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ハチ公秋田へ帰る

作者: 谷まどか

おらはハチ公。

おらは日本一騒がしい街の日本一騒がしい駅に置かれている日本一有名な銅像だす。

「けりでなあ(帰りたいなあ)」

ある月が綺麗な晩におらは家出することにした。ここからは標準語で話す。

僕は周囲の雑踏を一瞬でかき分けて、走り出した。そして静止する駅員を無視して急いで改札を突き抜けて山手線に飛び乗った。電車に乗った銅像犬は僕が初めてだろう。電車には女子高生にサラリーマン、OLに派手なお兄さんとお姉さん、地味なお兄さんとお姉さん、お年寄り、とにかく電車は満員だった。

「あれ、銅像が電車になんか乗って、おかしいだろう?」そう思ったかもしれないけど、僕が駅前に建っていたって誰も関心もないのだから、電車に乗っても僕はまるで空気だった。皆、見て見ぬふりの空気だった。しばらく、ガタンゴトンと駅から駅へと電車が走り、会話する人以外は皆、相変わらず何事もなかったかのように駅から駅までの時空間を彷徨っていた。僕はうとうと眠くなった。夢の中の僕は東京駅から秋田新幹線のこまち号に乗った。トンネルをいくつも過ぎ、車内販売のお姉さんが何度も行ったり来たりするのを横目に、僕はまだ眠っていた。新幹線はブナ林をすごいスピードで走る。秋田新幹線は、渋谷駅とは全く違う景色に僕を連れて行く。今は12月だから田園風景は真っ白く何もない。ただ広く広く広大に広がるだけだ。僕が乗る新幹線はただ走る。そして長旅の終着駅、秋田駅に着いた。扉が開いたその時、僕は目を開けた。なんといつもの渋谷駅に戻っていた。いつもの雑踏になんだか僕は安堵した。僕は故郷ふるさとに戻ることは出来なかった。けれどまた、いつでも秋田に帰ろうじゃないか。


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