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66波_総合決勝戦(継続)

「門崎さんっ! 知ってましたねっ!?」

「何をかしら」

「籠家さんが「緋薔薇の魔女」だって事です! だってあの服、私が初めて会った時にはもう着てました! 門崎さんとどこで知り合ったんだろうと思ってましたけど、あの服を作ったのは門崎さんでしょう!?」

「自信作よ。綺麗でしょう?」

「確かにこれ以上なく最高に綺麗ですけどっ!!」


 僕と同じことを思ったというか、同じ推測をしたらしい木透さんが、門崎さんにすごい勢いで……その、質問もしくは確認をしてたけど。門崎さんは、全然気にしてない感じだ。

 でも、そんな気はした。だって、今の今まで「緋薔薇の魔女」が籠家さんだって、誰も知らなかったんだから。それは誰かが隠して、知ってる人がその秘密をずーっと黙ってたって事なんだから。もちろんその知ってる人の中に、門崎さんは入ってる。

 今の今まで、籠家さんが自分で人前に出て来るまで、ずっとその秘密を守り続けてきたんだ。「緋薔薇の魔女」って人は、ヒーローだった。その正体を知ろうとした人は、きっと、たくさんいただろうし。


『ふざ、ふざけるな! ゲホッ、召喚主に危害を加える召喚獣なんて、そんなっ、不良品――ぁあああああっ!?』


 なんて、僕らが籠家さん=「緋薔薇の魔女」って事に驚いたり納得したりしている間に、暑さで咳き込んで、体を折って苦しんでいたらしい光武さんが何とか立ち直ったらしい。

 ただ出てきた言葉は酷いもので、もうすっかり剥がれ切っている気がするけど、それでも今までの印象とは違い過ぎるものだった。ただ、その途中で、たぶん籠家さんが杖を振ったんだと思う。何もしてない筈なのに火の玉が飛んで行って、光武さんは避けきれずに、腕が燃えていた。

 あれ、大丈夫なのかな……。と思ったけど、火自体はすぐに消えた。魔法だったみたいだ。たぶん、本当に魔法なんだろうけど。


『審判。これ、試合は続行なのか? 相手の召喚主が死にそうなんだが』


 痛い熱いと叫ぶ光武さんを無視して、籠家さんは顔を上げた。と思う。中継映像では、拡大しても動きはあんまり見えないから。

 光武さんは、待機場所を追い出されたせいか、そのすぐ前から動いてない。その前にそれなりの距離をあけて赤いドラゴン……ローズって名前のドラゴンがうずくまっているクレーターがある。

 籠家さんは、クレーターの縁からローズって名前のドラゴンと同じくらいの距離まで歩いてきていた。たぶん、まだ火があちこちで燃えてるから、光武さんの反応が正しいんだろうけど……まぁ、門崎さんが作った服で、さっき、召喚主側が対応しろ、って言ってたもんね。たぶん、熱を遮断するか、服が吸い取って消してるんじゃないかな。


『――続行か。まぁいいが』


 僕には返事は聞こえなかったんだけど、審判……神様の判断は、試合続行だったらしい。……光武さん、腕が酷い火傷状態になってると思うんだけど、続行なんだ。


『というか、これが見たいから続行か。この後も予定があるし、流石に無駄に苦しめる趣味は無い。さっさと見せるものを見せて、終わるとしよう』

『ぐ、ぇ、くそ、何を、なん……』

『【サモン:ブレイブ】』


 これが見たいから続行。……っていうのは僕には意味が良く分からなかったんだけど、確かに光武さんはもう息も絶え絶えだ。このまま気絶して倒れたら、地面も焼かれて熱くなってるだろうし、きっと全身大火傷になると思う。

 木透さんの「別に放置してもいいと思うんですよ。人間、ミディアムレアぐらいなら死にませんし」なんていう呟きは聞かなかった事にして。籠家さんは、召喚詠唱を声に出した。

 でも。その詠唱はパペットではなかったし、特殊召喚の文言も無かった。という事は、パペット以外の召喚獣って事になる。……籠家さん、パペット一択、って言ってた気がするんだけどな?


「ちゃんと見てなさい。特に鈴木君は」

「は、はい」


 籠家さんの、「緋薔薇の魔女」の服と、ローズって名前のドラゴンの色が同じこと。パペット以外の召喚獣。その辺り、門崎さんに質問しようと思って(答えてくれるかは別だけど)顔を横に向けたら、ぐいっと画面の方に顔を戻されちゃった。

 で、戻された先では、召喚の魔法陣が出てきたところだった。ただ、そんなに大きくない。それこそ、パペットを単独で召喚する時と同じくらい。召喚する時の魔法陣の大きさは、召喚獣の大きさによって変わるから、たぶんパペットと同じくらいの大きさ何だと思う。

 ただ、そこから出てきたのは……マントを羽織って、布の服の上から皮鎧を身に着けて、ブーツを履いて。左手に盾を持って、ベルトに剣を下げて。短い金髪の上から額当てを付けて。そういう、普通の冒険者、みたいな恰好の……けど、不自然に顔が見えない「人」だった。


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