支持率を気にしない
「昨日、自風党の党会議で、支持率公表禁止法案と題された、総理自らの発案し、今国会での成立、速やかな施行を目指すとの事でしたが、解説のグチさんこれはどういう考えで出されたんでしょうか」
「そうですね、まず考えられるのは、失態を隠したいと言う思惑ですよね、失態や失言があれば当然支持率は下がりますから、下がれば野党側はこぞって辞任だ、選挙だって前のめりになるわけですから」
「なるほど、それが公表できないようにして、事前に防いでいるわけですね」
「はい、また考えられるのは、支持率を気にしていたらできない法案を成立させようとしている事ですかね」
「できない法案と言うのは?」
「憲法改正、増税辺りは、支持率低下も考えられる爆弾みたいなものですから、その辺りを考えているんじゃないでしょうか」
「支持率公表できないというのは、アナウンサーとしては何でだと思う反面、まぁ支持率とかどうでもいいよと言う町の人の声もありましたからね、政治への関心の薄さをついてきてますよね、ただこれは、総理は人気取りだけの政策はしないぞと言う決意みたいな感じなんでしょうか?」
「はい、そういう面はあると思いますが、本来ならば政治家自身が、気にしなければいいだけの話なんですよ、今までそうだったんですから、マスコミを巻き込む必要性なんかありませんからね」
「グチさん、これ野党はどういう態度でいくのでしょうか?」
「認めないでしょうね」
「総理大臣がその気なら、この法案を受けてたって、政策で勝負みたいな事はないんですね」
「ないですね、野党は総理の支持率とか政党の支持を気にして政策や方針を決める、そういう政治が民主的な部分が大きい、重いとしていますからね」
「なるほど」
「支持率公表と言うのは、基本的に権力に対する足枷であるわけです、暴走を止めるそういう役割があり、また国民の声を受けとめて進む方向を照らす役割もあるわけですから、総理はそれを理解していただきたい」
「なるほど、グチさんありがとうございました、さて次のニュースです」
リモコンでチャンネルをかえながら、自動販売機の紅茶とデパ地下のチーズケーキをフォークで数度つつく。
チーズケーキを買いに行かされた秘書は、行儀が悪いと言わんばかりに、わざと咳き込んでいる。
「総理」
「あぁはいはい、ちゃんと食べますよ、支持率が下がらなかったお祝いに買ったケーキをね」
「意外でしたね、もっと下がるかと」
「それはそうでしょ、だって政治家には重要でも、本来一般には、どうでもいい情報だから、支持率と天気予報だったら天気予報の方が有益だから」
まぁもしかしたら、あの黒い手帳のご利益かもしれないけれど。
「野党の武器を封じるにはいいでしょ」
「こちら側も封じられていますけれど?」
「緊張感を持って、政治家は政治に真摯に努めるのが本来あるべき姿とでも言っておこうか」
「誤魔化してませんか?」
「はいはい、まぁ支持率が下がる前にこれも出しておくよ」
チーズケーキを食べる前に、一枚の紙を提出した。
人質法案
数度重なる国会の延長による無駄遣いに財政を軽視しているのではないだろうか。
通したくない法案を議論で引き伸ばすことをするならまだ納得もできようが、その議論が不倫しただの20年前と言っている事が違うだの、言い間違いを喜び、それでいちいち総理や大臣に不信任案をだして、議論の時間を減らして国会が延長して余計なお金がかかる。
それならば簡単に連発できないようにすればよいのではないだろうか。
そこで、不信任案が却下された場合、不信任案を出した党の代表者全員が代表を辞め、その後五年は代表になれない。
代表者以外が責任をとる場合は、その党に属する国会議員二人が議員を辞める。なお辞めた議員は3年間は選挙活動及び応援に携わってはならない。
「また、野党が騒ぎますね」
「だろうね」
「この法案の名称何とかなりませんか?」
「どうせ、悪どい法案名で呼ばれるからこのままでいいよ」