55波_各ブロック優勝決定
第二ブロックを優勝したのは秋妖千華さん。植物系の召喚獣で、魅了とか麻痺とか、状態異常で動きを鈍らせて相手を捕まえて、その、体力とか魔力とかを吸い取る戦法の人だった。
第三ブロックを優勝したのは反町大凱さん。動物系、というか、猛獣使いって言った方が良いかな。素の素早さとか体力が高い召喚獣の、能力の高さを押し付ける感じの戦い方だった。……無機物系でも構わず、相手の召喚獣を食べるのはどうかと思ったけど。
第四ブロックを優勝したのは角井研さん。鬼系、っていうのかな。木透さんの説明だと、ゴブリンを力押しの戦い方で育てると進化するらしい。大鬼と小鬼の群れ。大鬼の「取り巻き召喚」ってスキルがあるんだって。
「ちなみに角井っていうのは最後にパーティ入りした人なんだけど、かなり強引なヘッドハンティングがあったとかなかったとか聞いているわね」
「私は何も聞いてません! 知りません!」
「わぁ……」
……うん。その。飽甫さんと、秋妖さんと、反町さんは、戦い方が、まぁ……近いというか何というか……だったんだけど。角井さんだけ、こう、えっと……言ったら悪いけど、「真っ当」な戦い方だったから……。
と、ともかく。僕と木透さんと門崎さんは、そのまま貴賓室で本選のブロック決勝を観戦した。何というか、その……「シエルズメイド」で働いてる人達と一緒に一般席じゃなくて良かったなって。
いやまぁ、そっちだったら、とっくに「シエルズメイド」に戻って、お店で観戦してたかもしれないんだけど。あぁでも、それだと、木透さんと門崎さんは無事かどうかそわそわしてたかな。
「……あの、木透さん」
「なんでしょう!」
「その、……客席の前に、ものすごい壁が、出来てるというか、設置されてる気がするんですけど……」
「いやーすごいですね! 私でも見た事ないですよあんな大規模な結界!」
「……昨日まで、あんなの、ありませんでしたよね……?」
「ありませんでしたね! よほど今年の御前試合は主に神様側の気合が入っているんでしょう!」
なんて思っていたのは、最終決勝戦の日の朝までだった。
だってなんか、すごく分厚いというか、ガラスの塊かな? っていうぐらい厚みのある透明な壁が、会場と観客席の間に設置されてるのを見ちゃったから。
朝一番でこれって事は、たぶん、夜の間に設置したって事、だよね。木透さんは今結界って言ったけど、確か結界って、規模が大きくなればなるほど、設置するアイテムが少なくなって、お値段が高くなってた筈なんだけど。
「流石御前試合ってところかしら。神様がやるとなると何でもありね」
「……あ。そっか。神様なら、結界とかも設置し放題……」
と思ったけど、優雅に朝風呂を浴びて着替えてきた門崎さんが説明してくれた。そっか。そういえば御前試合で、神様が審判をしてる試合だった。なら、神様がその辺こう、良い感じにするのは、それはそう。
「まぁそれだけの周辺被害が出かねないって判断がどこかで出たって事なんでしょうけど」
「すごいですねー! もしかしたら本気でドラゴン5体の同時召喚が見れるかもしれませんねー!」
「ドラゴン5体の同時召喚と、同程度の規模の何かが出来る、という可能性もあるわよねぇ? 何しろ既に敗退したとはいえ、自爆戦法を使う探索者がいたんだもの。警戒は当然よねぇ?」
「規模の大きい戦いは観戦するだけでも大変ですね! 主に観戦している人を守る運営側が!」
……その理由については、まぁ。その。うん。
と、ともかく。相変わらず籠家さんは何か妨害されてるのか、こっちに来る事は無かったし、僕らもあるかも知れない何かを警戒して、この部屋から出なかったけど。
最終決勝戦。最大召喚回数は無し。待機場所から召喚主が使えるスキルは10回まで増える。制限時間は日中一杯。昼休憩は無し。
降参するか、召喚できる召喚獣がいなくなるまで続く……個人だけど、総力戦って言っていい試合が、始まる。