第9話 なんじゃこりゃー!!!
桜「――チッ。」
椿姫「どーしたのー、銀ちゃんー?」
桜「作者のヤツが、前書きから逃げ出したのよ」
椿姫「あー、『何も思い浮かばないー!』とかー言ってたねー」
桜「……椿姫、あんた声真似、上手いわね。それはさて置き、その事よ。あのバカ、どうしてくれよう……。」
椿姫「うーん。くっころせばー、いいと思うよー。」
桜「椿姫、それは違うと思う……。」
第9話 なんじゃこりゃー!!!
「【意訳】ギフトの事なのだけれど、巧クンの成長に同期して進化する、次世代型のギフトのようね。」
日差しも高くなり、部屋の中ほどまでに後退した頃、やっと、本題に戻った。
先ほど椿姫さんが開けた窓から、草木の匂いが、そよ風に誘われて、部屋の中を漂っている。薄い瀟洒な模様のレースに覆われた窓の向こうには、大きな木の幹の端が半分見て取れた。
「へー、すごいねー、ゴローちゃんー。」
いや椿姫さん。確かに凄そうですが、何がどう凄いのか分からないんですが……。詳しい説明をプリーズ、桜先生……。
「ええ、すごい事よ巧クン。」
『………………………………え?』
あの、桜さん。説明になってませんよね? 深刻そうな顔で頷いてないで、どうやったら使えるのか、どんな効果があるのか、そう言う事を教えてほしいんですが。
「それは分からないわよ。」
いや、キョトンとした顔で言われても困るんですが。確か昨日夜、桜さんは僕の【ギフト】がどういったモノか分かったと言ってませんでしたっけ?
「あー、分かったー、銀ちゃんはー、分からない事がー、分かったんだー」
『…………。』
桜さん……、まさか、そんな冗談を言うために、ココまで溜を入れたんですか? ソレ、面白いですか?
「ま、待って頂戴。椿姫が言ってる事は邪推よ。あたしはそんな事、一言も言ってないわ」
僕のドンヨリとした【テレパス】に、手を振り焦った様子で釈明する桜さん。短い間だけど、桜さんの為人を見て、弁解の余地は無いように思うんだけど。
「うんうん。銀ちゃんー、だからねー。」
腕を組み眉間に皺を寄せながら頷く椿姫さん。彼女にこんなこと言われるって、桜さん、あんたって人は……。
「椿姫、後で覚えてなさい。」
プイっと顔をそむける椿姫さんに、咬みつく桜さん。また、話が脱線してるし……。
「兎に角! あたしが分かったと言った事は、巧クンの【ギフト】が、成長する事よ。それは、この世界に存在するどの【ギフト】にもない、特異なモノなのよ。」
「そーだねー。成長はー、【スキル】だけの特性ーだったよねー?」
「そうよ。【ギフト】は不変であり、不滅である。レベルがどれほど上がっても、【ギフト】自体に変化はないのよ。」
なんてこった。特異な【ギフト】である事しか分からなかったのか。すごいすごいって言ってたけど『何だか分からないが、スゴイ自信だ』のスゴイの方だったとは。――ガックン。
「だから、【ギフト】≪意訳≫については何も分かってない状況ね。」
今、僕たちの周りには、どんよりお葬式ムードが漂う。危機的状況の桜さんが当てにしてた、僕の【ギフト】が能力不明だとは、お先真っ暗だよね。どうしよう?
「まあ、こんな場合も想定済みなのだけれど。」
桜さん、僕が役立たずの場合も想定してたなら、最初から僕を巻き込まない方法を選んで欲しかった。
「何を言ってるのかしら、巧クン。あたしは最初から【ギフト】ではなく、あなたの力を借りに来たのだけれど。」
ふふっと悪戯っぽく微笑む桜さん。『あの駄女神が与えた【ギフト】なんて当てにする訳ないでしょ?』とぼそりと呟くのは止めましょう。折角の笑顔が台無しです。椿姫さんも『銀ちゃんー、いー笑顔ー』とか言ってないで、止めて下さい。女神様が見てたら泣きますよ。
「と、いう訳で、巧クンはレベルを上げて力をつけて貰うわ。」
「ぱわーれべりんぐー、だねー。」
いやいや、椿姫さん。握った拳を突き上げてないで、桜さんを止めて下さいよ。赤ちゃんの僕にナニさせるつもりですか? ―――って、レベル? この世界にレベルが存在してたっけ?
「ああ、その事? 勿論、ステータス上には【スキル】のレベルしか存在しないわよ。でも、この世界で流通しているステータスカードならレベルが表示されるのよ。」
僕の疑問にツラツラと答える桜さん。ステータスカード? また、新たなワクテカワードが一つ追加された。
桜さん曰く、ステータスカードとは、国や大規模組織が発行している、所謂身分証のようなモノらしい。ステータスカードには、名前・年齢・職種名・種族名・ステータス各種・称号・賞罰が記載されている。そして、総合レベルも……。
総合レベルは、ステータス各種はもとより、種族特性・職種特性を含め、更に【ギフト】や【スキル】の熟練度を総合的に判断して、その者の強さの絶対値として表示される。例えば、人族の勇者が総合レベル130と、ドラゴン総合レベル100だと、勇者がひとりで圧勝出来る事になる。人族の村人が総合レベル10と、ゴブリン総合レベル11だと、ほぼ、ゴブリンが勝つ。但し、環境的要因は加味されて無いのと、一対一の状況はほぼ、有り得ない事から、レベル差があれば絶対に勝てるという事ではないが、凡その目安にはなるらしい。
神代時代の超技術が使われているらしく、ステータスカードの内容は、名前以外任意に変更できない上に、偽造も不可能だそうだ。それでも、名前だけでも変更出来るなら、偽名を使って他人に成りすます事も出来そうだから、犯罪に利用されそうだ。そう桜さんに聞いてみたら、『ええ、出来るわね。でも、賞罰欄に記載されるから、罪そのものからは逃れられないわよ?』と言われた。ああ、成程納得。
犯罪についても、【応呼の威志】と呼ばれるマジックアイテムで犯罪歴を調べられるそうだ。別名断罪の石とも呼ばれている。これまた、ステータスカードと同様、神代の超技術が使われているようで、【ギフト】や【スキル】などの能力でも胡麻化せないらしい。実にテンプレらしい仕様だ。
断罪の石、基、【応呼の威志】は街になら配備されているうえ、町や村にも、【応呼の威志】を携帯した巡視隊が見回りをしているため、脛に傷を持つ身には住みにくい世の中らしい。
ただ、色々と抜け道もあるらしく、そういった闇組織も存在する様だ。特に今回、桜さんの敵は異世界人もかかわっている裏組織。一筋縄ではいかないだろう。慎重に行動しなければ……。
「――と、いう訳で、巧クンには偽名で冒険者になって頂戴。」
『…………。』
「やっぱりー、異世界のーテンプレはー、冒険者だよねー。めざせー、最強ー?」
椿姫さんの最後の言葉が疑問形なのは、まあいい。それより、桜さん。僕、0歳児ですよね? いくら偽名だからって、冒険者登録出来ると思いますか? それ以前に赤ちゃんに戦ってレベルアップさせようとする非情で非常識な人がどこにいるんですか。
「…………?」
「ここにーいたねー♪」
椿姫さん『じゃん♪』じゃないですから。それに桜さん、首を傾げながら、自分に指を指さないで下さい。そこは否定するところでしょう?
戦う術を持たない僕には無理ですよ。魔法使ったら死んじゃうんですよ?
「ゴローちゃんならー、大丈夫だよー。」
だから、根拠をプリーズ。
「勿論、考えてあるわよ? 巧クンには、最強の装備を着てもらうから、身の安全は保証するわよ」
「じゃじゃじゃじゃーん♪」
椿姫さんの楽し気な声とともに、謎袋から取り出されたモノを見て首を傾げた。なに? その赤い布地? タオル?
「これは、かの有名な伝説の皇帝が愛用していた≪赤帝の産衣≫。日夜、夜討ち朝駆けの暗殺者からその身を守り通した『試練の8ヶ月』の伝説を残す一級品よ!」
どこで手に入れたんですかそんなモノ……。桜さん、口調が変わってますよ? まるで、インチキ小道具を出してた時と雰囲気が似ているんですが。
「フッ、悲しいわね。疑う事でしか、人とのコミュニケーションが出来ないなんて……。」
何ですかその陰りのある弱々しい微笑みは? 芝居がかり過ぎてどうでもいいんですが……。
「ゴローちゃん、反抗期ー?」
椿姫さん、0歳児に反抗期はないでしょう。桜さんも『巧クンがグレた!』とか言わない。家の者に聞かれたらどうするんですか人聞きが悪い。
「その時は、巧クンに悪いモノが取り憑いた事にして誤魔化すから。」
最初から騙す事前提ですか、桜さん……。段々メッキが剥がれてきてますよ。
「はーい。じゃあー、お着替えー、しようねー。」
疲れた僕の心をそのままに、着せ替えを始める椿姫さん。そうか……、着替えの時の僕の抵抗を無力化するためにこんな小芝居を打ったのか……。そう、自分に無理やり言い聞かせて、椿姫さんの好きにさせた。抵抗する気も失せてます。
「じゃじゃーん! 出来ましたー」
ニコニコと楽し気に僕を着替えさせていた椿姫さんが、僕を持ち上げ姿見の鏡の前に連れて行った。こんな所に鏡が在ったんだね。丁度僕のいたところからは死角になっていて見えてなかったよ。
――――って! なんじゃこりゃー!!!
そこには、僕を抱えてニコニコ満点笑顔の椿姫さんと――、どこぞの世紀末に出てくるようなパンクな姿で愕然とした(見た目は無表情)僕が映っていた。
桜「読んでくれて、ありがとう。感謝するわ」
椿姫「ありがとねー♪」
桜「業務連絡よ。次回の投稿予定は10月12日12時よ。必ず読みなさい。」
椿姫「お姉ーさんたちからのーお願いー。」




