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36波_装備作りの準備と理由

「さっきはごめんなさいね。私は門崎シエル。魔法装備道具店「シエルズメイド」の店主よ」


 で。

 そこから、フリルの人、じゃない。門崎さんが走り去っていった方向に籠家さんがのんびり移動して、僕もそれについていって、他の場所より豪華な扉を開けて入ったら、にっこり笑顔の門崎さんが待っていた。

 あと、門崎さんの名前と、このお店の名前と、店長だっていうのはその途中で籠家さんから教えてもらった。ここは門環町にある本店で、さっき入って来たあの黒い扉は、お店が出来た時から知ってる人でないと見えない魔法がかかってるんだって。

 籠家さんは常連さんなんだなぁ……と思ったけど、そう言えば籠家さんの杖を作ったのはこの門崎さんだった。お店を開くのにも色んなものが必要だろうし、その前からの知り合いなのかな?


「それにしても、鈴ちゃんが弟子をねぇ……まぁこの魔力なら納得しかないけど。これ、他の人だったら上手く伸ばせずにどこかで頭打ちになってたわよ?」

「だろうな。自分より能力のあるやつを素直に伸ばせる人間はそういない」

「ところで鈴ちゃん、この子の召喚獣本当にパペットだったの?」

「初心者石での召喚にも立ち会ったし、パペットだが?」


 うん。なんかそんな気がするな。……鈴ちゃん。籠家さんが鈴ちゃん。うん。うん? あ、いや、確か籠家さんって、下の名前が鐘鈴だった筈だから、それでかな?

 僕の事なんだけど、僕が入れない話がしばらく続いたところで、僕は別の部屋に移動する事になった。装備を作るのに、門崎さんが「見た」だけじゃなくて、細かい事を調べるんだって。籠家さんは門崎さんと一緒にこの部屋に残るみたいだ

 そこから、養護院でやってた健康診断みたいな事をした。身長も測ってもらったけど、125㎝だった。


「5㎝伸びてる……!」

「男の子の成長期はばらばらだからね。遅い人だと17歳を過ぎてから一気に伸びたりするし」


 という事は……籠家さんより背が高くなる可能性は、まだまだあるって事だよね! これからもご飯をちゃんと食べて、牛乳飲もう!

 ただ測ってくれた男の人が言うには、身長ばっかり伸びてもあんまり良くないらしい。ちゃんと体を動かして、筋肉もつけないと、ひょろひょろになってすぐ倒れちゃうんだって。そうなんだ。

 その流れで、顔を動かさずに……つまり、探索中に指示を出しながらできる運動を教えてもらった。だいぶあのクッションを使わなくても探索できるようになったし、身体を鍛えて悪い事は無いもんね。


「え、えっと、遅くなりました……」

「ん? いや、ここでしっかりしてもらった方がいいから、気にしなくていい」

「鈴ちゃんかた~い。まぁいいんだけど。さぁ! ここからは私の仕事ね!」


 で、結局2時間ぐらいかかって部屋に戻ったら、入れ替わりで門崎さんが出て行った。……籠家さんは待ちぼうけだけど、いいのかな?

 それにしても、身体を伸ばしたり動かしたり、本当に色々、僕の大きさの人形が作れるんじゃないかなってぐらいあちこちを測ってもらったけど……杖を作るだけなのに、そんなに測らなきゃいけなかったのかな。

 ん? 門崎さん、「ここからは私の仕事」って言った?


「……籠家さん」

「なんだ」

「門崎さんって、店主さん、なんですよね?」

「そうだな」

「……もしかして、杖を作るのって、門崎さん本人なんですか?」

「そうだぞ。ついでに言うと、杖を含めた装備一式だ」

「そうびいっしき!?」


 待って、聞いてない。

 装備一式っていうのは聞いてない! 杖だけだと思ってた! どうして!?


「鈴木君、もしかして聞いてないのか?」

「へ?」

「魔力を持つ中でも強力な道具は、専用のケースに入れないといけない理由。木透さんからはその辺説明したって聞いてるんだが」

「えっ」


 魔力を持つ強力な道具、強い効果のある剣とか盾とか、あとは、とっても強い効果の薬とか……? で、専用のケースに入れないといけない……? その理由……?

 あ、待って。何か聞いた気がする。なんだっけ。えっとえっと……。


「え、っと。確か、そういう貴重品は、入れ物が壊れる危険があるから、特に丈夫な専用ケースを作ってそれに入れないといけないって話、ですか……?」

「そう。じゃ、なんで入れ物が壊れる?」

「えっと、えーと……魔力、そういうのは、宿ってる魔力が多くて、魔力が多いと周りへの影響が出て、それで普通の物が長い間触ってると、その影響を受けて壊れる、です」

「その通りだな。聞いてたか」

「えっ? えっ、はい。……あれ!? なんでそれで装備一式って話に!?」


 なら大丈夫だな。みたいな顔で話が終わったけど、何も分からない!!


「いや、そりゃそうだろ」


 分からない、と顔にも言葉にも出したからか、籠家さんは説明を続けてくれた。


「鈴木君は持っている魔力が多い。それも平均より圧倒的に多い。そして何ならこれからもまだまだもっともっと増えていく」

「は、はい」

「これ自体は探索者として見るなら、規格外に良い才能だ。だから誇っていい。……とはいえ、持っている魔力が多いって事はつまり、魔力を持つ強力な道具と同じことが起こる訳だ」

「……、はい?」

「宿ってる魔力が多い。って事は周りへの影響も出る。もちろん数時間かそこら手を繋いでいたぐらいじゃ問題ないが、流石に日中ずっとってなると流石に壊れる訳だ」

「はい」


 うん。そこまでは分かる。なんとか。

 ……ん? 魔力が多いと周りに影響が出る。そして日中ずっと。装備一式。

 あっ。


「……籠家さん」

「どうした」

「あの。まさか僕、このままだと……勝手に服、が?」

「脱げるか破れるかするだろうな。普通の服だと間違いなく。この先更に魔力が増えたら、ある瞬間突然爆散とかもあり得る。……というか、私も持ってる服は少なかっただろう? それもどれも似たタイプの」

「今のその服は……」

「ギルドが探索者向けに出してる服だから、その辺耐性が高いやつだ」

「……あー……」


 なるほど。

 装備一式、というか、僕が着てても安全な服だこれ。

 ……そっかぁ。魔力が多いっていうのは褒められてばかりだったけど、こういう落とし穴があるんだなぁ……。


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