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21波_これから暮らす家と人

 無事にダンジョンをクリアして、籠家さんがクリアストーンを持って、僕らはダンジョンを出た。……出てから振り返ったら、もうそこにはとても普通の玄関扉しか無かったし、籠家さんはクリアストーンを抱えたまま、器用に鍵を開けていた。


「お、おじゃまします……」

「弟子は師匠の家に居候するもんだから、ただいまでいいぞ」

「えっ」


 えっ。いや、えっと、確かに木透さんからも、そんな話は聞いたけど!

 さ、さ、さすがに、心の準備とかが!!


「まぁ弟子を卒業して独り立ちできる基準は、探索者ランクが師匠を越える事だから、独り立ちしようと思えばすぐだけどな」

「……」


 いやまぁそりゃ、籠家さんのランクはブラックだけど……。木透さんの気持ちがちょっと分かった。絶対ブラックじゃないよ、籠家さんは。他の人と一緒にしたらダメだよ。

 まぁでも、僕も自分から籠家さんの弟子をやめるつもりはないし、たぶんわたげが大きくなるまではお世話になるだろうから、どっちかというと、一緒にしちゃダメな方に入るんだろうけど……。

 あ、あんまり考えないようにした方がいい気がする。とりあえず靴脱いで、あがらせてもらおう。


「……あの、ここ、籠家さんの家、なんですよね?」

「そうだが?」

「いえ。その。えっと……」


 籠家さんはクリアストーンを玄関の横に置いて、靴を脱ぐのに時間がかかってた。だから僕の方が先に部屋に入ったんだけど……何というか、家っていう感じがしない部屋だった。

 床は板のままだし、机と椅子が1つずつあるだけで、テレビもない。窓は大きいけど、白いだけのカーテンがしまってて、全体に暗い。奥にはキッチンがあるみたいだけど、暗くて見えない……。

 と思ったら、ぱっと部屋が明るくなった。あ、奥にキッチンがあるんだ。冷蔵庫とレンジと、あれ、食器棚はどこだろう。


「……あぁ。この部屋は使ってないからな」

「えっ」

「ほとんど自分の部屋1つで過ごしてるから、来るのは料理をする時ぐらいか?」

「籠家さん、お料理できるんですか?」

「出来るぞ。一応この家に一人暮らしだからな。といっても、最近は作り置き含めた手抜き料理ばっかりだが」


 そっか。一人だったらこんなに大きな部屋は使わない。机と椅子も1つで十分だ。そもそも家が大きいのかな? 周りには家が無かったけど、2階もあったし、結構大きいお家だよね。

 籠家さんはクリアストーンをテーブルの上に置いて、上からタオルみたいな布を被せた。そのまま部屋の奥に行って、キッチンとこっちの部屋を仕切っている、僕より少し高いところまでの壁の端に結界石を置いた。

 何かが変わった、という感じは何も無いんだけど、これで家の中にダンジョンが出てくる事はない、はず。籠家さんも、ここでようやくその大きな帽子を外した。


「2階には何にも使ってない……いや、物入れになってるな。まぁ空き部屋に出来る部屋がいくつかあるから、その内どれかを鈴木君の部屋にしよう」

「あ、え、い、いいんですか?」

「いいもなにも、ここに居候になるんだから、部屋は必要だろう。その年からソファーで寝落ちとかは止めておいた方がいいぞ。背が伸びなくなっても知らないからな」

「えっ!?」

「嫌ならちゃんとベッドで……それも買わないとか。寝袋はあるからとりあえず今晩はそれと毛布だな。要は、ちゃんと寝るための家具があるんだから、それを使うようにって事だ」

「は、はい!」


 流石にベッドは持ってないし、ベッドを買ってもらう話になっているのは迷惑だと思うんだけど、背が伸びないのは嫌だ……!

 お世話になるばっかりで、どうすれば返せるんだろう、と思っている目の前で、籠家さんがマントの下に入れていたらしい髪の毛を外に出した。僕が思っている以上に長かったその髪は、頭の後ろのところで1つにまとめられてたみたいだ。

 そして髪を纏めていたのは、綺麗なピンク色の、筒みたいな飾りだった。僕が知ってるピンクより色が濃いけど、すごく綺麗だ。


「……?」


 ただ。そのピンクの飾りを見ていると、何か違和感があった。なんだろう。普通の飾りとは違う感じがする。すごく綺麗なんだけど、それだけじゃないっていうか……。

 と思っていたら、続いて籠家さんはマントを脱いだ。帽子と一緒に、玄関の横にあるハンガーに引っかけて、わぁ。


「籠家さん、その、すごい数の杖、ですね……?」

「あぁ。時と場合と相手によって使い分けてるからな」

「え? って事はそれ全部、召喚用の杖ですか?」

「いや。普通に振って使う、消耗品のアイテムとしての杖もある。実際遭遇した時に説明するが、召喚主である探索者も戦闘をする事があるから、その備えだ」

「えっ!?」


 けど。

 そこに見えた、ベルトにずらっと並んでいたたくさんの杖と、その使い道に驚いて、髪飾りについては聞けなかった。


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