52波_第一ブロック決勝戦(反撃)
その内。リビングアーマーも、リビングウェポン・レギオンも、たぶん核となる部分、人間でいう心臓部分に致命的な攻撃を受けて、その姿を消していった。倒された、って事だ。
パペットは例外として……元々魔力がある限り何体でも召喚できるし……試合中に戦闘不能になった召喚獣は、同じ試合の間は召喚できない。それはそうだよね。だって戦闘不能になって、それが勝敗に関わるんだから。
「(だから、籠家さんを倒すのはすごく難しいんだよね。このルールだと)」
だってパペットは、何体でも召喚できる。それはつまり、何度でも召喚できるって事だ。それこそ、召喚回数を使い切るまでは。
その上で、魔力が続く限り召喚し続ける。そういう召喚方法もある。あれだって召喚方法の1つだし、召喚回数としては1回にしかならない。それこそ、戦う場所に入り切らないから、って止められない限り、無限に召喚できる。
……普通のパペットなら、それでも勝負になるかどうか、なんだけどな。何せパペットは弱い。1体の強さを見たら、それはもう弱い。そのパペットを、ここまで鍛え上げた籠家さんがすごいんだ。
「あーららら、出してきましたね。たぶんあれ切り札でしょうけど……まぁ、まぁまぁ見事にこれはもう何というか」
「黙っておけばいいんじゃないかしら。沈黙は金よ」
「はい。黙ります」
まぁそんな訳で、僕らからしたら当然なんだけど、飽甫さんの召喚獣は一旦全滅した。もちろん召喚回数は5回まで。だから他にも召喚獣がいるなら、そちらを召喚する事で戦いを続けられる。
もちろんここで、降参を宣言する事だって出来るんだけど……飽甫さんは、戦う事を選んだみたいだ。また、召喚の為の魔法陣が出てくる。
1回目の時より小さいそれから出てきたのは、見た目の基本はリビングアーマーだった。たださっき5体いたのよりも大きくて、鎧がトゲトゲしていて、そして全身にこれでもかと武器がくっついている。強そう、というより……怖い、かな。
「まぁ私は喋るのだけど。恐らく「職業」は「アームズマスター」。召喚獣の種族は、グリードアーマーかしら? リビングアーマーがその全身を、全てを奪った装備で揃えた上で、奪った相手を何度も撃退。その上で更に装備を奪って、なおかつ特殊なモンスターを倒すと進化する召喚獣ね」
木透さんは黙っちゃったけど、門崎さんが説明してくれた。詳しいなぁ。……ちょっとだけ、僕が世間知らずなのかな? と思ったけど、観客席どころか解説の人もざわざわしてるから、たぶん門崎さんが詳しいんだと思う。
「リビングアーマーは意思を持って動く鎧。その鎧すらも奪ったものと取り換えたなら……それは、本来の召喚獣なのかしらね。もっとも、それを気にしない召喚主にしか辿り着けない進化先だから、実際の所は分からないけれど」
「……それって」
「ちなみに私が詳しいのは、グリードアーマーだとすれば、その召喚主が自分以外は全てどう扱おうが関係ない、という倫理の欠片もない人間である可能性が高いからよ。召喚主が危険人物である可能性が高いから、ギルドから警戒情報が出ているの」
「え」
「……あの飽甫という探索者が大きな顔をするようになってから、ひっそりこっそりとしか言われなくなったけどね」
なんか、なんか思ったよりずっとダメな感じの話だったんだけど!? ねぇ、これ本当に僕が聞いていい話だった!? 木透さん、黙ったままだから何してるのかなと思ったら耳を塞いで目を閉じてるし! これ絶対聞いたらダメなやつだよね!?
と、僕が門崎さんから聞いてしまった話をどうやったら忘れられるか、ちょっと真剣に考え始めたところで、モニターからすごい音がした。今のは、爆発音……かな? え、でも爆発するようなものなんてあったっけ?
なんて思って、頭を抱えてて見てなかったモニター、壁一面に映し出されたそれを見て、
「……え」
さっきまでたくさんのパペットがいて。その正面に、門崎さんがいうにはグリードアーマーっていう召喚獣がいた筈の。それだけのパペットが十分動ける、大きな戦う為の舞台。
その真ん中。本当に真ん中に……半分以上を埋めるような、大きな穴が開いていた。それもボウルみたいに丸くて、焦げたみたいに黒くなってて、煙も上がってるって事は。
さっきの爆発音は、気のせいでもなんでもなかったみたいだ。