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45波_初戦における種明かし

「あるのよ。無くならない武器。それもパペットに使ったら、召喚した数だけ増えるっていう、もうパペット専用なんじゃないかしら? って思うような武器が」

「え、えぇ……?」


 地面に落ちた、いや、雷の矢で射落とされたロック鳥は、落ちたところを残ったパペットで袋叩き……矢衾? を受けて、そのまま強制送還されてた。まぁそうなるよね……。

 そこから対戦相手の人は別の召喚獣を出してきたんだけど、あのロック鳥が主力で、他の召喚獣はほとんど育ててない人だったみたい。あっさりとロック鳥と同じく矢衾でぼこぼこにされて、退場していった。

 試合を勝ちあがって籠家さんが引っ込んだところで、門崎さんが言ったのが、そういう言葉だった。え、何それ。すごく便利なんじゃ?


「ただ、攻撃力が残念なんですよねー。それこそ1級ダンジョンで拾える練習用にしか使えない、なまくらでももうちょっと使えるぞっていう武器の方がマシという」

「えっ」


 と思ったら、それを真正面から否定する事を木透さんが言う。えー。あの、1級ダンジョンの武器って、あれだよね? 籠家さんが、市販の包丁の方がマシだぞって言ってた……。え? あれよりダメなの?

 でも、さっきロック鳥を撃ち落とした弓は、矢が雷だっていうのを抜いても、結構攻撃力がありそうだったけど……。


「その武器の名前はね。刻印武器、っていうの。これが滅多に見つからないんだけど、ハンコみたいな形をしてるのよ。それを召喚獣のどこかに押し当てると、いつでも黒い武器を取り出せるようになるの」

「使い方的には焼き印ですけどねー。痛いんですか?」

「他の子にも使ったけど、特に痛くはないみたいね。で、この武器は無くならないし、壊れないし、もし手を離してしまっても刻印に戻るだけ、っていう、攻撃力さえ何とかなれば、絶対に優秀な武器なのよ」

「使い道がなさすぎる上にレアで使い捨てなんで、かなりの確率で叩き売られてますけどねー」


 門崎さんの、役に立つアピールに、木透さんが合いの手を入れる。僕は大人しく聞く事しか出来ない。


「ただこれは鈴ちゃんが発見したのだけど。刻印武器を使って「職業」を得て、それで進化したら、「刻印武器自体が成長するようになる」みたいなのよね」

「えっ」

「わぁ、それは……あの攻撃力で、「職業」を得るまで戦わなきゃいけないってどんな苦行ですか……あ、だからパペット専用疑惑」

「そういう事ね」


 どういう事?


「えーとですね。まず「職業」を得るにはいくつか方法がありますけど、特定の武器をたくさん使っても「職業」は得られるっていうのは言いましたね?」

「あ、はい」

「このたくさん使うっていうのは素振りだとダメで、ただ装備してるだけでもダメで……要はモンスターを倒した数なんですよ」

「は、はい」

「で、刻印武器って言うのはその、少なくとも最初の状態だと、ものすごーく弱いので。モンスターを倒すのが大変なんですよね」

「……あっ」

「しかも刻印武器で「職業」を得る、って条件だと、「職業」を得る前の召喚獣で戦わなきゃいけないんですよ。そして弱い奴ばっかりを相手していても、まず「職業」は手に入りません。強い奴と戦う方が取得率は高いっていうのは分かってるので、逆はどうかって事ですね」

「あ、あー……」


 首を傾げたら、木透さんが詳しく説明してくれた。うん。それは確かに無理というか、パペット限定みたいなところがあるね……。だってパペットはレベル上限が10で、そこで一回成長が止まるから。後は敵を倒すだけ、の状態で、止まるからね。

 だから武器を持たせて、それこそたくさん数を召喚して戦っていれば、それだけで「職業」が手に入る。何せ普通のパペットは、すごく弱いから。パペットより弱いモンスターを探すのは、難しいというか、たぶん無理。

 ……ん? だとすると、あの雷の矢はどういう事?


「あとはそうですね。刻印武器は遠距離攻撃の場合、矢をその場で作ります。ただ今回籠家さんは召喚する時、アイテムの杖を使ってましたよね?」

「はい……あの、雷を飛ばすやつ、ですよね?」

「正解です! 正しくは「サンダーアローの杖」なので文字通り雷の矢を飛ばす魔法の杖ですね!」

「そして魔法の杖を使って召喚したら、その回数を消費する代わり、召喚獣にその魔法が付与されるのよ」


 木透さんが続けて説明してくれて、それを聞いていたら、途中で門崎さんが入って来た。

 え、いや、それより。魔法の杖を使って召喚って、出来るんだ。……出来るし、召喚獣に、魔法が付与される……?


「付与される……?」

「召喚獣が限定的に魔法を使えたり、魔法の効果を特徴として持つようになるって事ですね! ……ただ、威力がですねー。ものすごく弱くなるんですよ」

「えっ」

「しかも、今回は弓を使うから矢の形になっていたけれど、これが剣士とかだとパペットが帯電するだけになるんじゃないかしら?」

「えっ」

「威力もあげられますけど、その分だけ余計に魔法の杖の回数を使わなきゃいけないんですよね。たぶん全部使いきってやっとです。そして魔法の杖っていうのは、基本的に、とても便利で珍しく希少な、消耗品です!」


 パペットが帯電するだけ……あ、いや、それでも強い。だって、触ったらビリビリするって事でしょ? うん。パペットでそれは強い。

 ……けど、パペット以外だと、うん。それこそあのロック鳥とかだと……微妙、かな……。少なくとも、他にも使い道が一杯ある魔法の杖を、その為だけに使うっていうのは、「無い」と思う。

 あれ? でも、さっき籠家さんが指示を出して撃ってた雷の矢は、かなり威力があったような。確か魔法の杖って、回数を使い切ったら壊れる筈。でも籠家さんは、普通の杖みたいにベルトに戻してた、よね?


「ま、鈴ちゃんはちょぉっと裏技を使って、たっくさん魔法の杖を使えるようにしているのだけど」


 ……。

 とりあえず、僕はまだまだ全然、籠家さんの事を知らない。

 それだけは分かった。


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