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一人目

入学式である今日は天候にも恵まれ、晴れ渡った青空の下で桜の花が咲き乱れる道を歩いていた。その時の俺は、新しい学校生活が始まることへの期待に胸を膨らませていた。


構内の見取り図は既に入手済みであり、それを見ながら入学式の会場である体育館へと足を運んでいた時だった。


ドサリと、何かが落ちた音が背後から聞こえた。

なんだ?と振り返って見れば、一人の男子生徒が持っていた鞄を落としたのだと分かる。


「なっ!なんでここに女がいる!」


俺が認識したと同時に、そいつは真っ赤な髪と同じように顔を赤くして俺を指をさしてきた。

瞬間、俺の頭の中である記憶が蘇る。


《見て!このシーン!この赤髪の男の子、すっごく女嫌いで最初に学園で出会ったルナにも冷たく当たるんだけど実は─…》


記憶の中の妹の声にハッとして目の前の男を見る。顔を真っ赤にさせた赤髪の男が俺を指さして喚いている。

これは、妹が見せてきたスチルそのものの光景だ。


つまりこいつは、攻略対象の一人!


(……ということは、やっぱりここは乙女ゲームの世界なのか…?)


「えっと…」


しかしどう応えて良いかも分からずに、こういう時は笑って誤魔化せとばかりに曖昧な笑顔で返す。

まさかこんなにも早く攻略対象とエンカウントするとは思わなかった。


「ここは男子校のハズだろ!」

「今年から共学になったんだ」

「っそんなの聞いてねぇぞ!」


彼が大声をあげる度に他の登校途中の生徒からジロジロと見られるので、正直静かにして欲しい。

「え?女?」「は?マジで?」とかいう声も聞こえてきて、静かに目立たずにやっていこうと思っていたのに、早々にこれは無理だなと、悟った。


「あぁくそ!とにかくお前!今後一切俺の前に姿を現すなよ!」

「は?え、ちょっ!」


伸ばした手は結局何も掴むことは出来なかった。


「言いたい放題かよクソヤロォ」


主人公はこんな最悪の出会いをしているにもかからずこいつと関わって落とそうとするのか…。メンタル強いな。


そんな現実逃避をしながら、俺は注目の中、体育館への道を歩き始めた。


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