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64波_総合決勝戦(痛打)

 そこからしばらくして、僕らがいた部屋の壁にあるモニター、は、復活しなかったけど。携帯端末の動画のカメラは復活したから、それを壁のモニターに映して見る事になった。

 もちろん外から繋げているし、画質的な問題もあったから、壁一面って訳には行かなかったけど。それでもちょっとしたテレビぐらいの画面で見れるなら、3人で見る分には、十分な大きさになる。

 ただ……そうやって改めて見た会場は、門崎さんが言った通り、酷い事になっていた。



 分厚く透明な壁。どうやったら破れるのか見当もつかなかったあの結界は、粉々に砕けていた。それが何で分かったのかって言えば、大きい欠片みたいなものがあちこちに転がっていたから。それも、氷がとけるみたいに少しずつ小さくなってるみたいだけど。

 魔法とかスキルとかに近いものだからか、結界の欠片に重さはないみたい。それでも嵩張るというか大きい物ではあるから、その下敷きになった人は動けないみたいだ。あちこちで、結界の欠片に押し潰されたような人が倒れてる。

 ただ。結界の欠片が残っているという事は、その部分は防げたって事。つまり、欠片の無い場所の方が酷くて……あちこち、黒くなったり赤くなったり。たぶん、焦げたり血が出たりしている人がいっぱい倒れていた。



 結界の外までそんな被害を出した攻撃。それが直接当たる範囲だった戦闘場所は、もっと酷かった。いや、パペットは倒されたら消えるから、その、血とかそういう意味だとずっとマシだったんだけど。

 地面もしくは床はひび割れて、ずれて、ガタガタになっていた。端の方はその程度だけど、攻撃の中心に行くにつれて焦げが増えて、何ならひび割れの隙間に赤い火が残ってちろちろ燃えてる。

 そしてその中心。大きな穴……クレーターが出来たその中心にいた赤いドラゴン、たぶん、ローズって名前の、スピネルドラゴンっていう宝石竜は


「……酷い」


 ゲホッ、と咳き込むような動きをして、けど吐き出されたのは息でも炎でもなく、真っ赤な血だった。召喚獣も血を流す。それは知っていたけど、これは、たぶん、違う。

 だって、綺麗に並んだ鱗は所々剥がれたり反り返ったりしているし、そうやって鱗が無くなった部分は黒く焦げたり血が出たりしてる。翼も、たぶん所々穴が開いたか骨が折れたか、動きがおかしい。尻尾も手足も同じようで、長くて太くて丈夫そうだった爪すらいくつか割れていた。

 すっかり痛々しい姿になってしまった宝石竜。血と傷だらけになって、それでも綺麗な赤いドラゴン。こんなの、ドラゴンだから耐えたってだけの自爆だ。


『――本当にお前は、何も考えずに行動するな』


 とはいえ、流石にそれだけの攻撃を受けて、パペットが耐えられる訳がない。……と思っていたら、端っこの方で土埃が上がった。どうやら残っていたパペットが文字通り盾になって、どうにか1体だけ残っていたらしい。

 パペットにとって、一瞬での全滅以外は掠り傷。だからその最後の1体は……パペットは、ちゃんと仕事をしていた。今の攻撃、ここまでの攻防の情報を、しっかり守った。

 そのパペットが、そんな声とともに送還される。これで……ダメージを負ったのは、実質、赤いドラゴンだけだ。


『堪え性が無いとかもっと周りを見ろとか、目の前じゃなくてもう少し先を見ろとか、あれほど言われていたのにまだ直ってないのか』

「……籠家さん」

「籠家さん!? あれっ、いつからいなかったんですか!?」

「あらまぁ」


 そこへ、「途中から待機場所にいなかった」籠家さんが戻って来た。まぁ声が聞こえたところで分かってたし、いつからかって言ったら、赤いドラゴンが出てきた直後ぐらいからかな。

 一応は試合中だから、途中で離れるっていうのは出来ない。それが出来るのは、総合決勝戦まで来ても制限が変わらなかった、1回だけの「装備変更」をしている時だけだ。

 もちろんその間は普通、試合が止まるものなんだけど。パペットは、ちゃんと鍛えていたら戦えるから。……まぁ、パペットだけの判断で、赤いドラゴンとあそこまで戦えてたって事なんだけど、それはそれとして。


『まぁそんな事だろうとは思ったし、だから装備を変える前にパペット達には時間稼ぎを指示していた訳だが……。……おい? どうした、返事が無いが』

「あれ、本当ですね。ここまでの感じ、ここまでなんか意味深な事を言われるとすぐ反応しそうなんですけど」

「あぁ……たぶん、気絶か重傷なんじゃないかしら」

「気絶か重傷!?」

「だって、ほら。あの待機場所の結界も壊れているもの」

「……あっ」


 ……。

 これ、試合継続できるかな……?


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