56波_総合決勝戦(開始)
総合決勝戦は、4ブロック分の優勝者とシード権を持つ1人の5人でやる。となると当然だけど、1対1で戦っていた時よりたくさんの召喚獣が召喚されるから、同じ広さだと狭くなる。
ただまぁ、これは御前試合。神様がその辺良い感じにしてくれるらしい。具体的には、空間を広げるんだって。まぁダンジョンとかもそうなってるからね。どうやったら扉1枚の向こうにあんな広い場所が出来るんだって話だし。
「それであんな、籠家さんが小さいんですね……」
「空間が広がっていますからね! それに籠家さんを始め、数を出してこその召喚獣がいる事が確定していますし!」
「にしても、大盤振る舞いね。これは本気でドラゴンが見れるかしら」
どうやら入場はブロック順だったみたいで、籠家さんが最初だったんだけど、やっぱりあの、ギルド公式グッズというか、公式探索服のままだった。帽子もしっかり被って、髪も上着の中に入れて、見た目だけだと誰か分かんないや。
その後も順番に、5角形の角みたいな場所の待機場所に出てくるブロック優勝者。最後は、シード権を持つ通称光の勇者、光武さんだ。わ、歓声がすごい。
「見た目だけはご立派ですからねぇ……!」
「ハリボテの鍍金である事を思い知ればいいのよ」
……僕と一緒に観戦してる2人の感想は、そんな感じだったけど。これ、過去に何かあったのかなぁ。
少なくとも、CMとかで見た時はすごくキラキラして格好良かったんだけどなぁ……。と思っている間に、改めてのルール説明が終わったみたいだ。
どうやら決勝戦は事前に召喚獣を召喚しておいて、試合開始と共にぶつける事になるみたい。たぶん、召喚獣を観客にアピールするって部分もあるんじゃないかな。それに応じて、秋妖さん、反町さん、角井さんは、次々、すごい数の召喚獣を召喚している。
「よく魔力が持つわね」
「まぁ、一応は最強パーティの人達ですからね。もっとも秋妖さんは危うい気配がしてますけど!」
「それを言ったら反町も危ないんじゃないかしら。確かあったわよね。捕食によって魔力を奪い取るスキル」
「私は詳しいスキルまで知りませんので!」
その中で、動きが無かったのは光武さんと籠家さん。観客席もざわついてる。
『……ドラゴンは出さないのか』
『あはは、やだなぁ。ドラゴンを出したら一瞬で終わっちゃうじゃないか』
『ちょっと、私達は前座替わりって訳?』
『相変わらずシャラくせぇ奴だ』
『これは御前試合だからね。盛り上がりは必要だろう?』
と思ったら、籠家さんが口を開いた。これも最終決勝戦だからか、全員の声が普通に聞こえる。字幕としても出るけど、きっと何かの方法で声を拾い上げて、届けてくれてるんだろう。
籠家さんの問いかけに、光武さんが笑って答える。それに秋妖さんと反町さんが文句を言うけど、光武さんはそんな風に返していた。
あ、うん。何というか、キラキラしたイメージがこう、ガラガラ崩れる音が聞こえた気がした。これは良くない人だ。流石に僕でも分かる。
「本当に、よくこのザマで外面を保てたわね」
「まぁその大体は決められたセリフを決められたポーズで喋るだけであとは特殊効果とか編集とかまぁそのおっと口が滑りました聞かなかった事にして下さい!」
「わぁ……」
木透さんが、その、ダメじゃないかな? って事を言ってたけど、聞かなかった事にしてほしいらしいから、聞かなかった事にする。僕は何も聞いてない。広告塔のお仕事の裏事情なんて知らない。
その返事があったところで、ようやく籠家さんが動いた。ただ、上着の下にいつものベルトで並べて下げている内から引き抜いたのは、僕が知らない杖だった。
その杖を一言で言うなら、豪華、って事になるんじゃないかな。金色の棒を削りだして、端っこにキラキラ虹色に光る四角い石を嵌め込んである。持ち手以外の部分もキラキラしてるから、ズームしたらきっと、すごく綺麗なんじゃないかな?
「……あらー……」
「う、わ。うわ、うっわぁ……!?」
ただ。
その杖を見た門崎さんと木透さんの反応が、これだったんだよね。
もう流石に僕にも分かるよ。あれはヤバいやつ。この2人が絶句するって時点で、相当、かなり、滅茶苦茶にヤバいやつ。
『分かった。では前座は早々に潰して出してもらう事にしよう』
『はぁ!?』
『あぁん!?』
『へぇ。やってみれば?』
で、なおかつ。
……籠家さんが、ものすごーく、怒って本気って事。
『――【サモン:エクステンド:ハイクラスパーティ×20000】』
うわ。