ヒビ
ふとした瞬間、こころは弱くなる
たまごの殻の小さなヒビは広がる
落としたスマホの
ホームボタンもついに壊れる
必要とされたい、認められたい
そんな欲求は掻き出せばいくらでもある
深呼吸して、押し込めて、見ないふりをして
平然を装って、奥底で誰かが泣いている
ぼくの代わりに泣いてくれる
意識をよそへやりたくて、爪先で机を叩く
中指のマニキュアが波打って
剥がれているのを思い出して
指の腹で また、叩く
指先から机へ 衝撃をうつす
忘れたい 苦しかったことはぜんぶ
いらない 嬉しかったこともなにもかも
だからいまは 泣かせて
もう必要ないと 大きな声で叫ばせて