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50波_第一ブロック決勝戦(前半)

 リビングウェポン・レギオンは、数を武器にするタイプの召喚獣だ。そしてそこに、個の強さを持つリビングアーマーが5体。確かに、強いと思う。隙が無いし、立て直しと対応も早い。

 たぶんダンジョンの探索でも、リビングウェポン・レギオンの方なら、罠にもほとんどかからないんじゃないかな。それこそ、わざと安い武器を取り込んでおいて、わざと罠を発動させる部分を作っておけばいいんだし。

 だからきっと、会場全体に聞こえるようになってる解説の人が言ってるように……この結果は妥当なんだと思う。少なくとも、大多数の人にとっては。


「パペット相手に大人げないですね!!」

「あちらも負ける訳には行かないのでしょう。それにしたって、スキルまで盛大に使うとは思わなかったけれど」

「あれ、結局、何をしてたんですか?」


 木透さんが憤慨して、門崎さんが面白くなさそうにしてるその理由は、リビングウェポン・レギオンの一部になっている武器が、途中で何度か最初の倍ぐらいに増えた事だと思う。

 門崎さんが「スキルまで盛大に使う」って言ってたから、たぶんあれがスキルだと思うんだけど……でも、アイテムボックスの中にあるアイテムは、使っちゃダメだったよね?

 でも、明らかに飽甫さんが身に着けられる以上の武器が増えてる。だからルール違反じゃないかな、と思ったんだけど……。


「グレーゾーンの中でも本当にギリギリのラインね。あの無数の武器の補充、一応は「スキル」なのよ」

「えっ」

「使ったら反則負けのアイテムの中に、部位欠損を治せるアイテムがあるのだけどね? それと同じぐらい回復力があっても、それが召喚獣か召喚主の「スキル」ならセーフ、っていう判定になるのよね」

「え」

「それの……まぁ、悪用よ。それが「スキル」であれば、使ってはいけないとされているアイテムと同じ効果が出ていても不問にする、っていう」

「えぇ……」


 あの、武器の数が減って来たなーってところで一気に数が増えたのは、これも結構ダメ寄りな方法だったみたいだ。

 いや、スキルを使っちゃいけない訳では無いし、それを言うなら籠家さんのスキルも、まだ名前すら知らないけど、だいぶ反則だろうし。

 だからといって、堂々と、こう、ルールすれすれの事をしていいのかなぁ……とは、まぁ、思うよね。


「それにしても、エンチャントしたパペットを削り切られちゃいましたかー……」

「あのスキルを召喚獣が使っていると判定されているとして。召喚主のスキルはそのスキルの回復という体で使われているわね。少なくとも10回は全回復できるかしら」

「しかも召喚回数自体は残ってる訳ですし、絶対いるじゃないですか! 全部魔剣で揃えた上位種の召喚獣が!」


 会場に流れる解説も、木透さんと門崎さんも、籠家さんが厳しい、って判断みたいだ。

 ……まぁ、ぱっと見たら、そう見える、かも知れないけど。


「……たぶん、大丈夫だと思いますけど」

「え?」

「あら」


 だって。


「籠家さん……杖の効果をつける為の準備をしただけで、召喚自体は、普通の杖を使ってますよ」


 だって……今全滅したパペットは。ただの1体だって、氷の矢も炎の矢も使ってなかったから。氷を使って防御力を底上げする事も、炎を使って攻撃力を上乗せする事も、してなかった。

 しかも最後、全滅するのに紛れさせていたけど。最後の1パーティ分のパペットは、籠家さんによって送還されていた。って事はつまり、ここまでの戦闘経験が全部パペットの本体に還元されたって事。

 そしてパペットの強みは、その、たくさんの体がある事を生かした……戦闘経験の蓄積だ。そして今、飽甫さんが指示を出して戦う召喚獣との戦い。その攻撃パターン。どうしたらやられたのか。どうしたら攻撃されたのか。そういうのを、全部、自主的な送還で、経験として持ち帰った。


「全滅するところまでは当然っていうか。そもそも、最初のパペットにこんなに時間をかけて、しかもスキルを使う程の傷を負うのか、ってびっくりしてるぐらいかも」


 たぶん最初から、あの300組のパペットは「小手調べ」だった。飽甫さんがどういう風に戦うのか、召喚主の指揮の癖みたいなものを調べる為の。パペット達に、覚えさせる為の。

 だって、それはそう。あの決闘の時、籠家さんは新人相手なのに、素の状態とはいえ、千体のパペットを用意した。それなのに、上から数えた方が早い実力者を相手にするのに、「職業」持ちとはいえ、2400体は、少なすぎる。


「本当に酷い事になるのは、ここからじゃないかなぁ……」


 途中から、木透さんと門崎さんがびっくりして僕を見た後、顔を見合わせているのも気付かず、気のせいか籠家さんを挑発してる感じの飽甫さんが見えたけど。

 その顔は、籠家さんの次の召喚で、呆然としたものになっていた。


『この程度か。スキルはオーバーキルだったかも知れんが……まぁ、過剰に実力者だと謳った周りを恨む事だな。――【サモン:エクステンド:クラスパーティ×5000(ファイブサウザンド)】』


 だよねぇ。

 8体1組が5000。合計、4万体。

 わたげを鍛え始めてしばらくした頃の僕で、素のパペットとはいえ2万体弱召喚出来たんだから……籠家さんが本気で戦うなら、それぐらいは出すよね。


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