五話
家に着いた。
この家は親と住んでいたものだったのだが
三ヶ月前に海外に両親妹ともに赴任している。置いて行かれた。寂しい。
ちなみに二人とも大企業のなかなかのお偉いさんだ。
「着いたぞ」
「ここが君の家?貧相だなぁ」
「そりゃ西洋建築と比べられてもな」
家のドアノブに手をかけた。
開かない。そんなはずはない。しかし開かない。鍵はかかってない筈だ。
誰だか押しても引いても開かない、というかドアノブすら回せない。仕方なく鍵を使うことにした
「何をやっていたんだい君は?」
「鍵が開かなかったんだよ。かけて行かなかったのに」
恐る恐るドアを開けると
「あ!お帰り!」
幼馴染が待っていた。
「どうせ起きないだろうと思って起こしに来たの!」
神永遙。幼馴染である。俺は即座に通報した。
「あ、もしもし警察ですか?家に帰ったら見知らぬ人がいたんですけど、はい、はい、わかりました」
「あー!ごめん!ごめんなさい!謝る!謝るから〜!」
「許さん」
遙は手に持っていたおたまを床に叩きつけた。一切の容赦なく。あとで取り替えておく
「お前、料理の一つもできないくせにおたまなんかもつなよ」
自慢では無いが俺はそこそこ料理ができる。
こいつは味噌汁から火が吹いたりカレー作ろうとしてなぜかハヤシライスが出来るような奴である。
「別に良いじゃん!よく漫画とかでは幼馴染が料理作るってシチュエーションあるよ!」
「お前のあれは料理では無い。兵器だ」
「おう、流石に今のは傷つくぜ」
後ろからそっと服の裾を引っ張られたので振り返ると
「誰だいこの人…見るからに頭がおかしそうだが…」
完全に怖がられている。
「ああ、そうだったな。遙、こいつはアルル。俺と契約している妖だ」
事情を説明した。当たり前だが遙はとてつもなく驚いている。
「え?なんで?この子が妖?ていうかまず高校入るまで妖と契約はできないんじゃなかった?」
「死にかけだったから仕方なく、だそうだ」
どうも妖側からしたら時期とか別にどうでもいいらしい
「まぁそこは良いよ」
遙は下を向いて息を大きく吸って言い放った
「なんでこんなに可愛いの⁉︎ちょっとロリッぽいけどこんなに可愛い子中々いないよ⁉︎」
やたら大きな声で叫んだ。うるさいって言ったら怒るんだろうなぁ
「良いよ。僕が説明する」
横で喚いてる遥に向かい、アルルは説明を始めた。