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48波_第一ブロック決勝戦の相手

 僕らが自衛……観戦で自衛って何だかなぁっていうのはともかく……しながらわちゃわちゃしている間に、第一ブロックの決勝戦の日になった。午前中で準決勝が終わって、昼休憩を挟んで決勝戦だ。

 決勝戦の片方は、もちろん籠家さん。解説の人もちょっと声が引きつってたように聞こえたんだけど……まぁ、うん。「職業」で進化した、遠距離攻撃が出来るパペットを並べて一斉攻撃。これだけしか籠家さんはしてないからなぁ……。

 で、もう片方は、あの光の勇者こと、光武さんのパーティメンバーの人だ。今解説の人が名前を読み上げて……そうそう、飽甫(あくうら)さん。飽甫吉木(よしき)さん。こっちも強かったし、戦い方がずっと変わらなかった、ん、だけど。


「……木透さん。確かこの御前試合って、使ったアイテムは、補填無しって……」

「そうですねー。ほーんと、酷い相手ですよ」

「普通のダンジョン探索だと、とても有効で稼げる能力ではあるのよ。対人戦に持ち込むべきではないのも確かだけれどね」


 その召喚獣っていうのが……木透さんによれば、リビングアーマー、金属の鎧がひとりでに動いているような召喚獣で、一応人型タイプらしい。つまり、「職業」があるって事。

 その戦い方というか、全身を覆うだけの金属鎧って事で、とっても物理的な攻撃と防御に向いてる。だから普通は、というか、多くは、「剣士」とか「騎士」になる、らしいんだけど……。


「たぶん上位「職業」の「盗賊騎士」ですね、あれ。「戦士」を色々な武器が使える「万能戦士」にしてから、奪った武器ばかりを使ってるとなる筈です」

「奪った武器ばかりを、ね。……本当にそれだけかしら? ただの「盗賊騎士」なら、奪った武器を体中に装備してる筈よ」

「……何かこう、不思議な穴みたいなものに、吸い込んでましたよね……?」

「とすると、魔法的な能力も必要とするって事ですね。未確認の「職業」でかなり強い……のは分かるんですけど、やっぱり酷いと思うんですよ」

「それはそうよ。強いからと言って、許される訳ではないの。……本来なら」

「誰かに教えてもらわなかったんですかね。自分が嫌な事はやっちゃいけませんって」

「大丈夫よ。今から鈴ちゃんが教えてくれるわ」


 ふん、と鼻息荒く門崎さんが言い切る。わぁ、僕知ってる。それ、丸投げって言うんだよね。

 ただ、木透さんと門崎さんがそういうのもちょっと分かるぐらい、この飽甫さんの戦い方は酷かった。具体的には……対戦相手が装備していた武器を、根こそぎ奪っていた。

 この御前試合では降参が認められている。でも飽甫さんが酷いのは、ちゃんと相手をしているような感じでしばらく打ち合ってみせて、何なら不利な様子も見せて、油断したところで武器を奪っていた事。

 ……少し有利になったところで、武器が無くなる。そして、装備の変更は召喚獣1体につき、1度まで認められている。飽甫さんはそれを待った上に、全ての召喚獣に対してそれをやってた。


「手加減、ですよね?」

「間違いなく手加減ね。もっとずっと動ける筈だわ。というか、動けなければ8級ダンジョンの単独攻略なんて不可能よ」

「クラン『グリッターズ』の加入条件ですね。もちろん他に本命の召喚獣がいる可能性はありますけど、外部宣伝用の広告にもあのリビングアーマーを出していますから、主力ではある筈です」


 そういう事らしい。そんな飽甫さんの相手が、全員残らず人型召喚獣だったっていうのは、まぁ、一旦横に置いておくとして。

 選手紹介が終わって、待機場所に籠家さんと飽甫さんが立つ。……。何か、飽甫さんが籠家さんに話しかけてる、のかな? 僕の方からでは分からないけど。

 そして。『始め!』の声が響く。先に召喚したのは飽甫さんだった。それはここまでも変わらない。籠家さんが先手を譲る、あるいは相手の様子を見るって意味で。

 でも。


「え……」

「あぁ、そういうタイプだったのね」

「うーわ、これ絶対に恨まれる奴じゃないですか。よく人前で出す気になりましたね」


 飽甫さんが召喚したのは、リビングアーマーだけじゃなかった。

 たぶん特殊召喚。リビングアーマーだけで5体。そしてその周りに勝手に浮かぶ、たくさんの武器。ただその武器の中には、さっきまでの試合で、対戦者から奪った武器もあった。


「リビングウェポン。リビングアーマーと同じく、ひとりでに動く武器ですね。盾も入ってますけど。そして恐らくあの武器はリビングウェポン・レギオンでしょう。リビングアーマーが奪い集めた武器を「自分の一部」としてぶん回してくる召喚獣です」

「モンスターとして出てくると、武器を奪われた上に相手の手数が増えてしまうのよね。とても厄介だわ。それに何より、リビングウェポンの本体はあの中のたった1つな上に、他の武器を全部壊さないと倒せないのよ」


 あぁそれで、あの武器の群れが出た途端に観客席から悲鳴が聞こえたのかな……。たぶん、持ち主だった人っぽい声だったような気がするし……。


「普通にトラウマ持ちになってる探索者も多いのよねー」

「武器を奪われた上に、その奪われた武器で倒されることが多いですからね。奪われた時点で壊さなければいけないのも決定しますし」

「……あー」


 うん。何というか……強いんだろうけど、酷いなぁ。色々な意味で。


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