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平凡勇者の世直し漫遊記  作者: ワタリガニのように
第1章 平凡な〇歳児の冒険者
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第7話 ジ・エンド・オブ・カオス

なんか、書くのって難しい……。


頭の中で描いていたものとは違い過ぎている……。

第7話 ジ・エンド・オブ・カオス





 はッ、此処は……。なんて事も無く……。多少、茫然自失していた。なんか、走馬燈の如く色んなモノが見えたような気がするけど……。まるで洋画の劇場版予告編みたいなのが……。


うん。気のせいだ。もう、寝よう。お休み……。


『巧クン。現実逃避は、良くないわよ。』


 やはり、有耶無耶にはなりませんか……。どさくさに紛れて、夢の世界へ旅立とうとしたけど、桜さんの涼やかな声【テレパス】に引き戻される。


『銀ちゃーん。聞こえないフリはー、いいのー?』


『…………。あたしは過去を、振り返らない主義なの。』


 椿姫さんのクリティカルな口撃(・・)に、桜さんはどっかで聞いた事のあるセリフで、言い逃れようとする。桜さん、それ、ダメな時の使用例ですよ……。


『それってー、過去の失敗からー学ばないー、女神さまみたいだねー。』


『――ふざけないで頂戴。なんであたしが、あの駄女神と同じなの? 冗談じゃないわ!』


 椿姫さんの追撃は、痛恨の一撃並みに効いたらしい。珍しく声を荒げる桜さん。……そこまで桜さんが嫌がっているのを、天界にいるであろう女神様が知ったら、泣くんじゃないだろうか?


『……おやすみなさい。』


 うん、桜さんたちの会話も長引きそうだし、続きは明日にしてもらおう。


『――巧クン。話は終わってないわよ?』


『ゴローちゃん、待ってー、わたしたちをー、捨てないでー』


 平坦な口調で、人聞きの悪い事を言う椿姫さん。


『椿姫。そろそろ巧クンも限界のようだから、揶揄うのも此処までにしましょう。』


 やっぱり、僕を揶揄っていたのか……。今更ながらに、この人たちと付き合うのは、骨が折れそうだと思い知らされた。僕のハートはあと半分ですよ。早くハートの器を見つけないと……。いや、その前に赤いクスリか。


『――何故16年後でなく、今なのか。その理由は……。」


 一つ溜をつくる桜さん。いや、今更勿体ぶらないで下さい。まさか、理由が”感”とか”なんとなく”だったりして……。


『――あたしが、狙われているのよ。……とある組織にね。』


『…………。』


『…………。』


『……え?』


 あれ? 狙われているのって僕じゃないの? じゃなくて、作り話じゃなかったの? あの話。


『そーなんだよねー。銀ちゃんー、しくじっちゃってー。』


 ……成程、桜さんのミスの後始末を、僕に手伝わせようとしてるのか。――って、いう事は、ここへ来るかもしれない敵の目的は、僕じゃなくて桜さんなんじゃあ……。


『――完全に僕、巻き込まれてませんか?』


『……結果的には、そう見えるかも知れないわね。』


 いやいや、結果じゃなく、間違いなく巻き込まれているんですが。この人は、なに他人事のような態度でいるんだろう? 真犯人はあなたですよね?


『うんうん。そーだねー。ゴローちゃんはー、関係無いよねー』


『……そうね。今は(・・)関係ないわね。』


 椿姫さんも僕の言葉を肯定してるし、そこは桜さんも渋々認めたようだ。だけど、桜さん。なんか、嫌な言い回しなんですけど……。


『ただし、断れば、16年後の、あたしたちのサポートは無いかもしれないわよ?』


『そーだねー。わたしたちがー、負けたらー、そーなるのかなー?』


『えーと、教会で守って貰えないんですか?』


 桜さんの言葉に違和感を覚えた。普通、聖女様て、教会にとって、大切な存在じゃないのか? 国々に与える影響を考えれば、戦力という観点からも、それなりに守られているだろうし……。


『ええ。相手が国であろうとも、教会が守ってくれるわね。普通なら(・・・・)。』


 僕の疑問に、新たな謎かけで答える桜さん。普通じゃない相手って……。


『……異世界人。』


『……駄女神が与えた【ギフト】は、皆強力なモノばかり……。流石のあたしでも、退けるのは難しいわね』


 ため息を付きつつ寝返りをうつ桜さん。『ましてや、教会では……。』と言葉が途切れる。


『それにー、銀ちゃんはー、力を封印してるしー』


 なんか訳アリという事ですか……。つまり――


 ・教会の力は通常戦力のみ。国々に働きかけても(以下同文)。


 ・異世界人は強力な武器ギフトがある。


 ・桜さんの力も強力だが封印されて(して?)いる。


 ・僕のギフトで拮抗出来ると思われる。


 椿姫さんの事は含めてないところを見ると、万全の力を発揮出来るのだろう。それでも、二人いても厳しい状況という事は、相手の異世界人は二人、もしくは複数人いるという事か。いや、力の相性が悪いのかも知れない。だけど、どのみち――


『僕の【ギフト】次第という事か……。』


『だねー。』


『巧クン、あなたとあたしたちは一蓮托生よ』


『一蓮托生ってー、托鉢にー、和尚ーを混ぜたようなー言葉だねー。もしかしてー、仏法用語ー?』


 いきなりシリアスな流れをブッタ切る椿姫さん。流石ですよ……。緊張の糸がプツリと切れた。


『……そんな事、知らないわよ。』


 桜さんも深く深呼吸する。うん? もしかして椿姫さん、この緊迫した空気を壊したかったのかな?


 確かに、大変な事ではあるけど、深刻になるべきではないのかも知れない。巻き込まれてはしまったけど、僕も桜さんたちの力は必要だし……。ギブアンドテイクならありか?


『――分かりました。僕は、桜さんたちに迫る危機を取り除く、助力をすればいいんですね?』


『そうして貰えると、助かるわ』


 ギブアンドテイク……。前の異世界でもあったけど、今ならわかる。彼女テュレと交わした契約・・は一方通行だったんだ。僕がただ利用しただけ。ごめん、テュレ、契約やくそくを守れなくて……。


 それと、……これから、よろしくお願いします、桜さん。









 

 で、終われば締まりが良かったんだけど、そうは問屋が卸さなかった。











『巧クン、早速だけど、あなたの謎【ギフト】を、教えて頂戴。』


『そーだねー。何だろねー。わくわくー。』


 期待に満ち満ちた【テレパス】が、心にイタイ……。【ギフト】もそうだけど、ステータスの方も、桜さんの助力になりそうもない。


 早く朝にならないかなー。現実逃避したいけど、今更無意味だしなー。いずれは、訪れる状況なんだから、引き伸ばす意味が無いしね……。正直に話すか……。


『……僕の【ギフト】は、【意訳】でした。』


『…………。』


『…………。』


 ああ、沈黙がツライ……。いくら、自分のせいじゃ無いとはいえ、申し訳なく思う。


『…………。』


『…………。』


『……あの、桜さん?』


 なんか、えらく深刻な空気をつくっている桜さんたち……。やっぱり僕、役立たず?


『――椿姫、どう?』


『うーん。多分だけどー、スゴイー【ギフト】だとー思うー。』


 へっ? でも、意訳ですよ? 椿姫さん、ちゃんとググってますか?


『巧クン、【ギフト】がただの意訳な訳がないわ。そこには、偉大なる意志が隠されているわ。』


『そーだねー。まずはー、力の方向性をー、知るところからーだねー。』


 そうなのか? まあ、確かに【ギフト】がただ意訳するだけな訳無いか……。


 ほっとしたところで、隣にいた桜さんの気配が僕に覆いかぶさるように移動する。


『巧クン、視る(・・)わよ。』


 更に桜さんの気配が近づく。続いてはだける産衣……。――って!


『――ギャー! ナニするんですか桜さん!』


――――ゴクッ……。


『――ギャー!! なんか聞こえたー!!』


『……なんでもないわ。あたしはただ、【ギフト】を調べるだけよ。静かにして頂戴。』


『なんだかー、あれだねー、夜にー『送っていくだけだから』とかー、いう、男みたいー』


『椿姫は黙って頂戴。今いいところなんだから。』


 ギャー、なんか肌の上を這いまわってるー!! 桜さん!! 目的変わってませんかー? 椿姫さん、ヘルプ、ヘルプミー!!


『大丈夫だよー。最初はーちょっとー、イタイだけー。』


 いやいや、何で【ギフト】を調べるだけなのに、痛みを感じないといけないんですか? なんか、暴走してませんか? ――って、イタっ。なんか、チクッとした。


『――成程、……そういう事なのね。』


 えっ、今ので【意訳】の使い方が分かったんですか? いつもの悪ノリかと思っちゃいましたよ。疑ってすみません、桜さん。


『でー、銀ちゃんー。分かったのー?』


『――いえ、全然。』


『…………。』


『――全然ー?』


『――全然。』


 桜さん……。なに、お約束を……やって・ん・デス・かっーーーーーー!!


 余りの怒りに、目の前が真っ白になる。流石に仏の顔も三度までだ。お腹の辺りが熱く感じる。これが僕のいかりか……。僕は怒ったぞー!!!


『やったー。成功だねー、銀ちゃんー。』


『そうね、うまく、解放できたみたいね。』


 何が、大成功だー!! ドッキリじゃないだろがーっ! ふざけんな!


『……あれ? キレたのかな?』


『ちょっと、やり過ぎたみたいね。』


 そう、桜に椿姫、おまえたちはやり過ぎた……。封印されたもう一人のオレを……呼び覚ました。


『ゴロー君って、中二病だったんだね……。ボク、知らなかったよ。』


『――椿姫。あんた、口調、戻ってるわよ?』


『――あっ?』


 何やらもめているようだが、くっくっくっ。余裕じゃないか、覚醒したネオ・ダークスター。至高の闇と称えられ、恐れられていたオレを前に、いい度胸だ。冥途の土産に、オレの力の片りんを見せてやろう……。


『死ぬがいい、『ジ・エンド・オブ・カオス』ッ!!』


「巧クン、内容がイタイから、眠って(・・・)頂戴。」


 涼やかな声とともに、オレの意識は途絶えた。





お読みいただき、ありがとうございます。


次回の投稿は10/8 12時の予定です。

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