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邂逅


ここが乙女ゲームの世界だと確信してから、決意も新たに前を向いた俺は、目の前に特徴的な青髪がいるのに気がついてしまった。


「んぇ?!」

「え?なに?どうした?」

「あ、いや。なんでもない!ごめん!」


思わず出た声にスカイが驚いたようにこちらを見てくる。

それに笑って誤魔化して、俺は気付かれないように後ろ姿の青髪を見る。


ちなみにこの世界は圧倒的に茶髪の多い世界である。黒髪ですらほんの一部だし、赤髪や青髪なんてのはこの世界で初めて見たが、周りは髪色について何も言わないから、きっとそういう世界なのだろう。


周りの男子よりも一回り小さい青髪は、前を向いて座っているためこちらを見ない。

それにホッとしながら、俺は恐らく攻略対象者であろう青髪のことを必死に思い出そうとしていた。


妹に見せられたスチルでは、大抵ニコニコと笑っていていた記憶があるが、確か一番過去が重いと妹が言っていた気がする。


(あ、いや待てよ。過去が重いのは白髪の方だったか?)


自分でやり込んでいたゲームではないから必死に記憶を思い返してはいるが、中々出てこない。


(まぁでも、過去に何があったとしても関係ないか)


そもそも人の過去を知る機会なんて早々ないだろう。知ったところで何か出来るわけでもないしな。

俺たちはまだ顔見知りでもないただのクラスメイト。この距離感がずっと続けばいい。


「チャイム鳴ったら席付けよぉ」


そんなことをぼんやりと考えていると、チャイムの音と同時にドアが開いた。

このクラスの担任であろう教師は、薄いという印象がつきそうな程、細く、猫背であってもわかるほどに高身長だった。

寝不足なのだろうか、隈のある目は眠たそうだし、教師は着用の義務がある長めのマントは皺だらけだし、中に来ているスーツは中々に草臥れている。


「今日からお前らの担任になるシオン・アシュタルだ。今から簡単に学校の説明とかするけど、分からなかったら分かってるやつに聞け」


気だるそうな雰囲気を隠そうともせずに、担任の説明が始まった。

主に授業の受け方とか特別授業の教室の場所とかそんな感じだったが、気怠げな雰囲気とは裏腹にその説明はとても丁寧で分かりやすいものだった。


説明が終われば次は自己紹介だ。

俺は一番最後だから何を言おうかとか色々考える。ドキドキしながら他の人の自己紹介を聞いていると、青髪が席を立ったのが分かった。


「はじめまして!僕はソウマ・アルビレオって言います!」


他の男子よりも一回り小さい背をピンと伸ばしてハキハキと喋る姿は、実年齢よりも幼く見える。


「みんな仲良くしてくれると嬉しいな!」


そう言って周りを見渡したソウマ・アルビレオと俺の目が合う。

ニコッという効果音でも付きそうな笑顔を向けられた俺は釣られて笑顔を作る。


これが、俺とソウマ・アルビレオとの初邂逅である。


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