起虚
経験からの憶測による、まるで飢えた獣のような、打算的でない人間は一般人からしたら、一つ二つと見える彼らの海の底にある宝物は、既に錆びついているように見える。
しかし、そんな彼らの澱みは社会の中に存在するものではなく、個なる子の内に存在する色で、それを測る物差しは我々の変色への侵食を狙って、暗闇の中で獲物を射る狩人のように息を潜めている。
そう言った、特殊な気配を感じ取ってはそれを避け、恐怖なのかそれとも好奇心からくるものなのか、そこはかとなく感じられるこの感情に、自分は終止符を打つことが出来ないように感じられる。
それを特定するために、もがき続ける事が心の安寧に繋がるのならば、彼と自分を比較し、それを受け入れる行為は、どうも重要性に欠けているように思われる。
そんな持論を展開していたわけだが、自分の流れ着いた意識は外を向いていた。
何故なら目の前の他人がこちらを見つめており、それは自分の脳みそを弄くられているようで、全てにおいて見透かされている過去に身に覚えのある気配を感じ取り、肌が凍りつき、思考は焼きただれた臓物のように何を考えても虚を描くだけだった。
そんな私的な感情に一振りの刀が振り下ろされた。