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32波_届いた知らせと分かった事実

 そこからまた1ヵ月ぐらい経って、わたげは僕1人だと抱えるのが難しいくらい大きくなった。この頃には、最初しばらく籠家さんが探索してみて、大丈夫そうな4級ダンジョンにも挑戦してみてる。うん。わたげ、強いね。

 これも合同探索になるのかな? と思いながらのダンジョン攻略をして、クリアストーンを端沼支部に運んで、いつもと同じ、攻略報告の手続きをしてもらってたんだけど。


「そうでした! 籠家さん、招待状が届いてますよ!」

「げ」

「もー! 普段は滅多に表情が変わらないのに、そんな露骨に嫌な顔をしないで下さい!」

「したくもなる……」


 その最後に、木透さんがちょっと豪華な感じの封筒を取り出して……本当に珍しく、籠家さんが顔をくしゃっとさせた。うわぁ。僕も初めて見る。嫌そうな顔を、じゃなくて、籠家さんのはっきりした表情の変化を。


「普通は名誉なんですけどね! 籠家さんですからね! もうそれは諦めました!」

「そうか。ついでに受け取り拒否も受け入れてほしいんだが」

「ダメです!」


 そしてぐいぐいと籠家さんにその豪華な感じの封筒を押し付ける木透さん。籠家さんは両手をマントの下にしまって、絶対に受け取らない姿勢だ。たぶん、手続きが全部終わってたらもう帰ってると思う。

 帰らないのは、まだ僕と籠家さんのサインが必要な書類が残ってるからだ。あれを書かないと、クリアストーンを納品した分のお金が入ってこない。流石に籠家さんでも、それは困るんだろう。僕も困るけど。

 それにしても、木透さんは確か、招待状、って言ったよね? 普通は名誉、とも言ってたから、目立つ感じの話なのかな? 籠家さん、そういうの嫌いだもんね。


「もーっ! 何度でもお願いしますし受け取ってくれるまで諦めませんし手続きは進めませんからねーっ!」

「いや手続きは進めろ正規職員」

「じゃあこの招待状を受け取ってください!」

「嫌だ」


 うーんいつも通り……。と思いながらそのやりとりを眺めていたんだけど、木透さんがふと僕の方を見た。目が合った。あ、これまずいかも。


「受け取るなら鈴木君でもいいですy」

「師匠権限で却下」

「くうっ! けどどっちにしろ拒否は不可能なんですよ籠家さん!」

「それでも嫌だ」

「えっ」


 拒否は不可能って、断ったらダメって事だよね? え、本当に何なんだろう、あの豪華な感じの封筒。


「普通は奪い合いになるんですけどね! 御前試合の招待状ですよ!?」

「パペットなんてただのボーナスステージだろうが」

「新人とはいえ、進化済み召喚獣を撃破しておいてそれはないです!」

「あれはあっちの油断と経験不足がかなりデカかった」

「だとしても戦力倍率5倍の相手に手も足も出させなかったって聞いてるんですが!」


 ごぜんじあい。……ってなんだろう。試合の種類かな。パペットって事は召喚獣だろうし。決闘の大掛かりなやつかな?

 ここでようやく、僕が分かっていない事に気付いたらしい木透さんは、籠家さんに豪華な感じの封筒をぐいぐい押し付けながら説明してくれた。


「御前試合、偉い人の前で行う特別な試合ですね! 今回の場合は育扉市の中心で、ダンジョンの神様の前で行うトーナメントとなります!」

「えっ、神様の前で?」

「その通り! そして神様が見ているという事は! ご褒美も神様が用意してくれるという事! 頑張って結果を残せば召喚石だって貰えちゃうのです!」

「召喚石が!?」

「優勝のご褒美が「神様にお願いする権利」だからな。もっともそれだけの景品だから、探索者はまず全員集まって来る。倍率もすさまじいがその分だけ人がその場に集中する。一言で言うと、死ぬほど混むぞ」

「ひぇ……」

「普通はその中に飛び込んで予選を戦い抜くんですよ! そしてこの招待状こそは! その予選をパスしていきなり本戦に出れる、いわばシード権!」

「わぁ……えっ、それってものすごくものすごいんじゃ」

「ものすごくものすごいんですよ!!」


 それは、その、すっごいやつなんじゃない……!? と思って思わず声に出したら、木透さんが全力で頷いてくれた。

 それは……うん。それは、確かに、断れないし普通は断らないやつだ。興味も見せないどころか全力で居やがる籠家さんがものすごく珍しいやつだ。

 けど……僕も出来れば行きたくないな。もし参加させられて、うっかりわたげの事を喋っちゃったら……。


「繰り返しますけど、拒否は不可能ですからね! さぁ受け取ってください!」

「電車からして死ぬほど混むんだよなぁ……年末までかかるからホテル代も馬鹿にならないし……」

「それぐらいは稼いでるじゃないですか籠家さんは! あと今回は私が車を出しますからね! 混みません!」

「えっ、木透さん車の運転できるんですか?」

「そうですよ! これでも籠家さんの4つ上の21歳ですからね!」


 へーそうなんだー。

 ……待って。今もっと気にしなきゃいけない言葉があった。

 え? 籠家さんの4つ上で、21歳? って事は……。


「籠家さん僕と2つしか違わないんですか!?」

「は? いや今言われたように17だ、が…………鈴木君まさか、15歳だったのか!?」


 もっと待って。

 まさか15歳だったのか、って、しかもそんな、籠家さんだけじゃなくて木透さんも驚くとか。

 僕は一体何歳に見えてたの!?


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