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民意 天意

 病室とは思えないほど、豪華なインテリアがあれば、それはそれは高貴な人になったもんだと言えたものだが、個室であること以外はこれといって普通な病室だ。


 個室である時点で、なかなか高待遇だったかもしれないので、不満など言える立場ではない。


 生死の境を、さ迷った身だとすれば、この待遇は天国いや現世なんだけど。


 そんなブラックジョークを思えるほどには、心身に余裕が、出てきたんだと、引きこもって秘書にアピールしようものならば、あの秘書ならば、とっとと記者会見でもしてマスコミへの、復帰アピールや今後の方針の1つや2つ考えてくださいと、言われてしまいそうだ。


 刺されてからは嵐のように物事は、吹きすさぶものだと、当事者を置いてけぼりにするような速度で進んでいった。


 心と身体の一定のヤマを越えたあたりで、医師の許可を得てボチボチと警察に協力したあたりの、ワイドショーは、野党議員がマスコミのフラッシュから逃げていたのだけれど、いったい何をやらかしたのかと、コーラを片手についつい見てしまって、わりと無駄な時間を過ごした。


 そんな無駄な時間を過ごした時に、秘書はやって来て、何をやっているんだとばかりに睨み付けながら、それでも口にしたのは、お祝いの言葉だった。


「おめでとうございます」


「刺されて、めでたいもないよ」


「刺されて総理になれたのは歴史に残るのではないですか、総理が刺されたら大抵の方亡くなってますよ」


「それ、調べた?」


 明治とか古い映像しか思い浮かばないが、総理が刺されたら亡くなるしかないとは、どんな業を背負っているんだと言いたい。


「いえ、勝手なイメージです、まぁ何はともあれ良かったじゃないですか同情票を集めて結果、勝ったんですから、総理就任おめでとうございますお祝いのコーラです」


 見舞いの花を花瓶にさしながら、お祝い品のコーラを小型冷蔵庫にしまいこむ姿には、悲しみとか喜びとか一切感じさせない。


 まぁ、そんなものだろうと思う。


「同情票ねぇ、それは暫くすると死んだほうがよかったとか、選挙自体無効だと言い張るよ、あと総理大臣就任のお祝い品が、コーラってショボくない?」


「それはそうでしょう、与党の大先生方はこれまで通りの、ほぼお飾りの総理を期待されています」



 政治界隈でのご祝儀や同情票、なんてものはすぐに消え行くものに過ぎない。


 正しくないようで、正しい。

 いつまでも感情で政治家を応援しようとしてはいけない。


「多少は目を瞑ると」


「はい、多くの裏切りものがいなくなりましたからそのご褒美みたいなものです」


「数名大物落ちたけれど、いるでしょ野党にさ」


「いえ、内々に打診してきましたよ与党復帰に、傷を抱えた総理を支えるためにとか言って来ましたから」


「はやっ」


 もっとも数ヶ月後の話で、こんなことがあったならば、キズが悪化して退陣が早くなれば、選挙がおこるからその時古巣に戻る算段と、怖いね政治家は。



「恥を知らない政治家でも郡を抜いてますね、流石に今は満場一致で突っぱねましたが、戻る人もいると思いますよ」


「刺されないと復党できないとかしないと、割りに合わない気もするんだけど、刺されて生き残れたら総理になれるなら、考えそうですね」


「どんな部族を目指すんですか」


「冗談だけどね」


「やりかねないと思いました」


 流石に犯罪的なものをやる気はないと言いたいが、突拍子のないと言う点は一緒であるし、もう一度総理大臣になったのは天命とも、強制力とも言えるほどに気持ちの悪いものだ。


「それはひどい」


「悪人の様な顔をしていましたよ」


「何、新しい法案が浮かんだから退院後に調整してほしいだけだよ」


「国民的には、ずっと入院して欲しいと思いますけど」


「これも民意だよ、いや天意かもね」


「天意だとしたら、余程天は日本が嫌いなんですね」



「好きだから意地悪しているかもよ」


「ハイハイ、お疲れ様でした、また宜しくお願いします総理」


「ハイハイ 嘘でも嬉しいよ」



 秘書が病室から出ていったあと、テレビをつけるとワイドショーは、総理の退院日に何がおこるのか予測しようというのか、新たなネタを求めているのか病院前に待機していた。


 もしかしたら秘書を待っていたのかもしれない。


 ここで、秘書がセクハラされましただの謂えば大混乱になるだろうけど、それすらもひとつきふたつきたったならば、日本は変わらないかもしれない。


 まぁセクハラされました等という、爆弾発言もなく秘書はマスコミの海を優雅に泳いでいた。









 数日後に渡した草案を見たときは、優雅さとは程遠い疲れるような目をしていた。


「これ、個人的な制裁じゃないですか」


「いや、ほら一部の層には受けるんじゃない党で頑張るしかないから、派閥の影響が強くなるから、お偉方は満足、若手も一度党を抜けたのに偉そうな人についていく必要もないから、それなりに利点はあるんじゃない?」



 また下らない法案をという目だが、こちらも彼女のいう、悪人のような顔をしていたのだろう。


 総理をやめるまで、民意か天意がこちらに届くまで、それは続く。


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