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平凡勇者の世直し漫遊記  作者: ワタリガニのように
第2章 平凡なお上りさんの冒険者
51/55

第44話 椿姫さんのエゲツナイ口撃に、ミュラさんが慌てて窘める。良いよ、ミュラさん。椿姫さんのそういう悪戯っ子の性格はよく知ってるから。今更この程度では気苦労するくらいだよ。ははは。

謎のブーストで書き上げたので投稿します。


重ねて言いますが、作者にミステリー物は無理です。

第44話 椿姫さんのエゲツナイ口撃に、ミュラさんが慌てて窘める。良いよ、ミュラさん。椿姫さんのそういう悪戯っ子の性格はよく知ってるから。今更この程度では気苦労するくらいだよ。ははは。






『    声明文


   ジュール子爵殿


 いろはにほへとちりぬるを

 まちてながしたなみだをぬぐわん

 ふしてうごめくじごくのあてな


 もろびところびてじひをえん

 くろびとなげいてつみをえん


 貴様の愛嬢確かに受け取り申した。



     令嬢受取人 エンエイ   』



 犯行声明文の最後の名前の部分は毛筆でサインされている。


「これ、何処を斜め読みするんだ?」


「コウ様?」


 僕の呟きにミュラさんが不思議そうな声を出す。


「コウ、貴方が見えている文面は、【万能翻訳】で日本語にされたものよ。こちらの文字で斜め読みは出来ないわよ。」


 そうだった、横書きの日本語に違和感を感じなかったせいで、異世界の文字とか意識してなかった。こっちの世界の文字は斜め読みとかできないのか。


 でも、いろは言葉はこちらの文字でどう表記されるんだろう? 気になる。


「どうなんだろー? 銀ちゃーん。」


 椿姫さんの言葉に釣られ、サクラさんを窺うが、ツと目を逸らされてしまった。――おーい、サクラさーん。


「……んっ、翻訳は万能という事よ。」


 サクラさんはソッポを向いたまま誰にとでもなく呟く。つまりは分からない、と。


「それにしても、本当に愉快犯のようですわね。」


 妙な方向に話が進まない様、本筋に話を戻すミュラさん。


「確かにそうね。犯行声明の署名は復讐請負人のものだけど、文面自体は義賊《ラビットテール》のものよ。」


「そーだねー。訳の分からないー文面がー、特徴ーだねー。」


 サクラさんも気まずいのか、ミュラさんの尻馬に乗る。


「……ところで、《ラビットテール》ってなんですか?」


「《ラビットテール》を知らないですって、貴方何処の田舎者ですの?」


 僕の無知にイリーナ嬢が愕然とした表情で応える。確かに世事に疎いのは事実だけど、このお嬢様結構ズバッと言うね。


 ミュラさんと椿姫さんも信じられないといった表情で僕を見ている。


――いや、ミュラさんは兎も角、椿姫さんは僕が異世界人で、こちらの世界に転生して間もない零歳児だと知ってますよね?


「いやぁ、素晴らしい! コウくん、キミはいつもボクの予測を遙かに超えてくれる。」


 いやいやいや、ロードさん。僕はあなたを頻繁に驚かせてはいないでしょう。


「コウ、貴方は見た目からして驚くほどの黒さよ。」


 僕の装備みためはサクラさんが拵えたモノでしょうが。このミニ世紀末覇者の弟のような装備いしょうがファンタジーの世界ではそんなに浮いて見えないのが唯一の救いか……。


 じっと天井を仰ぐ僕。うん、俯くと目からナニかが零れ落ちそうだ。


「そーだよー、コウくんー。盗賊団のー中にいてもー、違和感ないよー。」


「つ、ツバキ、貴女何を口走っていますの!」


 椿姫さんのエゲツナイ口撃に、ミュラさんが慌てて窘める。良いよ、ミュラさん。椿姫さんのそういう悪戯っ子の性格はよく知ってるから。今更この程度では気苦労するくらいだよ。ははは。


「――そうですわ! コウ様のぐれいとないでたちは、彼の【流血帝】すら裸足で逃げ出しますわ!」


「…………。」


 ミュラさん、両手の拳を握り締めて力説してるけど、それって盗賊団より恐ろしい存在という事になるんだけど……。そうか……、はぁ。


「ミュラ、やるわね。今のコウにダメージを与えるなんて。」


「やーるーぅ。」


「ちがっ、――コウ様、違いますわ。わたくしはただ、コウ様をお慰めしようと……。」


「……貴女、口下手にも程がありますわ。」


 ミュラさんの言い訳に、イリーナ嬢のツッコミが容赦なく入る。


 そこは突っ込まないで上げて下さい、イリーナ嬢。今の彼女は純粋でいい͡娘なんです。


「――それに、貴女達、仮面の男は殆ど喋らないけど、よく意思の疎通が出来ますわね。」


「フッ、おまえ、あなたの関係だからよ。」


 どんな関係だ、そんな事言った事も無ければ、言われた覚えもないぞ。


「つーかーの仲ー。」


 それも違う!


「――まぁ、わたくしにとってはどうでも良い事ですわ。」


 ……なら言わなければいいだろうに。これが言わずにはおれないという奴なんだろうか?


「それなら、言わなければいいんですよ、イリーナ嬢。饒舌は尻軽と言われますよ。」


――うわおぃ! 心の声が口から漏れ出したのかと思った。って言ったの、ロードさんか?


 アンタは一言どころか二言多い。問題児か? よく貴族相手に商売が出来るな。こんなんじゃ命が幾つあっても足りないぞ。


「良くお聞きなさい。《ラビットテール》とは、人攫いを専門にした義賊ですわ。」


 ロードさんの失言には特に反応せず、話を進めるイリーナ嬢。大らかなのか面倒くさがりなのか判断に迷うな。


『あたしは後者に一票。』


『――あー、わたしもー同じくー。』


『え? あ、わたくしは……棄権で。』


 いやいや、そんなこと聞いてませんから。それよりも……。


「――人攫いなのに、義賊ですか?」


「……本当に何も知らないですのね。」


「それはだね、コウ君。《ラビットテール》のターゲットが、違法奴隷商に売られた非合法の奴隷たちだからだよ。」


「そういう事ですわ。言っておきますが、わたくしたち貴族は違法奴隷など購入したりしませんわ。ですが、豪商や都市国家群の権力者などは違法と知りながらも手に入れようと、裏で違法な闇取引に手を染めてますわ。」


「違法奴隷を手に入れた者たちは、違法取引がバレても決して手放そうとはしないからね。『これは正当な手段で手に入れた奴隷だ』と言ってはばからない。奴隷として取り引きされる事のない種族であろうと、ね。」


 生きの合った説明を続けるイリーナ嬢とローグさん。それにしても、こちらの世界の貴族はクリーンだな。


 つまりは、違法であろうとも取引さえ済ませてしまえば、奴隷商は兎も角、違法奴隷を手に入れた側が突っぱねれば、違法奴隷を解放する事は出来ないらしい。


 そんな馬鹿なと思うが、こちらの世界ではソレが当たり前の常識らしかった。


 違法奴隷が解放される為には、違法奴隷商を摘発し保護されるか、奴隷主が自主的に解放するしか方法が無かった。……これまでは。


「そこで現れたのが《ラビットテール》よ。頼んでもダメなら奪ってしまえ。そんなノリで弱きを助け強きを挫く人攫い専門の義賊が誕生したのよ。」


 そして、サクラさんが話を受け継ぐ。追加の情報は、違法奴隷として売られるのは主に妖精族と獣人族が殆どらしい。愛らしい愛玩奴隷と勇ましい戦闘奴隷の需要がメインだとか。


 その義賊ラビットテールは謎に包まれており、実働隊のメンバーが女性であること以外は全てが謎に包まれ、組織の規模や個人情報はもとより、実行部隊の容姿や素顔までもが表に出る事は無かった。


――そう、解放された奴隷たちからは兎も角、被害|(?)にあった者たちからも何故か揃って口を噤んで彼女たち《ラビットテール》の情報を漏らさなかった。


「――と、言うところかしら。」


 そう話を締めくくるとサクラさんは、カップを両手で持ちコクコクとお茶を飲む。


 成程、それで、義賊・・《ラビットテール》と呼ばれているのか。納得納得。……だけど。


「それで、《流血帝》って何?」


「「「「「……………。」」」」」


 いや、そんな盛大なため息吐かなくても……。だって、僕知らないし。










お読みいただきありがとうございます。


この様な不定期な投稿になっても、

お付き合いいただき感謝いたします。


よければこれからも『平凡勇者』を

よろしくお願いします。


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