傷が増えないように配慮もしてるんだろうけど。

 何のことかって言うと、ユニーク進化したパペットがゴーストを引き剥がす為にローズさんと戦ってる間中、ほとんど下着みたいな格好になった状態で手足を厳重に縛られている光武さんを、うつ伏せにした上でその背中を杖で押さえていたからだ。

 もちろん、火傷しそうな熱さになってる床(地面)にそのまま寝かせてる訳じゃない。ちゃんとそこそこ厚みがあって、たぶん燃えない毛布を敷いた上に転がされてるから、一応怪我はしない筈だし。……まぁ、間違いなく暑いだろうけど。


「わ、大きい魔法陣が……」

「レンタル契約を解除する魔法陣ね」


 そう言えば、少なくとも召喚獣の筈のゴーストがローズさんから引き剥がされた辺りから、光武さんの声を聞いてない気がするけど……もしかして、気絶して、る?

 いや。いやまぁ。召喚した人が気絶しても、召喚獣の召喚は解除されない、けど。総合決勝戦は、探索者同士の模擬戦、その延長だ。で、探索者っていうのは、召喚獣を召喚して、指示を出すのが仕事。

 直接巻き込まれる想定はしていない……というか、探索者を倒されても召喚獣が何とかできるなら、それはそれで「有り」なんだと思う。何故なら、経験と学習も成長だから。


「一瞬籠家さんの魔力を心配しましたが、そういえば召喚獣のレンタル契約って方法によっては本来の召喚主が負担はそのまま担当するとかいう風にも出来た筈ですね……!」

「そうね。まぁそうでなければ、あんな大技を強制する事なんてできないでしょうけど。負担が半分でもあの男にいっていたら、その時点で倒れてるでしょうし」

「……わぁ」


 うん……その……だよね、としか……。だって、今の僕でも、奥の方で急に難易度が高くなるレベル5とかのダンジョンで、わたげが全力ブレスを撃ったら、結構ごそっと魔力を持って行かれる感覚があるし……。

 その時の周りも、すごい事になってたけど。ローズさんの「サンフレア」は、絶対にどこからどう見ても、今のわたげの全力ブレスより威力が上だ。って事は、それ以上に魔力を持って行かれる筈で。光武さんが、本当にドラゴンを召喚できるだけの魔力を持っていても、平然と耐えられる訳がない、と思う。


「……。あれ? って事、は、あの大技の影響、籠家さんに出てるって事じゃ」

「あっ!?」

「……あのタイミングだと、鈴ちゃんは装備を変えていたところでしょうし。最低限の手当ては自分で出来る筈だし、流石に自分で自分を応急手当てするのは係員だって止めない筈よ」


 というか、よく考えたら、その後動きが変わらなかった籠家さんは、あの大技を出す分だけの魔力を持って行かれるのを平然と耐えたって事じゃ……? と思ったところで、門崎さんが言っていた事を思い出した。

 そう。あの分厚い透明な壁、観客席を守っていた結界を割らせる(・・・・)為の一撃。あの大技は、そう使われた。そしてそんな事をすれば、召喚主だってただでは済まない、とも。

 まぁよく考えたら光武さんもただでは済んでいなかったんだけど、あれは結界を割る時の余波というか、観客席を守る結界を割るなら、それより近い場所でそれより薄い待機場所の結界は当然割れるよね、っていう話というか。


「……もしかして、籠家さん、怪我したまま動いてるとか……?」

「あの服の下があちこち火傷だらけでも納得しかないんですが……!」

「鈴ちゃんってそういうとこがあるわよねぇ……」


 門崎さんまでそういうって事は、籠家さんに対する推測というか印象というか、籠家さんの癖みたいなものは間違ってないみたいだ。

 何で僕がそう思ったかって言ったら、その、飛行訓練をしてる頃のわたげが、うっかり勢いをつけすぎて籠家さんとぶつかっちゃった事があって……。その時も見た目は普通だったんだけど、家に帰ってマントを脱いだら、ちらっと服の下がすごい青痣になってたのが見えちゃったんだよね……。

 無理してるかもしれないんだ……。みたいな事を思っている間に、そこそこ長い時間出ていた魔法陣は消えた。という事は、これでたぶんレンタル契約は解除されて、ローズさんは籠家さんの召喚獣としての立場に戻ってきた筈だ。


『ローズ、待て』

『ガゥッ』

『ヤるならこっちじゃない、そっちだ。流石にもう試合も終わりにしていいだろうしな』

『グルル……』

『アッーちょっと待ってローズさん待って召喚主ねぇ待って流石にゴースト抑え込んでる以上は俺逃げられないんだけどねぇ! ねぇ!? 全力ブレス準備しないでほら今周りに結界無いから他の人も巻き込まれるし!?』

『ちゃんと狙えよ』

『召喚主!? 召喚主ちょっといや俺の扱いが雑なのは進化前からだけどねぇこれマジで俺も直撃コースなんd』


 ……戻って来た瞬間に、ローズさんが動きの無い光武さんに攻撃しようとしたのは、籠家さんが止めたからセーフとして。


「……あれ、絶対「殺」るって言ってましたよね」

「言ってたわね」


 籠家さんの指示というか誘導というか。そこのちょっと普通とは違う発音について、木透さんと門崎さんがそんな事を言っている間に。

 ユニーク進化したパペット、という、結構希少な筈の存在である、ゴーストを引き剥がして押さえ込んでいた召喚獣ごと。

 本気の、けど、範囲をしっかり一部に絞って……その分だけ威力の上がったブレスが、光武さんの召喚獣であるゴーストを、文字通り消し飛ばした。


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