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10波_初心者のダンジョン攻略

「……あの、籠家さん」

「何だ?」

「その、動きに気を取られてたんですけど……あの看板、勝手に文字が浮かんでますよね?」

「あぁ。あれはあの看板の機能だな。ちなみに人間が持っても同じことが出来る」

「あ、そうなんですか?」

「木透さんが言ってただろう。ギルドの備品だからドロップ品だと。パペットの特殊能力を発動させるだけなら、看板なら何でもいいんだが。指示を出すとか注意点を知らせるとかだと、あっちの方が便利なのは確かだ」

「そうなんですね」


 そんな会話を挟み、鈴木君はとりあえず5体パペットを召喚して、その1体を奥へと進ませた。一言も喋ってないのにとてもうるさい私のパペットがその先導をしている。

 2体のパペットが部屋の右手奥にある通路の向こうに消えると、正面の壁に映像が映し出された。広い草原の中に、細い土の道が続いている光景だ。


「わっ!?」

「これがダンジョン内部、というか、本体の映像。召喚主は離れていても召喚獣に指示を出すことが出来るから、この映像を見ながら指示を出してダンジョンを攻略していく事になる」

「わー……あっ」


 そしてその映像を見ている間に、俯瞰視点の映像の手前から2体のパペットが現れた。前を行く方は看板を掲げ、その後ろに続く方は何も持っていない。

 ……看板を持っている方のパペットが振り向き、看板を掲げた。『主ー! 見てるー!?』と書かれている。


「やかましい。見てるから新人には丁寧に解説しろ」

「に、賑やか……」


 そう返事をすると、看板の文字を『ひゃっほー!』に変えてその場でくるくる回り出した。やっぱり再召喚するべきだったか。もっと大人しくて真面目な奴はいっぱいいるし。


「……あれ。あの、召喚獣からは僕らが見えてるんですか?」

「見えてないぞ」

「えっ」

「見えてないが、探索慣れした召喚獣は、召喚主がどの辺からどれくらい見えているかは大体分かってる。経験でな。この映像が出てくる位置は同じだから」

「あー……」


 はよ行け。と告げると、うるさい動きを止めて看板を持ったパペットが歩き出した。その看板には『まだ罠は無いけど厄介なところだとこの辺から罠まみれ!』と書いてある。4級以上になったらたまにそういうところがある、と、こちら側で注釈を足しておいた。

 そして特に何もない道を進んでいくと、土の道が左右に分かれていた。そしてそこから草の高さがパペットの肩ほどまでになり、道が見え辛くなる。


「わ、分かれ道……」

「どっちに進むかは自分で決めるように。……まぁ1級なら行き止まりが精々で、こういう開けた場所なら閉じ込める罠は絶対に無いから、気軽に選んで大丈夫だ」

「行き止まりには、宝箱が多いって聞いたんですけど、本当ですか?」

「……嘘ではないが、モンスターや罠と大体の場合はセットだな。そしてモンスターか罠の確率の方が圧倒的に高い」

「わぁ……」


 そして鈴木君は、左の道へとパペットを進ませた。さっきとは逆に、看板を持ったパペットがその後ろをついて行く。『曲がり角は警戒しないと!』と看板に書かれているが、パペットの行く先に気を取られている鈴木君は気付いていないようだ。

 というか、パペットに指示を出すので手一杯か。……まぁ、慣れてないパペットは、迂闊に指示を出すとそれだけで転ぶからなぁ。


「……鈴木君」

「えっ、あっ、はいっ!」

「集中するのはいいけど、周りはもうちょっと見た方がいい。他の召喚獣はそこまで細かい指示はいらないし、そもそも罠があったところで1体を犠牲に次が通れるなら、パペットによる攻略としては何も問題は無いから」

「えっ」

「いや、そこに並んでるのも一応同一個体だし」

「…………あっ」


 5体を同時召喚したので、4体のパペットが並んでいる。まぁ普通の召喚獣の運用とは違うが、今回はダンジョンに慣れる為だからな。多少は失敗するぐらいでちょうどいい。


「あ、あー、そっか、いやでも……」


 4体のパペットの方を向いて何か悩んでる鈴木君。なお、その間も鈴木君のパペットは道を歩き続けている。その後ろを、看板を持った私のパペットが歩いている訳だが……立ち止まったな。そして看板に『この先落とし穴注意!』と書かれる。

 そしてその文字が『あれ? 何で止まらないの? 主見てるー?』に変わったところで、放置されていたパペットは落とし穴に落ちた。


「あ」

「えっ? あっ!?」


 そこでようやく映し出される画面に視線を戻した鈴木君。これはもう本当に典型的なミスだな。他の召喚獣でもあり得るから、注意して欲しいところだ。


「……安全策を取るなら、ここで残ったパペットを送還しておくといい。それでこの失敗の記憶は消えなくなる。再召喚しても、パペットの再召喚に必要な魔力は微々たるものだし」

「あ、はい……」


 看板を持った私のパペットには、後続が来るまでそこで待機、と指示を出し、鈴木君の再召喚を待つ。……前途多難だな。


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