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67波_総合決勝戦(再開)

 召喚獣は、その名の通り基本的に、人間ではないものになる。人型という区分はあるけど、それは武器を持てるかどうかとか、二足歩行をするかとか、そういう意味だし。そもそも、同じ種族が見た目違いで、モンスター(敵)としてダンジョンに出てくるし。

 それにやっぱり人同士が戦うのは良くない……って思ったかどうかは知らないけど、少なくともモンスター(敵)として「人間っぽい」相手は出てこない。出てきても、まぁ、ゴブリンとかコボルトとか、もしくはリビングアーマーとか、そういう感じだ。

 それでいうと、確かにパペットは人に近い。人形みたいだし。でもだからって、肌の色もちゃんと人間の範疇で、周りを見回す動きも人間っぽい、あの召喚獣は……本当に召喚獣なのかな?


『え、何ここ。召喚主、どういう状況?』

「喋った!? 門崎さん召喚獣が喋ったんですけど!?」

『あのバカがローズに自分中心のサンフレアを使わせた』

「籠家さんが普通に応答してる!? 待ってどういう事ですか!?」

『うわぁ大惨事。……え!? ローズさんいるじゃん!? ようやく見つけたの召喚主!?』

『ようやく見つけたというか、ようやく引きずり出した、だな』

『なるほど。要するに俺がトドメを刺して来ればいいと』

『ダメだ。神直々に裁かせないと後追いが出る』

「あ、無理です。情報が多すぎます。一旦考えるの止めますコモリヤサンスゴイナー」


 木透さんがこわれちゃった……。


「戻ってきなさい。それに、そんなに驚く事じゃないわ。ギルド職員なら聞いた事ないかしら。ユニーク進化した召喚獣は喋るっていう話」

「……はっ! あ、えーと、確かに? 聞いた覚えがあるような無いような」


 相変わらず僕を挟んで座ってる門崎さんと木透さんなんだけど、頭の上ごしに会話するのは止めて欲しい。何でって言われると……背が、いやその特にこれと言って理由は無いんだけど。

 ……というか、今門崎さん、何て? ユニーク進化した召喚獣、って、言った?

 いや。いやまぁ、知ってるよ? うん。召喚獣のユニーク進化。ただそれって、普通に戦ってるだけじゃなくて、何か特別な行動とか、装備とか、アイテムとか、何ならすごく珍しいモンスターを特別な状態で倒さないといけないとか、そういうものだった筈なんだけど……。


『でも待って召喚主。手負いとはいえ俺だけでローズさん相手しろって言ってる?』

『倒せとは言わない。援護はするから、ローズが死なない程度に時間を稼げ。その間にあいつを丁寧に傷つけて穏便に気絶させるか、無許可無承諾のレンタル契約を破棄させた上で諸悪の根源を引き剥がす』

『それは普通無茶ぶりって言うんだよ召喚主! 攫われたお姫様を傷つけないのは勇者として基本中の基本とはいえ、そのお姫様が魔王を兼ねてるなら話は別!』


 ……って事は、この、今もこう、どこからどう疑問を質問にすればいいのか分からない会話をしてる、あの不自然に顔が見えない「人」は、ユニーク進化した召喚獣、って、こと?

 じゃあその場合、進化元は……パペット?


「…………パペットって、ユニーク進化したら人になるんですね」

「いや人にはなってないと、うぅんちょっと私も自信が無くなってきました……!!」

「落ち着きなさい。とても流暢に喋ってはいるし固有名詞がある筈だけど、あれもまだ種族はパペットよ」


 あれでパペットなんだ……。

 どう見ても人にしか見えないし、頭を抱えたり籠家さんとドラゴンを交互に見たりってすごく賑やかに動いてるけど、パペットなんだ……。

 …………そう言えば、僕が初めて見た籠家さんのパペットも、言葉は一言も喋ってないのにすごく賑やかだったなぁ。そんな感じかな? そんな感じじゃないかな。うん。きっとそう。たぶん。


『契約で縛られてる上にその魔王が憑依型だってだけの話だ。――っていう事だから審判、いや神、話は聞いたな? 召喚獣のレンタル契約、私は承諾してないぞ。今すぐ確認を……もう始めてる? よし』

『よしじゃないよ! いやまぁもう時計が動いてるのはいいニュースだけど、それってつまり魔王側も動くってこぉぁあ――――っ!?』


 そうかな……? そうかも……。と、急に詰め込まれた情報を僕が何とか飲み込もうとしてる間に、ユニーク進化したパペットが……たぶん籠家さんを抱えて横方向にダッシュした。

 一瞬後、その場所を真っ赤な炎が通り過ぎていく。何の炎、なんて、言うまでもない。クレーターの真ん中でうずくまっていた、ローズって名前のドラゴンが、ブレスを吐いたんだ。

 よろよろしながらも立ち上がって、治り切ってない傷口から血が出るのも構わず、クレーターから這い出して来る。……それは、どう考えても普通の状態じゃなくて。


「ここからはしばらく時間稼ぎが主体でしょうし、ここには鈴ちゃんの身内しかいないから……ちょっとだけ、昔話をしましょうか」


 言葉自体は聞こえていた。意味が分からなくても、何を言っていたのかは聞いていた。あまりにも訳が分からな過ぎて、どこからどう聞いたらいいのかすら分からなかったけど。

 だから、門崎さんの「昔話」っていうのは、たぶん。この、一気に山ほど詰め込まれた情報と、その分からない部分の……答えなんだと、思う。


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