69波_現状に至る推測
「ドラゴンを召喚した人は合計6人。属性は違うけど、どう頑張っても周辺被害が出るドラゴンを1人で育てるのは無理。そう判断した人が育扉市を走り回って声をかけて、ドラゴンを召喚した人と協力してくれる人を集めて、クランの元みたいな感じで繋がりを作ったの」
「もしかして、探索者ランクの「カラーズ」という呼び方の原型となったという!?」
「あれはまぁ大体神様が悪いのだけど、そうね」
びっくりな情報が出てきた。ドラゴンを召喚した人は6人もいたんだ。……6人? とちょっと思ったけど、まぁそれは置いといて。
「ドラゴンを召喚した人達は、協力してくれる人と一緒にダンジョンを攻略して、攻略して、攻略して、神様に色々なルールを追加してくれるようにお願いした」
「そうですね、今はオーバーフロウは起こりませんし、結界石は破られませんし、空き家の撤去は別としてダンジョンが出来ても観測されず放置されてればそのうち消えますし!」
「えっ」
「あら、鈴木君は知らなかったの? ダンジョンが出てくるようになった直後は、ダンジョンは観測しなくても入れたし、オーバーフロウを起こしたし、召喚準備室も無かったのよ」
「召喚準備室も「カラーズ」の人達のお陰だったんですか!?」
「ついでに言うなら探索者ギルドの立ち上げと、召喚部屋の設置許可も「カラーズ」による追加ルールよ」
「…………神様って、思ったよりずっと、こう、大雑把だったんですね」
「そうね」
う、わぁ……うわぁ……。
確かに、育扉市に戻ってからは、オーバーフロウの注意をされなくなったな、とは、思ってたけど……そうだったんだ……知らなかった……。
あ。もしかして、だから? だから「観測が先」で「固定が後」だったり、する? そこにある、って事を決めないようにして、オーバーフロウが……モンスターが外に出てくる、って事を阻止してる……?
「でも、ある日突然「カラーズ」は解散、主体となっていたメンバーが行方不明になって消滅したわ」
「それだけのことを成したのに噂話しか残って無いって時点で不穏な気配しかしません……!」
「じゃあ、鈴木君。その理由、当ててみて頂戴」
「へっ!?」
嫌な予感しかしないっていうか、たぶんそれって……って思ってたら、いきなり門崎さんが僕に話を振って来た。木透さんも勢いよく僕を振り返ったから、びっくりする。
え、え? 何で僕? ……あ、いや、そうか。門崎さんは、ドラゴンを召喚した人、としか言ってない。でも僕は、それが光武さんではない、って確認した。それ自体は正解だったけど、普通はそうは思わない。
だって、光武さんはドラゴンを召喚しているから。5体同時に召喚していたから。だからきっと何か知ってるんだろう、か、それか、推測出来る何かを知ってる、って事になる、から……。
「……その。籠家さんは、髪を1つにまとめてるんですけど」
「そうなんですか!?」
「は、はい。長さは、腰ぐらいかな……? それで、その、髪を束ねてる髪留めが……あの、ローズって呼ばれたドラゴンの鱗と、後は、赤くなった服の色と、同じだったから……」
「そう。そうね。そうよ。だってあれも私が作ったんだもの。一式をセットにするのは当然でしょう?」
「そうなんですか!? 私は見た事が無いんですけど!」
……わたげの事は、話していない。だからそのまま、内緒にしておくことにした。内緒にしていても、おかしいと思うには十分な事を、ヒントになるだろうことを、知っていたから。
「もっとも、私も鈴ちゃんから聞いた限りの話になるのだけど。あの時は、召喚獣のレンタルっていうのが可能だったのよ。あいつは……あの男はそれを利用して、ドラゴンを召喚した6人の内、5人から。ドラゴンを、掠め取ったの」
あぁ、そうなるんだ。
だって籠家さんは言っていた。ユニーク進化したパペットが聞き返した時に、「無許可無承諾のレンタル契約を破棄させ」って。たぶん、それが「利用された」、召喚獣のレンタルってやつなんだろう。契約で縛られてる、っていうのも、たぶんそう。
……とすると、諸悪の根源を剥がすとか、魔王が憑依型、っていうのは、何だろう?
「あの男の召喚獣は、私は知らなかったわ。今でもドラゴンを盾にして隠してる。だからこれは鈴ちゃんの推測になるのだけど……どうやら、憑依能力に特化させた、ゴーストらしいのよね」
「え?」
「はい!? いえ、まさか、そんな訳がないのでは!?」
「あくまでも推測よ。……鈴ちゃんは、確信しているようだけど」
「いえでもっ! 憑依能力特化は、ちょっと無理があるというか、あり得ない気がするんですが……!?」
珍しく木透さんが強く否定するな、と思ったんだけど。
「だって、憑依能力に特化させても、モンスターには憑依できないんですよ!? 上げたところで役に立たない能力値筆頭じゃないですか! それが分かってゴーストの召喚獣を持つ探索者が声を上げたら、ゴースト系召喚獣に限って能力リセット権が与えられた程度には神様からしても役に立たない能力ですよ!?」
……それは、むしろ、何で最初はそんな能力があったんだろう? って、思うぐらいの理由だったみたいだ。