あなたに告白します
この恋、きみ色の続き。
サブタイトル通りの内容。
「似合いますか?これ」
無理やりつけられたペンダント。 それを見ながら照れる大好きな人。照れつつも嬉しそうな笑顔。梨川にとって、家族と過ごす時とはまた違った、幸せを噛みしめる一方で、もう二度とあげられないだろうなという寂しさを感じていた。今回のように、海外という場所で二人きりなんていう機会は、恐らくもうないだろうから。
「これ。買ってあげるよ。」
梨川は、決意していた。これが、最初で最後のプレゼント。これで全てを断ち切ろう。彼への想いを心の奥に押し込めて、今まで通りの友人になろうと。
「…なしかわ…さん?僕に…くれるんですか?」
山里は、嬉しそうな顔にも戸惑いの表情。当然だろう。今まで食事にみんなで行くことくらいはあったが、山里に何かを買い与える、特にこんなアクセサリーなど買ったことないし、縁がないからだ。最初で最後のプレゼントなのに、梨川は山里の目を合わせることが出来なかった。無造作に「いいだろ。似合ってるし。」と言いながら、会計を済ませた。
梨川は思う。目など合わせられない。喋ることだって、出来ない。出来る訳が無い。目を合わせて喋れば余計なことまで言いそうだと感じていた。
「・・・じゃあ遠慮なく。ありがとうございます。梨川さん。」
山里は、感謝の言葉にいつもの笑顔を浮かべた。上げたくない顔を少しだけ上げてみた山里の顔は、やっぱりあの寂しげな笑顔だった。本当は、こんな笑顔見たくない。もっと。もっと本当の笑顔が見たかった。
梨川は、これ以上望んではいけないと自分を戒めるかのように、「じゃあいこう。」と軽く声をかけて足早に歩き始めた。相手の顔を一切向かずに。
向かないじゃない。向けなかった。鏡を見ていたわけではなかったが、確実に泣きそうな顔をしてる気がした。こんな顔を見せれば、絶対に「どうしたんですか?」って、あの寂しげな顔で聞いてくる。そんな顔を見たら、願ってはいけないことを願ってしまう。言ってはいけないことを言ってしまう。
「あ。なしかわさん、ちょっと待って・・・」
待てない。喋れない。足早に歩きながら、自分の決断力の弱さに、自分の覚悟の弱さに、余計泣きたくなる。それでも。それでも、前に歩くしかなかった。後ろを振り返ってはいけなかった。
後ろを振り返らずに、歩いている自分に山里は「なしかわさん・・・」と控えめに、疑問を投げかけるかのような声をかけてきた。不安そうな声なのに、自分は黙り続ける。何か、いじめてるみたいだなと下を向いたまま自嘲気味に笑った。
もうこのまま行かなきゃ、後戻り出来なくなる。そう思った時だった。
「なしかわさん!!」
山里の聞いたことない強い声、強い力で腕を掴まれた。驚きのあまり、振り返ってしまいそうになるのを無理やり抑えた。振り返ったら、確実に言ってしまう。言ってはならない言葉が、溢れてしまう。
「なしかわさん・・・。いったい、どうしたんです?」
絶対にあの顔をしてる。その寂しそうな顔を見たくない。見たくない。が、させてるのは自分。させないようにするには、どうしたらいいんだ。梨川は考え抜いた末、重い口を開き始めた。
「・・・ごめんな。」
そう呟いてから、ゆっくり振り返った。これ以上、梨川は一人で前を歩き続けることはできなかった。振り返るしかなかった。後ろを向くしかなかった。それでも、目の前にいる人の顔は見れなかった。ためらいもあった。やっぱり言ってはいけないんじゃないかと迷い続けていた。それでも、彼にはこれ以上、山里の寂しそうな笑顔を見続けることは、耐えられなくなっていた。彼の想いは、ため息とともに限界を超えた。
「…ごめん。ここでは日本語わからないと思うから言うわ。」
もう止められない。この想い。
「ごめんな。俺、気づいてたんだよ。山里君の気持ち。」
初めて会った時から。
「でも・・・答えられなかった。俺、大事なものありすぎるから。」
もうこの結末は決まってたのかもしれない。
「だけどな。もう・・・黙ってられないわ。」
もしかしたら、不幸への道を歩いているのかもしれない。
「ペンダントつける嬉しそうな山里君見てたら…俺、黙ってられるわけない。」
何かを犠牲にしなければならない道なのかもしれない。
「俺もな。山里君のこと・・・」
それでも。
「好きなんだ。」
それでもあなたが好きです。
人通りの少ない路地裏。そこでの突然の告白。いつもの梨川さんらしくないとは思ってた。僕を誘ってくれたことも。ペンダントを買ってくれたことも。
だけど。だけどまさか、僕の気持ちが気づかれてるなんて、思ってなかった。そんな素振りなかったから。だっていつも。いつもの梨川さんだったじゃありませんか。
それ以上に。梨川さんが、僕のことを想ってくれてたなんて思ってなかった。友達以上の想いを持っていてくれたなんて。そんな素振り、全く見せなかったじゃありませんか。
すべてが突然すぎて。すべてが予想以上のことで。 僕には一瞬全く理解できなかった。
すべてを諦めると誓ったはずなのに。誓ったはずの相手からの告白。
「ごめんな。こんなこと言わないつもりだったんだ。」
そんなことない。今の僕の気持ちをあなたは理解していない。
「だって俺、家族を一番大事にしないと。だから山里君を一番に出来ない。」
知ってます。そんなことは、あなたを好きになった時からわかりきってたことですから。
「だから、山里君にとっては何にも得がない。だから言っちゃだめだと思ってた。だけど・・・」
その続き。あえて聞かせてください。
「やっぱり好きなんだ。」
僕もあなたが大好きです。
昔書いた小説のリメイクなのだが。
この言い回しとか、文体。今はかけないなぁとつくづく思う。