表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢追い非凡の異世界改造記  作者: 七草八千代
6/13

目覚め

誤字脱字、ご感想、ご指摘等頂けれは幸いです。


 「……いやぁぁぁぁぁひっく、ひぃっく……やぁぁぁぁぁああああああ!!」


 大きな部屋の中に幼子の、可愛らしくも愛くるしい泣き声が響き渡る。


 涙がとめどなくあふれ出し、抑える事が出来ない。


 いくら見知らぬ場所とは言えなく事は無いだろう?

 私は十五だぞ!! 

 ましてや、この体は……よくは分から無いが、この体は間違いなく私の体だ。

 口ではうまく説明することが出来ないが……それでも、私の体だと感覚的に理解している。

 

 人が日常の生活の上で自らの体を動かす際、考える事無く暗黙知を以って動かしている事に、何の疑問も持たずに、持つ必要も無い様なものだ。

 

 『ならばこそ、許せない』

 

 同年代の誰よりも心身を鍛えたという自負を持つがゆえに、このよく分からない状況下においても、そう雪綱は思うのだ。これは、ある種の傲慢さでもある。


 (……ふざけるなっ!! わたっ、わっ……いやぁぁぁぁああああ……ひっく、やあぁぁああ)


 「……いやぁぁぁぁああああ……ひっく、やあぁぁああ」


 (ふぁ!!)


 今度は体が自らの意思に反して泣いているだけでなく、心と体が同じ様に泣いているのだ。

 先程まで、自らの意思に反し泣き出した体に文句を言っていた雪綱自身も、幼い体に引っ張られ泣き出してしまった。


 『精神が身体に引っ張られている』


 そんな感覚を抱き、まるで自らが幼い頃に戻ったかのような錯覚を雪綱は抱いた。


 その様な事を頭の片隅で考えながらも、言い知れない不安に駆られ心が締め付けられるような感覚に苛まれてしまうも、今の雪綱には如何する事も出来ず、只々只々(ただただ)泣き続ける事しか出来なかった。


 カチャ


 扉が音を立てて開き、コツコツコツっと足音が近付いて来る。

 足音が地下ずくにつれ、何故だかは分からないが、心が安心するのだ。


 「……ふぅ、やっぱり、まだ一人で寝かすのは無理ね」


 近付いて来る人物の姿は、涙で瞳が歪み見る事は出来無いものの、声から女性だと分かる。


 「さぁ、いらっしゃい。エイリアス」


 そう言うと、女性は私の脇の下に優しく両手を差し込み、そっと優しく抱きかかえた。


 「んっ、あったかいんよぉ」


 そう思わず先程と同じ変わった口調でそう呟くも、口調の変化対する動揺を気にする余裕は、雪綱には無く、むしろ、抱きかかえられた事による温かさと、心地良さに感情が優先され、口調の変化と言った問題は忘れてしまった。


 「ふふふふふ」


 女性は私を抱きかかえると、そのまま部屋を後にし、十数秒後には、すぐ隣の部屋へと入っていった。


 その頃には、涙も引き真っ白な肌に赤く泣き腫れた目蓋を開き、部屋の中を興味深げに見回して居た。


 部屋の中には、朝日とは異なる光源が複数あり、そのどれもが暖かな暖色の光を放ち部屋の隅々まで明るく照らし出している。

 暖かな光によって、五メートル近い天井付近まで本棚がある事が分かる。

 本棚には、丁寧な装丁が施された重厚な本が所狭しと並べられ、本の背表紙の文字は日本語とは異なりアルファベットやアラビア文字に近い形態の文字で、その文字には一定の規則性があり確立した文字である事が分かり、並べ方から持ち主の性格が分かる。


 雪綱は興味深げに部屋の中をきょろきょろと見回し、もっとよく見ようと女性の腕の中から身を乗り出すも、雪綱を抱きかかえる女性は、そのまま大きな窓の前に置かれた立派な大机に近付き、大机の対として作られた椅子に雪綱を抱きかかえたまま腰掛けた。

 机の上には、所狭しと本棚とは異なり、乱雑に厚い背表紙の本や紙が積み上げられてた。

 書かれている文字の全てを読む事は出来ないものの、目の前の一部の本の文字を読む事は出来た。


 『魔素と魔力』、『魔術と魔法』、『魔素・*用**学』、『魔力・*用**学』、『魔力**力学』、『純****学・*用』、『魔素**力学』、『天懍(てんりん)大辞典』、『**魔素』


 などだ。


 中途半端ではあるものの少しは読める。

 雪綱はもっと読める本がないかと探そうとしたものの、お互いが向き合うような形で抱きかかえられている以上、この態勢では、これ以上の本の題名を読むことは出来ず、もっとよく見ようと雪綱は自らを抱きかかえる女性の腕の中から、もぞもぞと身を乗り出した。


 「ふふふふふ、もう起きるの? エイリアス?」


 そう女性がやさしく雪綱に声をかける。


 (……エイリアス?)


 雪綱は思わず上を見上げる。


 そこには、ゆったりと波打った桜色の長い髪に、少し目鼻立ちを高くした日本人的な顔立ちの女性の顔があった。

 女性の顔は整っており、その眼は優しげではあるものの、鋭く、目尻が少し下った切れ長の目をしている事から普段の性格が見て取れる。

 そして、その瞳は、雪綱ほどでは無いものの、雪綱と同じ桔梗(ききょう)色をしていた。


 「きれい」


 そう思わず呟き、『もっと見たい』っと、そう思ってしまった。ただ、その思いが良くなかった。

 幼い私の体は、私にの意思に反して勝手に動き、小さなぷにぷにとした手を女性の顔へと伸ばし……ペタっと触れてしまった。


 (何をしているんだ!? 私は触れたいと思ったが……だからと言って触れたらだめだぞ!! セクハラで訴えられるぞ!! それに何勝手に動いているんだ!?)


 その様なことを思っていると


 「……きれいな、おめめ……」


 幼い()()は、またしても勝手に喋る。いや、正確に言えば、あくまでも雪綱の気持ちを素直に喋り、行動しているだけだ。


 女性はしばらく私の好きにさせてくれた。


 「ふふふふふ、あなたも私と同じ奇麗な、おめめをしているわよ。うふふふふ、当然よね~あなたは私の弟なんですものね~」


 女性は、あやす様に言うと優しく私を抱え、机へと向き直らせると、机の引き出しの中から取っ手の付いた丸い手鏡を取り出した。

 手鏡は黒く、漆と螺鈿細工による装飾の施された美しい品で、職人の手間と暇が見て取れる一品だ。


 そんな鏡には、白より白い淡く輝く様な純白の肌に、艶のある純白の真っ直ぐに伸びる長い髪、そして姉と名乗る女性よりも少し下がった、いたずら心に富んだ印象の目に、彼女よりもさらに深い桔梗(ききょう)色の瞳を持った幼子が映っていた。

 年の頃は、五歳に届くか届か無いかといった処で、下手をするとさらに幼い。


 (……この顔は何処かで……ん~)


 その様な事を考えていると、女性は私の白いワンピースの様な服の中に手を入れ、私のお腹をやさしく撫でたり揉んだりし始めた。


 「……!! きゃっ、きゃっ、きゃっ……はぁはぁはぁ、……はわゎゎゎ……うぅぅぅ~お姉さま~っ!! くすぐったいんよぉ!!」


 (……はぁ、はぁ、はぁ、……死ぬかと思った……それにしても、この口調……私が子供の頃に住んでいた京都の京言葉を中途半端にしたようなニュアンスの口調だな。これも、冥土狂人卍のせいだ……何が男の子でも七つまでは女の子の格好をしないと、神様につれていかれるわよ……っだ!!)


 抗議するような声色の私に、姉は……


 「ふふふふふ、あら、エイリアス? ついこの間まで喜んでいたじゃない?」


 「うぅぅぅ~お姉さま、けっこうしんどいんよぉ~」


 「ふふふふふ、ごめんなさいね、エイリアス。朝食まで、まだ時間があるわ。だからもう少し寝ていなさい。お姉さまは、まだお仕事が残っているから」


 そう姉は言うと、先程よりも優しく雪綱のお腹を撫でたり、揉んだりしながら真剣なまなざしで机の上に広げられた紙に目を向けてしまい、雪綱は何も言えなくなり、成すがままにならざるを得なくなってしまった。


 それから、三十分ほど私は姉の膝の上で、姉のお仕事を眺めていた。


 (……あっ!! まずい、お腹の調子が……)


 コン、コン、コン


 部屋の扉が叩かれる音が聞える。


 「どうぞ」


 「おはようございます。お姉様!!」


 元気の良い声と共に、年の頃は十五、六歳の少女が部屋へと入ってきた。

 少女は姉と同じような桜色の髪を持つも髪質は雪綱と同じ様に真っ直ぐに伸びたシニョンをしており、その瞳は桔梗色と言うよりは(すみれ)色をしている。


 「ふふふふふ、おはよう。エイレンシア、どうしたの?」


 「はい、いえ、その、あの子の泣き声が聞こえた気がしたので、あの子の部屋に行ったのですが、居なかったのでもしかしたらお姉様のお部屋かと……」


 「ええ、此処に居るわ」


 そう姉は言うと、椅子ごとエイレンシア()へと向き直り、雪綱を見せた。


 雪綱は、もう一人の姉を見て……


 (……ん~なんと言うか……お嬢様って感じだな。……B、いや……Cか……A……は無いか……アンダーから察するに…………とっトリプルA……ははは……は流石に、それは無いな……Cくらいか……)


 「……貧乳~~!! 持たざる者なんよぉ~」


 (ファッ!?)

   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ