一歩間違える
そのニュースは、速報として当然として流れた。
現役の総理大臣が、遊説中に刺されたというのは、日本人としては、まず耳と目を疑うよなことであり、理解も追い付かなかった。
そのニュースが流れ、理解されはじめると、野党が躍進する奮起の材料として、ネットでトレンドに連日踊っていた、田舎に帰れ、独裁者に制裁を、くたばれ独裁者、独裁者よ死んで詫びてくれ等々書かれたプラカードや応援幕を掲げていた野党支持者達は、その場に投げ捨て逃げていった動画や写真がネット上では、次々と挙げられ拡散された。
それと同様に、警護が堅牢な総理大臣を刺す動画も公開され、警察、SPなどの失態を問う声も存分に上がっていた。
二十数人の集団が、総理のもとに行こうとするのを食い止めるため動くのだが、実行犯となった青年だけ、素通りのようになり、なんの苦労もしていないかのように、総理の元にたどり着き総理が刃物で刺されたのだ。
その後は観衆の悲鳴のなか即座に取り押さえられた。
誰かの手引きの存在が、ネット上で憶測を呼ぶ頃に流れたニュース内で、容疑者の経緯が報じられ更にそれは加速した。
容疑者が、ネット上で独裁者をぶっ殺すと投稿したところ、野党の顔と言われた女性議員や、大物の先生方も何度もいいねや拡散に協力してくれ、褒めていただき、認められたので、有志を募り実行した。
議員さんたちが、手を回して警備を緩めてくれたのだと、僕達を英雄にしてくれたのだと思います。
野党の名指しされたも、同然の青野りつこ議員は、SNS上、紙面やテレビ等のマスコミの取材に対しこう答えた。
「我々は暴力での政治奪還を訴えた事はない、政治家として正々堂々と言論で闘い、選挙をしているので、あまり我々に不利になるような勝手な憶測はしないようにお願いいたします」
その発言のすぐあとに、容疑者の投稿にいいねを押している証拠の画像や、独裁者よ死んで詫びてくれと投稿している文面の画像が、すぐさまネットでは出回り、テレビや新聞でも取り上げられる事となり、野党は窮地にたつこととなった。
他にもある議員は、バッシングの多さに辟易したのか刺された総理も、刺されるような事をしているから悪い部分もあるのです、政治家は、いきすぎた恨みを出さないように誠実であるべきだ。
その発言も失言として、野党の凋落を加速させた。
野党の演説は、盛り上がりに欠けてしまう。
ネットで盛り上がり、キーワードとして、総理を罵詈雑言であったため、それが使えず、世間の情は野党よりも与党へと流れているのが、まるわかりであるが、弔い合戦の意味合いが出てしまった以上、野党が与党に勝つすべはなくなっていた。
嵐に沈んだのは、野党であった。
振り返ってみると、英雄と言う化け物の危うさは、ネット文化から現れた。
戦前は、一部マスコミが、民衆を煽った時道を誤り、今回ネット文化が嵐を起こし、化け物が生まれ政治は振り回された。
何が破壊されたのか、何が守られたのか、この記事が出回る頃では想像がつかない。
ただ、感情任せに独裁者となじるような政治家や民衆が出ないように、理性ある社会が守られているように願うばかりである。




