愚かな思いは燃え上がり
人は忘れる生き物である。
些細な事を忘れる
大事な事を忘れる。
それは防衛本能的なものであるともいわれるし、必要のないことだから忘れる。
辛さから逃げ出すために、忘れる。
幸せであることを忘れ、退屈だという。
そんな風にのたまうから、痛みと引き換えに得た教訓ですら、忘れる。
それを愚かだと言うならば、政治というものは愚かな事の集合体だと言えなくもない。
同じような仕事をしているのだから、同じような醜態など、そこら辺にとっちらかっているのだが、どうやらその辺を忘れ、自分たち周りは綺麗なままだと、本気で信じている。
頭が回るより口がまわった方が優秀に見えやすいのだろう。
散々な状況だと言うことを忘れて、自分たちより、格も年期も、能力も劣っている総理などと見下しているのだろう。
何故 総理をさせているのか忘れているのだろう。
「時期尚早だと思うけどね」
記者会見をネットで見ていてそう思う。
秘書が入れてくれたお茶はぬるく、喉にあるため息を押し込むのには丁度よいものだった。
「まぁ 今までご苦労様でした総理」
「早っ」
「最大野党に自風党大物幹部3人とそれぞれの会派の合流しての新党結成、どう数えても総理は辞めるしかないのでは?」
「まぁだろうね、内閣不信任決議案なんて出されたら数的な理由から辞職かなぁ」
「まぁ買収紛いな法案とか、総理のメンタル保護とか言ってたのですから、数的な理由というよりは自身からでた錆びかと」
「それを通す人達もどうかと思うけど」
「すっかり悪者ですね、国が滅ぶとか言われてますよ、総理が人事をちらつかせて無茶な要求を飲ませたとか」
憤慨している狸やら、それに追随するかのように、いやいつものように青筋をたててる野党議員は、まくし立てていた。
連日のネットの世論と言われているように、叩き潰せとか、二度と権力を持たせぬように田舎に引きこもらせなければならない。
独裁政治にノーを突き付けろ。
罵詈雑言のフリップを、かがげている。
「1、2年程度で与党と野党共同で起こした最大の汚職が忘れられていると思っている証拠だよね、与党の大物幹部と野党が、権力、利権がらみでニコニコしているようにさか見えないけどね」
汚職のほとぼりが冷めるまで、自分たちに負のイメージがつかないように、失策続きで、交代せざるを得ない状況を作るためだったのに。
汚職を連想させてしまったのはどうなんだろうと思う。
自分達だけで、新党を立ち上げた方がまだ格好はついたはずなのに。
「まぁ、好き勝手にしてきたけど、この法案が、最後になるのかな」
「そうなりますね、余計な事や予定外な事などが起こらなければの話ですが。」
「大丈夫、これでも身の程を忘れるほど、愚かじゃない」
SNSの書き込みやトレンドには独裁政治からの解放、独裁総理なんていなくなれ、ありふれためいたワードがランクインしている。
青筋さん、タヌキたちが立ちあげる公式アカウントが、いいねを押しまくる。
熱狂めいたネットの言葉に、ぬるめのお茶はとても良い。
ため息を飲み込み、忘れさせてくれるだろうから。




