40波_これからの予定と別行動
どうやらさっきの、僕が、えーと、さいすん? してもらってる時に、籠家さんと門崎さんはそういう話をしていたみたいだ。もちろん籠家さんは「何かある」事を説明しただけで、具体的な事は何も言わなかったらしいんだけど。
あとその流れで、籠家さんはこの後ギルドに行って、たぶんそこから本戦が終わるまで戻ってこれない事と、ホテルの料金は先払いで支払い終わってるからずっと「シエルズメイド」の空き部屋を借りて過ごしててもいい事も聞いた。
「え? 何で戻ってこれないんですか?」
「……門環町のギルドに、私が顔を出すっていう時点でだいぶ珍しい上に、木透さんが手を回してたみたいでな……」
「えっ」
「……たぶん、ランク試験を受けさせられる事になると思う。最低でもメタリック……それも一番下のブロンズまでじゃ終わらないだろうな」
「あっ」
「鈴ちゃんも大変ねー。でもそろそろちゃんとした身分証明書を持ちなさい」
「余計なものが山ほどついて来て、それが嫌だから避けてたのは知ってるだろ……」
「それはそれ、これはこれよ」
ギルド証って、身分証明書で良いんだ。いや、まぁ、少なくとも育扉市の中だと、一番確実だけど。神様が証明してくれてるって事になるから。
僕は結局少し考えて、一度ホテルに戻る事にした。貴重品は持ってるけど、着替えとか歯ブラシとか、そういう部屋で使う予定だった荷物を置いて来ちゃったから。
……着替えは、どうしようかな。養護院に寄付しちゃってもいいかも知れない。だって僕が着ていると、どこかでボロボロになっちゃうんだろうし。そもそも、その分も門崎さんのお店で貰った、じゃない。買ったんだし。
「あの、でも、本当にいいんですか……?」
「大丈夫よ! 細かいところの仕組みは違うけど、お店だってクランの一種みたいなものなの。そうでなくても将来有望な新人なのだから、便宜の1つも図るわよ」
べんぎをはかる。……色々な意味で支援してくれる、って事らしい。
だから僕は一度ホテルに戻って、解いた荷物をまとめ直した。そして門崎さんのお店に戻って、そこの部屋の1つで泊まる。
で、次の日起きたら、もう籠家さんは出かけて行ったらしい。それも、随分日が短くなってきたって言っても、太陽が昇る前に。……朝早い方が、少しでも人が少ないかも、って事かなぁ。
それにしたって、僕も籠家さんもホテルにいないどころか、荷物も置いていないし、他の場所で泊まっているなら、ホテルに泊まってるっていう必要は無かったような気が、ちょっとだけするなぁ……。たぶん籠家さんの事だから、何か理由があるんだろうけど。
「……とりあえず、ご飯を食べたら、一回ダンジョンに行ってみようかな」
流石に1人で5級以上のダンジョンを攻略した事は無いんだけど、4級だったら何回か1人でクリアした事がある。もちろん籠家さんは後ろで見てくれていたし、時々戦闘のコツとか、気をつけなきゃいけないモンスターを教えてくれてたんだけど。
だから、完全に1人でダンジョンに入った事は無いんだよね……。……あれ? もしかして籠家さんって外から見たらだいぶ過保護だった? 僕からしたら助かる事しかなかったし、そもそもわたげを隠さなきゃいけなかったから、他の人と攻略は出来なかったんだけど。
……。うん。流石に3級はないだろうけど、4級でもわたげを僕がしっかり見てあげていれば、大丈夫な筈。パペットももっとたくさん召喚できるようになったし、籠家さんのパペットとまではいかないけど、だいぶ動きも滑らかになって来たし。
「あら、おはよう鈴木君! 今日はどうするの?」
「あ、お、おはよう、ございます。えっと、ダンジョンを、見に行こうかなって……」
「流石師弟ね。朝から元気いっぱいかしら」
……。なんでそこで、師弟、だから、たぶんだけど、籠家さんが出てくるんだろう?