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30波_一般基準と魔力の測定法

 そこから端沼支部に立ち寄って木透さんに決闘の話をすると、輝くような、満面の、とても良い笑顔で話を聞いてくれた。

 ……僕は知ってる。こういう人のこういう時の笑顔は、泣いても謝ってもやる事やるまで止まってくれないやつだ。貫山さんは……が、頑張ってほしい。

 とはいえ、そこまでやったら、もう僕らに出来る事はもうないらしい、と、籠家さんに聞いた。だから、あの決闘とその後の事は驚いたけど、僕らは日常に戻る事になる。


「壁丘! いるのは分かってるんだぞ! 勝負しろ!!」

「いい加減しつこいな……そろそろストーカー規制法と恫喝で警察を呼べるか?」

「えっ。育扉市って警察いるんですか?」

「いるぞ? ……一応ここも日本だからな、鈴木君」

「あっ」


 そういう、騒動というか、何というか……攻略しているか、少し待っていれば、たぶん『セーブライン』の人達に引きずられて行ってるんじゃないかなぁ、という感じでフェードアウトする声が増えはしたけど。

 基本的には1級と2級のダンジョンを僕が、それ以上のダンジョンは籠家さんがクリアして、その日の調子が良かったり、1日の始まりに3級のダンジョンが当たった時は、僕がクリアする。そんな感じで僕は順調にわたげとパペットの育成を進めていた。


「いやー籠家さんは籠家さんですけど、鈴木君も鈴木君ですね!」

「えっ」

「いいですか! 籠家さんにも以前は時々言っていましたが、普通ダンジョン攻略というのは! 1度に数日を要し! 1週間から2週間に1度の頻度で行うものなんですよ!?」

「えっ?」

「パペットはある程度以上に育ったら、召喚して行ってこいと指示するだけだからな。というか育てている途中も、基本は数を召喚して突っ込ませるだけだし」

「……?」

「くっ、流石に受付嬢の私では伝えきれませんか! というか籠家さん! もしかしなくても、鈴木君も魔力系のスキル持ちですか!?」

「いや。たぶん純粋に魔力が多くて育ちが早い」

「スキルですらないんですかっ!? 将来の有望さが極まってますね!」

「え、あの……?」


 ちなみに、こっそり後で籠家さんが教えてくれたところによると、僕は元々魔力が多い上に、魔力の増え方も普通より早くて多いらしい。

 もっとも、神様の方針なのか、それとも何か出来ない理由があるのか、魔力の測定器、というものはない。だから個人の魔力の量は、自分の分だと体感だし、他人の分は召喚獣やスキルの様子から推測するしかないんだそうだ。


「……。あの、籠家さん」

「どうした」

「それって、その、結構怖い事なんじゃ……?」

「まぁ一応測定する方法はあるんだけどな。時間がかかる上に面倒だし、言うほど正確じゃないからほとんどやらないだけで」

「え」


 家に帰ってからの話だったから、明日のダンジョン攻略の時にやってみるか? と聞かれた。それは、うん。自分の事は知っておきたいというか、魔力って使い過ぎると気絶しちゃうらしいから、知っておきたい、かな。

 だからその場では頷いて、その日はそのまま寝る事になった。

 で、次の日。


「あの、籠家さん」

「どうした」

「ここって、6級ダンジョンですよね?」

「そうだな」

「あの。なら、何で僕が前に……?」


 普通に考えて、ブラックランクの探索者じゃクリアどころか挑戦も出来ないようなランクの筈なんだけど……と思ったけど、籠家さんは普通にクリアしてたんだよなぁ。

 でも、流石にまだわたげでも無理だと思うんだけど……なんて思っていると、籠家さんはこう続けた。


「魔力を測定するんだろ?」

「えっ?」


 ……。

 …………。

 うん。まぁ。確かに。

 昨日、そういう話にはなったけど。


「魔力に関する測定器は無い。だから召喚獣やスキルの様子を見るか自分の体感でしか分からない訳だが、幸いなことに、そういう基準になりそうな召喚獣はいる」

「基準になりそうな召喚獣、ですか?」

「パペットだ」

「……あ」


 確かに。

 召喚に必要な魔力が少ない、という事が一番はっきりと分かりやすいメリットである召喚獣。レベルも本当にあがりやすくて、僕のパペットもとっくに上限であるレベル10になっている。

 そしてパペットは、レベルが上がると召喚コストが下がるっていう特徴があった。つまり、レベル10のパペットは、少なくとも今わかってる範囲だと、どんな召喚獣や、下手をしなくても、スキルより使う魔力は少ない。筈。


「私が武器持ちパペットをまとめて召喚しているのは見てただろう? あんな風に、パペットに関してだけはちょっと特殊な召喚のやり方がある」

「な、なるほど」

「その中に、召喚主の魔力が持つ限りパペットを一定数ずつ召喚し続ける方法があって、それを使う訳だ」

「……なるほど?」


 パペットを召喚し続ける。……あの、召喚の時の魔法陣が出たまま、そこから次々パペットが出てくる、って事かな?


「つまり。パペットを魔力の限界まで召喚し続けて、その数で魔力を計る訳だな」

「え。……あの、それって、途中で魔力が回復するんじゃ……」

「だから時間がかかる上に面倒でそれほど正確じゃない、と言った。普通の探索者でも3級をクリアできる頃には数千体は召喚できるから、難易度の高いダンジョンに挑んでパペットを撃破されつつでないと、どう頑張っても場所が足りない」

「あ、あー。それで、僕が前なんですね……」

「まぁパペットの育成としても、ある程度自分で考える下地が出来ていたら、ものすごく過酷な状況の経験が積める」

「あー……」


 確かに、自分よりずっとずっと強い相手と戦うのは、大事だって聞いた。ただしそれは「生還できれば」の話だったんだけど……パペットにしてみれば、1体でも僕の横で全体を見ていれば、そういう過酷な経験が無駄にならない。

 ……それにしても、普通でも数千体、かぁ。籠家さんは、あの、カチカチって音のなる、数を数えるやつを持ってきたみたいだけど、どれくらい召喚できるんだろう、僕……。


「えっと、それじゃ……10体ずつぐらい召喚したらいい、ですか?」

「いや、100体ずつだ」

「えっ」

「何をいまさら驚いてるんだ。わたげの補助とはいえ、3級だとその単位で召喚してるだろう」

「いやあれは、籠家さんがそれぐらいしないと手が足りないって言うから……」

「で、足りたか?」

「……足りませんでした」


 数十体ずつの召喚だと、間に合わなかったんだよね。わたげ無双の戦利品の回収が。

 ただ籠家さんが言ったこと、ってほとんど外れないからなぁ……というか、今の所全部当たってるし……。僕より僕の事を分かってる感じの部分がある。何で分かるのかは分からないけど。

 うん。まぁ。これも経験だ。僕にとっても、パペットにとっても。やってみよう。


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