プロローグのプロローグ?
初めまして。自身の初の作品になります。
見苦しい点は多々あるとは思いますが、暇つぶしのネタになればと思います。
――僕はなにを間違えたんだろうか?
視界に入るのは、学校の体育館ほどの広さのある煉瓦造りの大通路。等間隔に備え付けられた薄暗い松明が闇の奥に無限に連なって地平に誘っている。そして僕を囲む異形の化物……。
ここは敵の首領の居城と地下迷宮を繋ぐ道だ。やっと、ここまで来れた。あいつらは、この先にいる。――もうすぐで追いつける。はずだった……。
目の前には、立っている僕と同じ目線にいる犬のような魔獣の群れ。首元を撫でる不快な微風はアイツラが吐き出す息なのか。
「ガウゥ!!」
「――ッ!」
考えるよりも先に地面に身体を投げ出す。間髪入れず肩に衝撃が走る。グルグル回る視界の端に、犬型の魔獣が振り向くのが見えた。
一瞬、衝撃を受けた肩を見る。ケガは――無い。鎧に破損はないはずだ。この鎧は勇者の従士として王様からもらった魔術付与された物。更に賢者によって防御力上昇の魔法がかけられている。魔獣の牙や爪程度では鎧を貫く事はない。だが――、
「うッ……」
打撃によるダメージには無力だった。ふらつき無様に転がりながら壁にぶつかる。足に力が入らない。
何とか立ち上がろうとしたが身体が言うことをきかない。
その様子が分かったのだろう。ふらつく視界に魔獣たちがゆっくりと近づいてくるのが見えた。お前たちが、僕の死か……。
――僕はなにをしたかったんだろう?
追い詰められた僕は、自問しながらあの日の事を思い起こしていた……。
それはある日突然起きた。僕と幼馴染二人は異世界に召喚されたんだ。ラノベやアニメなんかでよくあるフィクションが現実にあるとは……。自分たちの身に降りかかるとは思ってもみなかった……。
古代ローマ神殿のような広間に、純白を基準とした金糸銀糸で繊細に装飾されたローブをまとった者たち。――物語のテンプレ通りの状況に幾何の不安を持ちながらも、僕は非日常の冒険への期待に心を躍らせてた。
だけど、そんな期待はすぐに打ち砕かれてしまった。
一緒に転移した僕の幼馴染の篤士は勇者。もう一人の幼馴染の恵美は勇者を支える賢者。
そして僕は、――巻き込まれし者だった。
クエストは王道の魔王退治。チートのない僕は役立たずのまま、幼馴染たちのクエスト達成をお城の一室で他人事のように見守ることしか出来なかった……。
幼馴染の活躍は国中の関心ごとだった。城内で聞こえてくる会話に悪意はなかったのだろう。でも無力な僕には、そんな異世界生活は針の筵だった。
『――力が欲しいですか?』
日々心が荒んでいく僕に手を差し伸べてくれたのは、神殿の巫女テュレサーヴだった。
『わたくしは聖女になりたい。そのためには貴方の立場が必要なのです……』
彼女は名誉を、僕は力を……。打算による婚約。二人の能力を共有する契約魔法によって、異世界人である僕の潜在力を彼女の能力で使用できるようになった。
力を得た僕と彼女は、勇者たちに合流するため難関辛苦の末に大通路の入口に到達した。
――そして僕は彼女の願いを裏切た。
たった一度だけ使える奇跡の魔力を僕が使ってしまった。
煉瓦の通路に響くのは魔獣の足音のみ……。彼女はここにいない。
僕に裏切られた彼女は、僕を見捨てて勇者を追っていった。
そして、今の状況だ……。
婚約は破棄され、元の無力な自分に戻ってしまった。逃げ道はなく、助けが来ることもないだろう。終わりが近づいてくる。
――僕は彼女に何を求めていたのだろう?
唐突に思い浮かんだ自問に、心をかき乱される。
「…………」
歯を喰いしばり、壁に肩を預け身を起こす。ただ上半身を起こすだけですべての力を使い果たすように感じられた。
それが今、僕に出来るすべてだった。見上げると目の前で魔獣が見下している。魔獣の感情の浮かばない目に、恐怖に歪んだ僕の姿が見えたような気がした。
――僕は……
「ゴメン、テュレ……僕はキミを――」
そして闇が僕を包んだ。
諸氏からのご指摘や感想はほぼ無いとは思いますが、
キビシイご指導に心を折られかねないのでお手柔らかにお願いします。してくれたらいいなぁ……。