友達
サラリとした黒髪に爽やかそうな顔立ちの隣の席の男子生徒は、心配そうな顔で俺を見ていた。
「えっ…と、だい、大丈夫…デス…」
さっきまで泣きかけていたこともあり、恥ずかしさで声が小さくなる。
「ホントか?大丈夫なら良いんだけどさ、気分悪いとかなら言ってな?俺、保健室の場所とか覚えてるし…。あれなら先生に代わりに言ってやるからな」
ニカッと笑った彼は、良い奴に見えた。少なくとも俺が女だから近付こうとしてるんじゃなくて、純粋に心配してくれたから声をかけてくれたようだった。
「俺さ、遠くから越してきてこっちに友達とかいなくてさ、せっかく隣の席なんだし、お隣さんのよしみで仲良くしてくれよな!」
「うん。私も周りから遠巻きにされてるみたいだし、その申し出は嬉しい限りだよ。よろしく、お隣さん」
「俺、スカイって言うの。スカイ・ウイング」
「私はルナ・ユニヴェール。良ければスカイって呼んでもいい?」
「全然いいぜ!よろしくな、ユニヴェールさん!」
「ルナで良いよ。私たちもう友達だろ?」
「女子を名前呼びってちょっと緊張するわぁ。よろしく、ルナ」
こうして俺は、無事に友人を一人手に入れることが出来た。
脱・ボッチに内心で乱舞する心を抑えて、記憶を思い出してから初めての男友達が出来たことに俺は笑った。
きっと、何気ない会話の一つから俺は前の世界の友達を思い出すのだろう。
寂しさや、突然死んでしまった申し訳なさがあって、でも、それもいつかは過去のことになって、割り切れるようになる。
だって、俺がこの世界に生まれてから十六年も経っている。
記憶が戻ったのはつい最近だから、まるで昨日の事のように鮮明に前世のことを思い出せるが、それもきっと時の流れと共に薄れていく。
なんて、そんなふうに哀愁を募らせてはいるが、俺自身元の世界に帰りたいとは思わない。だって俺はあっちの世界ではもう死んでいるし、それに、十六年も経てば妹も友人ももう俺の知らない大人になっているだろう。
俺だけが、子供のまま取り残されている。
「どうした?やっぱ体調悪い?」
「あぁごめん。心配してくれてありがとう。ただ、友達が出来て良かったなぁって安心しただけだから」
「あ、そっか。女の子一人だし、緊張するよな…。なんかあったら言ってくれよ?力になるからさ!」
「ありがとうスカイ。頼りにしてるよ」
それでも、俺はこの世界で友達とか作って、色々な経験をして大人になって、そして今度こそは平和に老衰で死ぬ。
そのためにも、監禁エンドは絶対に回避するし、その他諸々のハッピーエンドもバットエンドもお呼びじゃない。
俺が目指すのは、みんなお友達の大団円エンドだ。
久しぶりの投稿になりました。
不定期更新ながら、ちまちまと続けていきたいと思っているので、どうか長い目でみてやってください。