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平凡勇者の世直し漫遊記  作者: ワタリガニのように
第1章 平凡な〇歳児の冒険者
20/55

第15話 言ってみたかったんですね、桜さん。

サクラ「――あのバカ、どうしてくれよう……。」

ツバキ「あー、なんかー、聞いた事ーあるーセリフー。」

女 神『ツバキさん、それを言わないのがお約束でしょう。』

サクラ「そんなんじゃないわよ! 駄女神。」

ツバキ「荒れてるねー、何があったのー、銀ちゃんー。」

女 神『まぁまぁ、前書きでするより、じっくり、後書きで聞きましょう。』

サクラ「……そうね。――まずは、本編を楽しんで頂戴。」

第15話 言ってみたかったんですね、桜さん。






「よぉ、登録できたようだな。」


 受付カウンターから離れた僕たちに、声をかけて来たのは、親切な冒険者、バンダナ男と禿げ頭の男たちだった。


「クックックッ。めでたいぜ。これで、坊主も俺たちと同じ冒険者だな。」


 相変わらず、見た目は悪党面だが、僕の冒険者デビューを祝福してくれるらしい。因みにバンダナ男がサンカク、禿げ頭がバッツという名らしい。……彼らのパーティーメンバーにシカクやマルとかいるんじゃないだろうな。思わず短絡してしまいそうな名前だった。


「バッツ、冒険者に坊主は失礼ってもんだ。ゴロウコウ、困った事があったら、いつでも相談にのるぞ。」


「おお、すまねえな。ゴロウコウ、ケガした時は俺がいたら回復魔法で治してやるぜ。Eランク以下なら無料だからよ。」


 驚きな事に、バッツは魔法戦士で、回復魔法のスペシャリストだった。しかも、低ランクの者には無料で回復魔法を使っているらしい。この領都のギルドでもトップクラスの実力者で、多くの冒険者に慕われているとか。因みに若い美人の嫁さんもいるらしい。勝ち組過ぎる……。


「――おっと、そうだった。ゴロウコウ。一つだけ忠告してやる。」


 バッツたちは僕たちに手を振って離れようとしたところで動きを止め、思い出したように告げる。そのまま首を傾げ、入口側にある大きな地図を指し示す。


「――あの地図についてだ。×印があるだろう? あれは高ランクの冒険者が殺られちまった場所だ。」


 成程、×印のある場所は危険なポイントなのか。傍に記入されているAとかBがランクなんだろう。――結構あるんだけど、この辺りはそんなに危険なんだろうか?


「ん? ああ、この辺は危険な場所はあるが、ここまで酷くなっちまったのはここ数年の事だ。」


 何も言ってないが(話せないし)僕の気配で察したのか、バッツが疑問に答える。


「まあ、今はその要因もいなくなった(・・・・・・)からよ。その点は安心していいぜ。」


 何ですかそのフラグ立は? 全然安心じゃないんですけど……。なんか訳ありみたいだし。


「――でだ、高ランクでもヤバい場所には近づかないのはお約束だが……、ここだ。」


 バッツは僕たちを誘い地図の近くまで来ると、徐に地図上の一点をに拳をぶつけた。ゴスッ、と結構デカい打撃音がした。


「……数日前に、ここで高ランクのギルドカードが見つかってな……。」


 隣にいたサンカクが手に持った赤い棒のようなもので先ほどバッツが叩いた場所に×印を入れる。――その横にはアルファベットでAの文字が添えられる。


「知っているか? ゴロウコウ。死んじまったヤツのギルドカードがどうなるかを……。」


 僕たちに背を向け地図を見上げたまま、声を低めて続ける。こういった死亡時のギルドカードの扱いに関しては、ギルド側からは一切説明はしないらしい。そして、それを成りたての冒険者に教えるのが先輩であるベテラン冒険者たちの役目だそうだ。


 理由は様々で、ギルド側から不吉を告げるのはタブーであるとか、過去のジンクスであったり、また、ベテラン冒険者から教わる事で、心構えを学べるなどがあるらしい。


 それはさて置き、ギルドカードの事だ。持ち主が死亡した時、ギルドカードは持ち主から魔力供給を絶たれる。そうなると今度はその地にある漂う魔力と結びつくため、持ち主の遺体が移動されてもギルドカードはその地に留め置かれる。カードの破損に関してもその地の魔力を越えなければ修復され続ける。


 そのため、持ち主の死亡場所を特定できる可能性があるそうだ。また、所有者が死亡したギルドカードは、発見者が持つギルドカードと重ねる事により、その場から持ち運ぶ事が出来るようになっているらしく。発見した冒険者は、最寄りのギルドにギルドカードを添えて報告する義務があるそうだ。――そう、バッツもまた、発見者だったのだ。


「――ラフレシア。帝国から来たAランクパーティーだった。リーダーで『帝国の徒花』シッカク、『お調子者』のマール。フンッ……。気のいい奴らだったんだぜ……。」


 ……ここで出てきますか、その名前……。それにチーム名に2つ名……。ツッコミはよそう、シリアスだし……。


「兎に角だ。ココはマジでヤバい場所だ。他とは訳が違う……。絶対近づくんじゃねぇぜ。」


 凶悪な顔を更に極悪に歪め、忠告するバッツ。気持ちはありがたいけど、恐喝されているようにしか見えない。本当に見た目で損をしているよ。


「――忠告、感謝するわ……。」


「ありがとーねー。」


 桜さんたちが僕の代わりに礼を返し、バッツたちから離れる。少しテンションが下がった。――考えてなかったな……。残された者たちがどんな思いをしたかを……。タカシ、メグ……、僕が死んで、今お前たちがどんな思いをしているのか、今の今まで考えもしなかった。スマン、僕はこんなにも薄情な奴だったんだな。


 それに、……無表情に壁の一部を見つめる彼女の横顔が、記憶の底から浮かび上がる。


 ――テュレ、……テュレサーヴ・メイヤードゥナー。僕は君を怒らせたのだろうか? 呆れさせたのだろうか? ……それとも、悲しませてしまったのだろうか――。






          #####





 過去の事はどうにもならない。なら、今の事を全力で全うしよう。あれ? 言葉被った?


「――まあ、色々あったけど、依頼を受けて、サクッと、レベルアップするわよ。」


 桜さんが付かれた様子でため息を吐く。テンプレじゃないけど、色々あったよな……。何故、冒険ギルドに寄って、冒険者登録するだけで疲れているんだろう。ここの人たち濃い過ぎるよ……。


「んー、色々あるねー。依頼ー依頼ー、と。」


 椿姫さんも選んでいるし、僕も見てみるか。どうせ、選ばせてくれないだろうけど……。


 入口側から、Fランクの依頼書がピン止めされている。ここは領都内の軽作業やお使い、肉体労働ばかりだ。でも、この御者募集若干名ってなんだ? 依頼内容が噴水の周りや領都の坂道、狭い道など決められたコースを2台の馬車で疾走する。って書いてあるけど? レースかなんかか? しかも、警備隊に捕まっても罰金はこちらで負担します。とかも注釈されてるし。


 続いてEランクの依頼は、薬草、鉱物、小動物の採取や狩猟。そして、魔物の討伐……。って、何してるんだ? この男。


 Fランクから読んでいた依頼書から目を離し、隣のEランクへ視線をやると、そこでは、やせ型猫背の盗賊風の男が、依頼書に落書きをしていた。良いのか? そんな事して。『畜生』とか、『あの冷血女』とか言ってるし……。近寄らないでおこう。――因みに落書きされた依頼書はこんな感じになっていた。



 依頼種別  (とくべつ)討伐


 依頼期限        常時

                    (1)

 依頼内容  (あおぼぶ)ゴブリンの討伐。(●)匹以上。

           (ギルド)

 対象地域      (■■)周辺 及び 王都へ続く街道近辺。


 報酬          銅貨50枚 1匹追加ごとに銅貨10枚



 ( )の中が落書き部分だ。何をやっているのやら……。


「――依頼書の改変及び棄損は懲罰の対象ですよ。覚悟は出来ましたか?」


 ――うぉ。いつの間にか、僕の後ろに青いボブカットの受付嬢が立っていた。声を上げるまで気配を感じなかったよ。


「――ひょえぃっ!」


 落書き男は奇声を発し、後ずさるように僕の方から離れたが、受付嬢の踏込の方が早く、当て身を喰らわされ、アッサリと崩れ去った。……受付嬢ってどんだけ強いんだよ。


「フッ、愚か者……。」


 そう呟くと、青髪の受付嬢――胸元のネームプレートには『S級受付嬢 リーライア』と記されていた。は、買取カウンターに戻っていった。周りでは歓声が上がり、取り巻きのような人たちが口笛を吹きながらはやし立てている。――それにしても、受付嬢にもランクがあるんだね……。


 倒れた落書き男と落書きされた依頼書は、別の職員が後始末をしている。こういうのを見ると、荒くれ者たちの溜まり場って感じがするが、今回は冒険者が受付嬢に伸されていたのを見たせいか、ビミョーな気分になった。……なんだろう? このアウェー感。これが、異世界の洗礼なんだろうか?


「――ここは、基本通りにいくわよ。」


「さんせーのー、反対のー反対ーなのだー。」


 桜さんは徐に、一つの依頼書に手を伸ばす。後、椿姫さん、何の真似か知りませんが、賛成って事でいいんですよね?





          #####






「――さあ、北へ向かうわよ。目指すは、蛇の谷よ。」


 今、僕たちは領都の外にいた。日の光は少し傾き、昼の2時頃といったところらしい。


 あの後は、依頼の手続きと僕のパーティー申請を済ませ。昼飯は手早く屋台の肉串を食べた。(僕は椿姫さんの謎袋から取り出した流動食)


 武器や旅の道具類は既に揃えていたので、ここでは補充することなく、アッサリと領都を出た。


 出る時も門番にビミョーな顔をされたが、それでも問題なく通過できた。――まぁ、あの凶悪な面構えのバッツさんでも問題なく出入りしているから大丈夫なのだろう。


 ここは領都の東側、こちらは丘が連なる南の街道と違って、青々とした平原が広がり、その中を東へ抜ける街道がなだらかなカーブを描いて地平線まで続いていた。東南から南にかけて森が広がり、北は富士山並みの山々が連なっている。冠雪はしてないようで黒々とした岩肌が山頂を覆っているようだ。


 領都の南に行けば母上縁の伯爵領があり、東の街道から北へ別れる道を進めば王都に続く。


 確か、依頼はゴブリンの討伐だったはず……。桜さんも基本通りと言ってた。――なのに何故……。


「――Aランクパーティを壊滅した相手……。パワーレベリングには打って付けだわ。」


 そう、バッツが拳をぶつけていた位置。Aランクパーティ『ラフレシア』が壊滅した地。――蛇の谷は、領都から真直ぐ北に向かった所にあった。


「山がー、私をー呼んでいるー。」


 椿姫さん、これから行く先は、山ではなく、その合間の蛇の谷ですよ……。まあ、また何かの物真似なんでしょが……。


 桜さんは領都を背に峻厳なる山々を見据え、軽く一歩を踏み出す。それに続く僕と椿姫さん。


「――さあ、あたしたちの冒険は、これからよ。」


 それ2度目ですよ。……言ってみたかったんですね、桜さん。





女 神『――さて、何があったのか、話して頂けますか、サクラさん』

サクラ「……あんたに、仕切られるのは気に食わないわね。」

ツバキ「まーまー、銀ちゃんー、落ち着いてー。」

サクラ「……仕方ないわね。――実は、あのバカ、リアルが忙しくなったから、あたしたちの活躍をダイジェスト版の如く箇条書きにしてお茶を濁すつもりのよ。」

女 神『……それは、ヒドイですね……。』

ツバキ「そーだねー、読者のー人たちにもーしつれーだねー。」

サクラ「――まあ、その件は、アレと一緒に握り潰してあげたわ。」

女 神『……それは、――仕方ありませんね。』

サクラ「だから、今後の対応を拳で語ろうとしたのだけれど……。」

ツバキ「――銀ちゃんー、拳はー必要ないよねー、多分ー。」

サクラ「……逃げられたのよ。」

女 神『――神罰が必要ですね……。愚かな子羊を導くのは、やはりムチしかありません。』

ツバキ「あれ? メーちゃん? 女神さま?」

サクラ「――次回、投稿分は分捕ってあるわ。日時も10月24日12時にセットしてあるし。」

女 神『――よくやりました、サクラさん。では――。』

サクラ「――ええ、あのバカを追うわよ。」

ツバキ「…………。じ、次回も~、見てねー。」

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