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平凡勇者の世直し漫遊記  作者: ワタリガニのように
平凡な異世界人
2/55

プロローグの一

前話を間違って投稿してしまった………。

このまま続けるしかないよねぇ。

どうしよう………。

プロローグの一




『――の――お―――さい。巧さ――』


 どこからだろう、朧げな声が聞こえる。声とともにユサユサと身体を優しく揺らされる感覚が心地いい。肌を撫でる暖かな陽射は微睡むのには最高のシチュエーションだ。



……ん? いつの間に横になって寝ているんだ?



『――――さん。朝――よー―――で――』



――しかも朝? もうそんな時間なのか、早く起きないと……。



 と思いつつも、瞼が重くなかなか目が開かない。元々低血圧気味なうえ、この極上の寝心地……意思の弱い僕にはムリだ……。この強大な敵には絶対に勝てないであろう……また、母さんに叱られる……。


「――て、痛ッてー!!」


 至高の微睡みから一転、頭部を襲う激しい痛みにのた打ち回る。流石の睡魔も跡形もなく消え去った。だが、激痛に目を開ける余裕もない。



――頭の激しい痛みって、まさか脳梗塞か?!



 かの有名なフレーズ『バットで頭部をフルスイングされたような激痛が――』でお馴染みの……そりゃ死ぬよそんなスゴイ痛みなら――。


『――違います、症状ではありません! 神罰です』


 あまりの激痛に、バカな事を考え呻いていたら、女性の涼やかな声が辺りに響いた。


『えッ、大丈夫ですか? でもわたし、そこまで酷くなるほど、力込めてませんよ。――込めてないですよね?』


 『キレイな声だなー』『美少女の声に違いない』と頭の痛みを堪えながらもそちらに気が逸れる。僕も思春期の男だったんだと、そんな下らない事を考えた自分に少し戸惑った。


 何だかんだで、美少女|(そうに違いない!)の声がアワアワしてきたら、何故か頭痛の方も治まっ

てきた。――あー、痛かった……。


「――て、なんじゃこりゃぁッー!!」


 涼やかな声に導かれるように、あたりに目を向ける。見渡す限り白い……白い世界が広がっていた。



――世界は白いよ、どこまでも……。世界に広げよう、シロシロの輪。――いや、何を言ってるんだ、僕は。混乱しているのか? こんなこと(・・・・・)二度目じゃないか。慌てる――



「二度目? そうだ! 僕は……」


『――あのー! 聞こえていますかー? もしもーし?』



――思い出した。僕はあの時、あの大通路で魔獣に殺されたんだ……。



 目を閉じればあの時の記憶が鮮烈に蘇る。薄暗い大通路。松明の灯りに浮かび上がる魔獣の牙。ヤニ臭い吐息……。――ヤニ臭い? 魔獣はタバコでも吸うのか? あれ? なんでそんな事気にしているんだ? 僕は……。


『ばか、あほ、あんぽんたん! うー! やー! たー!』


 初めての異世界。変わらぬ日常。力への渇望。ヤニ臭い息。平穏な日々。不信と慕情。惰性と希望。打算。ヤニ臭い吐息。裏切りと祈りと願い。魔獣の口が臭い。そして、死――


 今まで記憶が洪水のようにあふれ出て、木の葉のような僕の心を押し流そうとしている。絶望と諦念。心が張り裂けそうなほど痛いのに……。何故だ、ヤニ臭い魔獣に食いつきすぎだろ自分。


 さらに追い打ちをかけるように、可愛い声で残念な事を言ってるのは誰だ?


「……なんか、どうでもよくなってきたな。うん、気が抜けた。」


 それに、よく考えたら、これだけ声をかけながら無視されたら、声の主もキツイよな。自分だったら、軽く引き篭もりになる。それ以前にこれ以上、無視したら人として拙いよね。うん。そろそろ本題に戻ろう。


 思い立ったら吉日。先ずは顔を上げてみる。何故なら、考え事をしていると人は皆俯いてしまうから。それは自分でも例外ではない。だが、上げだ視線の先には誰もいない。


 透明人間か? いやいや、これは相手が高位の次元に存在していて、低位の次元に存在する自分には視認する事が出来ないと云うアレか……。流石はファンタジー。恐れ入った。


『どこを見て言っているんですか。ワザとですか?』


 いや、割とホンキなんですけど。今のは後ろから聞こえてきたような……。その場でくるりと身体ごと振り向く。


「あれ、誰もいない。」


 というか何もない白い世界……。もしかして、怒って帰っちゃった?



――コレって拙いかも。



 このまま放置されて、永遠の時空の中を空しく彷徨うのか? 間違いなく気が狂う未来しか想像できない。と、愕然とする間もなく、目の前に人影が現れた。うぉ! スゴイ美人――。


『もう! なんでタイミング良く振り返るんですか! 態々移動したわたしが、バカみたいじゃないですか!』


 それは、見間違いようもないほど女神さまだった。


 背中に七色の光で出来た水鳥のような羽をもつ、二十歳前後の妙齢の美女。プラチナブロンドのストレートの長髪を足元まで伸ばし、翡翠の瞳を細め、縊れた腰に両手を当てている。どう見ても自分より年上なのだが、怒っている様子は、周りにプンプンと擬音が見えるような可愛らしさがあった。ただし、威厳は無い。



――絵画で出てくる神々が身に着けている純白の衣装を身に纏っているし、立派な胸――じゃないッ、光の翼をもってるから、どう見てもテンプレ女神様だ。



 天上の滋味溢れる果実のような、二つの頂から視線を逸らし、時を経る毎に七つの色に移り変わる淡い光で出来た一対の翼を眺める。いかんいかん、あれは目のトクだ。もう少し眺めていたいがこれ以上は危険だ。危うく好感度激落のトラップに引っかかるところだった。


「申し訳ありません、女神様。いきなりの状況に驚き、しばし呆然としてました。」


 これ以上、女神さまを怒らせないようにしよう。いや、嫌われたくないない。


『え? あッ、うん。……分かれば良いのです。ですが、よくわたしが女神と気づきましたね』


 何故かキョドる女神様……。て、本物の女神様だよ。でもまさか……、イヤイヤそんなことはないだろう。女神さまがアレなはずがない。


 ここは気付かないふりをして、真面目に――そうだ! 下手に出よう。神々しい女神さまを称えながら、ここはテンプレ通り、穏便にサクッとチートを貰って冒険(tabi)に出よう。二度目だし、この先の流れもだいたい、分かっているし。なら、早速――


「『ようよう姉ちゃんよぅ。イイ身体してんじゃねえか。これからオレとイイコトしようぜ~』」


『――へっ?』


「ぉえ!?」


 イイ笑顔でフリーズしている女神様。て、いうか ボクハ イッタイ ナニヲ 言ッタンダ……。背中を流れる滝のような冷汗。断じて僕はこんな事を言うつもりはなかった。


『五老巧さん……。今、何とおっしゃいました?』


 フリーズしたままの笑顔で首を傾げる女神様……。白一色の背景が蜃気楼のように歪んで見えるのは陽射しで地面が熱くなったからに違いない。そうだ、蜃気楼だ。自然現象だ。間違いない。――そうであってくれ――。


「ち、違うんだ! そんな失礼な事、僕が女神様に言うわけないじゃないですか! 僕は――」


 嫌な汗をダラダラ流しながら(なんか、目からも汗が)、兎に角必死で女神様に釈明する。女神様に口を挿ませないよう、マシンガントークで説明する(あれ、言葉が重複した?)。言い訳がましいが、言葉が尽きた時が、僕の命の尽きる時だと、なぜかこの時は確信に近い思いがあった。


『えっ? あッ――!』


 なにを自白したのか憶えてないが、女神様の様子が途中から変わった。いつの間にか、ニッコリ顔の激怒から戸惑い申し訳なさそうな顔になっている。何故かはわからないが、女神様の態度からは、僕のあの言葉が本心でない事を理解してくれた様子だった。ただ、何で申し訳なさそうにしてるんだろう?


「……あの~、女神様?」


『――な、何でもありません! それよりも、五老巧さん。あなたは一度死にました。――覚えていますか?」


 小学生レベルの話題逸らしで、澄ました態度を取る女神様。――先ほど『えっ?』とか『あッ!』とか言ってませんでしたか? 女神様の怪、可愛い様子から何かヤラカしたんだろうな~。



――ここは、素直に返答こたえておこう。無暗に突いて逆ギレされたくないし。今度は慎重に、二度目の異世界転移でも油断はいけない。



「……はい、憶えてます。僕は、あの世界で魔獣に殺されたんですね?」


 僕の答えを聞いて安心したように頷く女神様。そんなに胡麻化したい事なのか……。


『記憶は残っているようですね。では、改めて説明します。ここはあなたを召喚するためにわたしが造り出した一時的な世界です。そして、あなたを呼び出した理由は女神わたしが管理する世界で、あることをやって貰いたいのです。』


「…………」


『勿論、この依頼を受けて頂く対価として、神々の贈り物(ギフト)を授け、さらに何でも一つだけ願いを叶えてあげましょう。――五老巧さん、この依頼を引き受けて頂けますか?』


 神々しい女神様の微笑みに見惚れてしまう。『願いを叶えて』のところで女神様の胸元に視線がロックオンしてしまった。なんか服の生地薄くないか。透けてはいないが身体の線がハッキリ出ていて目の毒だ……。


『…………』


 女神様が見ている……。女神の胸元をジッと見ている僕……。これじゃ不埒者だ。いやいや、そうじゃなくて。依頼を受けるか断るか、判断するには情報が少なすぎる。



――報酬は魅力的だけど……。



 微笑む女神様の美貌をそっと窺う。そうだ、異世界モノでやってみたかった事その壱……『女神様のお名前を自分から聞くこと』。


 自分が読んだ中で、異世界転生や転移の時、神様にあった主人公がその名を教えて貰う場面はなかった。あっても、主人公が聞く前に神様が自己紹介で名乗るパターンがあるくらいだ。(もしかしたら、自分が知らないだけかもしれないが……)


「女神様。」


『はい。』


「女神様のお名前を教えてくれませんか?」


『え? わたしの名前ですか? ……言ってませんでした。え~と、わたしの名前は少し長いのですが――』


 女神様の表情がコロコロ変わる。その様子はとても和むのだが、女神様、なぜ名前を聞いただけで挙動不審になるんですか? そんな益体のないことを考えていたその時、何十枚もの窓ガラスを叩き割った様な、激しい破砕音が鳴り響いた。歪む白い世界。


 そして、涼やかな罵声が鳴り響く。


「――この駄女神ッ! 貴女はもう黙っていて頂戴!!」



開き直っていけるところまで頑張ってみます。

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