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あの嵐の前に見たものは

 今日の議会前に記者達が集まっている。


 連日のネットやマスコミの騒ぎようは、玩具、あるいはお年玉やクリスマスプレゼントをもらえる子供のように、キラキラ、ウキウキしながらも、ギラギラとした中年期のように脂ぎった瞳と笑顔が、印象的である。


 叩いて、振り回して、どんなにか音がなるのかと、どんな目に会うのか、楽しみで仕方ない、マイクを向けて雑音や聞こえるはずのない声すら拾おうとしているようだ。


「総理、総理にとって最後の議会になるかもしれない今の心境をお願いします」


 別に答える必要はないのだが、まぁ吐露したところで困るものでもないといった顔をした。


 あるいは、からかってやろうと言うことだったのかもしれない。


 先日議論に上がった法案審議し、総理に反旗を翻した与党の大御所が容認し野党側が、総理へ解散総選挙を条件に認めさせた法案の議論が今日で終わり、総理が解散を発表する目算が通り、あとは敗戦の将として議員を辞めるとの情報が聞こえるほど、総理の地盤は揺らいでるが故の事だったのかもしれない。



「今の心境は、マスコミの皆様は子供のように可愛くはないのに、大人からは程遠いただ騒ぎまくる子供のようですと、軽口を叩けるぐらいには普通ですね」


 自棄にならずあくまでも普通の顔だった。


 ヘラっと笑った数名の記者や、パシパシキラキラのシャッター音が、記者の興奮を煽ったのか、リポーターは再度質問を続ける。


「失礼な発言ではないですか総理」


「勝手に最後の議会と言うのは、失礼ではないとでも?」


「我々はあくまでも国民の声 聞きたい事を聞いているだけです」


「気にさわったなら謝罪しますが、奇遇ですね、私もマスコミが聞きたい答えと態度をしているだけですよ、おあいこと言うことにしときましょうか」


 最後と言う気負いはなく、本当に軽口を叩けるぐらいに通常運転なのか、今さら悪い印象をマスコミが、報じようが同じだから気にしないということなのかもしれない。


 なので、私も総理に聞いてみた。


 軽口でも本音でも、聞けるものは聞いておきたかったからだ。


「総理は解散総選挙の勝算はあると思っているのですか?」


「今回は負けるかもしれません、次回は勝てるかもしれません、世間は揺らぎます、だけれど、政治家は揺らがず自分の政策や考えを皆様に訴え修正し、より良いものへと変えて暮らしに反映し続けていく事、自分の思いがなければ、誰かの思いを代弁し、誰かの願いを繋ぐ事が、政治家として大事だと思います、そろそろいかないと秘書に怒られるので、選挙に一喜一憂せずお仕事頑張って行きたいと思います」


 そういって軽やかに記者団から去っていく総理は、独裁の一面は見せなかった。


 今回の解散総選挙に、もしかしたら一つ風が吹くのかもしれない。


 この時は、そう思っていた。



 しかし、吹いたのは嵐だった。


 起こることのない嵐を、神風と呼ぶのならまさにそうだったのだろう。



 総理が選挙演説中に、刺されるという悲劇が起こったのである。

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