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35波_道のりと目的地と尋ね人

 階段を使って下まで降りて、籠家さんはそのまま外へと出て行った。ホテルの人に声を掛けなくていいのかな? と思ったら、このホテルは、かなり泊まる人の自由がきくんだって。ただしその分だけ自己責任。その上、紹介が無いと泊まれない場所だったみたい。

 今回は籠家さんが僕を紹介してくれたって事になるらしく、そういう場所だから他の宿泊客の事もあまり探らないように、って言われた。ホテルの中では静かにして、誰かに会ってもそっと気付かなかったふりをするように、って。

 ……。たぶん、籠家さんみたいな人向けのホテルって事だよね。籠家さんが選んだ場所だから、それもそうなんだろうけど。


「……あの。ところで、籠家さん」

「どうした?」

「僕、もうホテルに戻れないと思うんですけど……」

「あぁ。この辺は道が入り組んでるからな」


 そういう問題かなぁ……。確かに道は細いし曲がり角が多いけど、もう角を何回曲がったか覚えて無いよ……。というか、右にも左にも曲がってるから、ここがどこだか分からない……。

 早速階段を使ったことを後悔しそうなくらい歩いた先で、籠家さんはあるビルの地下へと入っていった。また看板も何も無い場所だけど、迷っている感じは少しもしない籠家さんの後をついて行く。

 で、そうやってついていった先にあったのは、真っ黒い扉だった。持ち手まで真っ黒で、上半分に真っ黒いカーテンがかかってる。……何というか、怪しいなぁ……。


「シエル、入るぞー」

「ぅえっ!?」


 けど。籠家さんは何の躊躇いもなく、何なら自分の家のドアみたいな気軽さで扉を開けて、中に入っていった。なら、帰り道も分からない以上、僕もついていくしかない。

 で、恐る恐る入っていった扉の向こうは……何というか、思ったよりも明るかった。けど、生活する場所って空気でも無くて、こう……お店の倉庫、みたいな感じだ。積み上がってるのも、ほとんど段ボール箱だし。

 でも、倉庫ならその、関係者以外立ち入り禁止、ってやつなんじゃ……? って思っていたら、籠家さんはどんどん先に進んで、別の扉を開いて倉庫みたいな部屋から出るところだった。慌てて追いかける。


「あらら、悪い子がいるぞ~? 事前連絡も無しに裏口を使った悪い子がいぶぅ」

「その煽りやめろ。あと事前連絡はしたし快諾の返事も確認したからな」


 ……そしてその先で、籠家さんが、誰かのほっぺを両手で挟んで押し潰すようにしてるのが見えた。もうぷぅぷぅとした言えなくなってるその人は、女性みたいだ。

 黒い髪の毛がうねうねしてて、あれ、えっと、ツインテールっていうんだっけ。赤いリボンで2つにくくってる。それから服が……フリルがたくさんついた、ドレスかな……? 黒い服に白いフリルがたくさんついてるみたいな……。

 というか、籠家さんの背が高いだけで、あの人も結構背が高い、のかな? 少なくとも僕よりは高そう。……うん。僕はこれから成長期だから。


「それにしてもお久しぶりねー。すっかりこの町にすら来なくなってたのに、この一番盛り上がる時期に来るなんてどうしたの? 何かいいことあった?」

「少しは事前連絡の内容を覚えていてくれ。……弟子をとったから、その装備の作成依頼を出しただろう」

「やだ~この人嫌いが弟子なんて取る訳ないのに何言ってるの~? というかそんな嘘に騙される訳ないでしょ~? そういう冗談は今までアタシがオススメした子全員弟子にしてから言ってね~」

「鈴木君」

「あ、はい……」


 ここで改めて僕の見た目年齢についてどう思われてるかっていうのが頭をよぎったけど、それはともかく。ようやく解放して貰えたらしいフリルの人と籠家さんが話をしていた流れで、籠家さんが僕を呼んだ。

 だから、ついうっかり扉の影に隠れていたところから、そっと出ていく。わぁ、ちゃんと見たら綺麗な人だなぁ。あれ? 目が真っ赤だ。


「…………っな」


 かと思ったら、フリルの人は、僕を見るなりその、真っ赤な目をまんまるくした。え? 何?


「な、な、なん、何なのよこの子――――!?」

「ひっ」


 で。そのままそう叫んで、どこかへ走り去ってしまっ……あ、こけた。痛そう。

 でも、そんなに変な格好してたかなぁ……やっぱり小さいからかなぁ……。


「大丈夫だ。たぶん鈴木君の魔力の量に驚いてるだけだから」

「え……?」

「あの赤い目、ちょっと特別なんだ。具体的には、ステータスを見る……相手の情報を調べる事が出来るスキルの影響で赤くなってる」

「……」


 なんて、ちょっとへこんでたら、籠家さんがそんな事を言った。魔力の量に驚く……?

 ステータスを見る。……あれ? 僕、調べられた?

 で、魔力の量に驚いたってどういう……。……あ、そうか。僕って結構、いやかなり、たぶん相当、魔力が多いんだったっけ。狙われるぐらいに。


「……あれ? 大丈夫なんですか?」

「他人にその辺の情報を漏らす程では無いから大丈夫だ」


 ……。大丈夫なのかなぁ?


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