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46波_日程進行と噂と疑念

 まぁまだ半年ぐらいなんだから、仕方ないか。

 ……と、僕が切り替えられたのは、本戦の初日が終わって、一回「シエルズメイド」で貸してもらってる部屋に戻ってからだった。流石にね。ちょっとね。もちろん今までの感じ、木透さんや門崎さんとの付き合いの方がずっとずっと長いのは分かるんだけど。

 その後で聞いたんだけど、籠家さん、刻印武器の在庫を問い合わせてたみたい。ギルドにも門崎さんにも。けどどうやらお金にもならないっていうのが知られて、その場で捨てられるようになってるみたいで、どこにもあんまり無いみたい。


「たぶん鈴ちゃんの事だから、全部の職業が揃ってから教えるつもりだったんじゃないかしら?」

「えっ」

「だって鈴木君もパペット使いでしょう? 実際、魔法の杖を使って召喚する時もすぐ何か思いついてたみたいだし。それにやっぱり、武器を手に入れるなら全種類一緒の方が鍛えやすいのよ」

「……あー」


 ……僕ってちょろいのかなぁ……。

 と、ともかく。そこから5日かけて、第一ブロック(籠家さんがいるブロック)の準々決勝までが終わった。5日ずつ、第四ブロックまでトーナメントをしてから、各ブロックの準決勝と決勝、そして、各ブロックを勝ち抜いた人達による決勝戦が行われるみたい。


「……? 決勝戦は、1対1じゃない……?」

「そうですね! ……ま、それに関してはこの御前試合が始まった時からの都合と言いますか何と言いますか……」


 第一ブロックの準々決勝までの試合が終わっても籠家さんは戻ってこなかったし、門崎さんはそれ以降のブロックの試合は見ずに、お店に戻ってきている。だから僕も一緒にお店に戻って、お店から挑めるダンジョンを攻略していたんだけど。

 木透さんも木透さんで、「シエルズメイド」のダンジョンから帰ってきた人相手に、ギルドでやってたみたいなお仕事をしてたし……お休みじゃないのかなとは思った……なんか、いつも通りなところで決勝戦について聞いたら、何でか木透さんは言葉を濁してしまった。

 しかもなんか、周りにいた他の人達……「シエルズメイド」の職員だけど、探索者としてダンジョンに挑んでる……も、あー、とか、あれなー、という声を零していた。え? 何?


「……まぁ、出来レースなんですよね。対外宣伝向けの……」

「えっ」


 と、思っていたら、何か、思っていたよりダメな感じの言葉が出てきた。木透さんから。


「育扉市としての宣伝戦略、というのは、まぁ、ギルド所属の職員の1人として、分からなくも無いんですが……」

「え」

「外に宣伝する以上ある程度の箔はあった方が良いですし、この御前試合は外の人も大勢来ますので、絶好の宣伝チャンスなのも分かるんですけど……」

「え?」


 なんかどんどんダメな言葉が出てくるんだけど。これ、僕が聞いてもいいやつ? 本当に? なんだかすごく「大人の事情」って感じの気配がするんだけど?


「あんなもの、ドラゴン5体に日和った人間側の一方的な都合よ。鈴ちゃんにぶっ飛ばされてしまえば良いのだわ」

「えっ」


 なんて思ってたら、全部を台無しにする過激な意見が!?

 ……え? あれ、ドラゴン5体、って、なんかどっかで聞いたような……。


「まぁそうですね! きっと籠家さんならドラゴンぐらい吹っ飛ばしてくれますとも! 取り巻き共々!」

「えっ」

「少なくとも取り巻きでは相手にならないでしょうね。鈴ちゃんですもの。ドラゴンだって一度に出しているのをここ数年は見てないし、今でも本当に召喚できるのか怪しいところだわ」

「え?」

「宣伝写真もだいぶ昔のものばかりですしねー。新しい写真や動画は全部人間だけですし。届いてるんですよ、ドラゴンを出せって言う苦情がいっぱい!」


 そのまま門崎さんと木透さんは盛り上がってしまったんだけど、周りの人が教えてくれた。

 この年に一度の御前試合。光の勇者こと、光武さんがシード枠を貰っているらしい。そして各ブロックを勝ち抜くのも、光武さんのパーティメンバーでほぼ固定なんだって。

 クラン『グリッターズ』の筆頭パーティ。実力は当然高いんだけど、そのパーティメンバーで戦って、光武さんが勝つのがお決まりのパターン。でも、パーティメンバーの人達が必ず別のブロックにばらける事とか、そのパーティメンバーの人が有利な相手がブロックに集められるとか、色々怪しい話がいっぱいあるみたい。


「……」


 光の勇者、で、思い出した。

 僕がドラゴンについて籠家さんに聞いた時に、出てきた名前だ。もちろん、育扉市の外でCMを見たって言うのもそうだけど。育扉市、もっと言えばダンジョンから手に入る色々な物を、宣伝する人だって。

 ドラゴン5体。その時は、そんな人もいるんだなぁって思っただけなんだけど。わたげが育ってきて、僕自身の魔力が全然普通じゃない事も知って、ちょっと思ったことがある。


「(それって本当に、その人の召喚獣なのかな……?)」


 だって。ドラゴンって、強い分だけ、魔力が大変なんだ。強くなればなるほど、召喚しなくてもたくさん魔力が必要なんだ。僕は知ってる。だってわたげが育てば育つほど、一緒に召喚できるパペットの数が減っていったから。

 そして僕の魔力は、全然普通じゃない。門崎さんが驚いた、その事の意味も今になったらよく分かる。光武さんの事は知らないけど、たぶん、僕より魔力が多いのは、籠家さんぐらいなんじゃないかな。

 ……もちろん、僕は見た目では他の人の魔力なんて分からない。でも。木透さんが言葉を濁した。門崎さんが喧嘩を売るような事を言った。そして……籠家さんが、怒ってるような声だった。


「(……ほんとにそうかは、分かんないけど)」


 分からない。分からないけど。

 あの3人は、本当に何も無しに、そんな事はしないと思うから。


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