ある魔物と人間の世界の話
初投稿となります。
いろいろ拙いところもあると思いますが
よろしくお願いします。
日もまた目の前の魔物を切り捨てる。
ただそれだけの毎日。
その毎日があの日からずっと続いている
そう、あの時村が襲われた時から……
俺たち人間は魔物たちと争っている。
俺が14歳の時の夜、俺の村は襲われた。
いままでに襲われたことない村だった。
「早く行きなさい!」
「お前たちだけでも生き残るんだ!」
そういい母と父は俺と妹を逃がした。
そこからはあまり覚えていない。気が付いていたら一番近くの村にいた。
母と父、妹はどうなったかわから。
それから魔物を恨むようになった。
とにかく自分を鍛えた。
あの魔物たちに復讐するために。
それから年月は過ぎ俺は21歳となった。
この国では魔法が使える人ほど重宝され、
前線に出ることは少なくなる。
あいにく俺は魔法をほとんど使えなかったので、
いつも前線にいた。
その中でも俺は一番長く生き残り戦ってきた。
周りの奴らがいうことには
「あいつは魔物に対する執念がおかしい」
や
「きっとあいつは人間じゃない。悪魔の生まれ変わりだ」
とか言われていたようだがどうでもよかった。
前線に出ることができ魔物を葬ることさえできれば。
そんなある日のこと、
とある魔物の村を襲っていた時だった。
家に踏み込んで残りの魔物を掃除しようと入った時だ。
そこには獣人族だろうか?
頭には犬のような耳が生えており後ろには尻尾があった。
その獣人は剣を構え、脅えた様子でこちらを睨んでいる。
俺は剣をはじきそのまま転ばせ、剣を振り下ろそうとした。
その時俺の脚に何かがしがみ付いていた。
「やめて! お母さんを殺さないで!」
「母さんがいなくなるなんてそんな……」
子供だろうか?
二人の子供が俺にしがみついている。
「あなた達は早く逃げて! あなた達だけでも生きて」
俺の手は完全に止まってしまっていた。
いくら獣人族とはいえ子供だ。
振り払うのは簡単のはずだ。
それなのに振り払うことができなかった。
目の前の母親の頭がとんだ。
「おいおい、どうしたぁ。こんな奴らに」
俺と同じ前線で戦っている奴だ。
そいつが母親の首を切り飛ばした。
「おいおい、もうみんな終わってるぞ。お前も早くこいよ」
そういいそいつは戻っていく。
その場には俺と子供たちだけが残された。
俺はこいつらをどうしよう。
もう殺す気がない。
殺せる気もしない。
「お前らはこれからどうしたい」
子供たちは泣きながらこっちを見た。
「このまま俺が見逃したとしてもお前らは殺されてしまうだろう。
ここにはすぐに人間がくる。どうだ、俺のところにこないか?
助けてやる」
子供たちは脅えた様子で見ている。
目の前で母親が殺されたのだ。仕方がない。
「別にひどいことをしようというわけではない
ただお前らがあまりにも俺に似ているからさ」
憎むべき魔物。なのにどうして助けようと思ったのか。
いや、そんなのはわかりきっている。
俺と同じだからだ。
「お願いします、助けてください」
子供たちもそれしか方法がないと悟ったのか
そう言ってくれた。
しかしどうしようか。
魔物の子供を持って帰るところを見られたら
もう人間の中では生きていけなくなるだろう。
俺は自分の馬車を持っている。
そこまでいけば何とかなるだろう。
結局そこの家にあった樽に子供たちを入れて馬車まで運ぶことにした。
家にあった物は自由にしていい。恐らくばれないだろう。
「すまないな、狭いだろうが我慢してくれ」
子供たちを樽に入れ運ぶ。
途中、
「お、あいつが何か持って帰るなんて珍しいな」
「どうせ武器のためのお金になるものとかじゃね?」
と言われた程度だった。
馬車の中でも子供たちは泣いていたがしばらくすると
泣き止んで、
「どうして僕たちを助けてくれたんですか?」
と聞いてくる。
「あまりにもお前らが俺と似ていたからな」
子供たちは意味が分からないのか不思議そうな顔をしている。
まあ分からなくても仕方がないだろう。
それから会話はなかった。
しばらくして俺の住んでいる家についた。
俺は町から離れたところに住んでいる。
まあ家といっても小屋のようなものだ。
二入を家に入れる。
「俺は町で飯を買ってくるからゆっくりしてな」
そういって俺は町に行く。
いままで俺が殺した魔物の中にも家族はいたのだろう。
そんなことは当たり前だ。
俺は自分と同じような子供をつくっていたのだろうか。
馬車に乗り、町に着くまでの時間俺は考えていた。
「おーい、飯だぞー」
泣きつかれたのだろうか?
子供たちは寝ていた。
二人をベットまで運ぶ。
「こうやって見ると普通の人間だよな……」
仲良く二人で寝ている姿を見るとそのようにしか見えない。
もちろん魔物にも骨だけの奴や竜などもいる。
魔物は動物の違い知力が高い。
こいつらのように人間と同じ言葉を話せる奴もいる。
ならば人間との違いは見た目だけではないのだろうか。
争う理由は見た目だけなのか?
もともと大昔、魔物が攻めてきたとされている。
その理由は分かっていない。
それから人間は魔物たちから平和を得るために
魔物と戦っている。
それは本当だろうか?
魔物たちは今まで一部の村や町にしか攻めてきたことない。
そのおかげで襲われる村や町はあらかじめ守りが
固まっており被害が出ることも少ない。
俺たちの村はいままでに襲われたことのない村だからこそ
被害が出たのだ。
俺たちの間では、地下に魔物の力を弱めるためのなにかがあるとか
いわれている。だから襲われる場所が決まっているといわれている。
「こいつらにも聞いてみようかな」
二人を見て、そう呟いた。
朝起き、いつも通りのトレーニングをする。
これはあの時から欠かさずに毎日やっていた。
そして朝ごはんを作り始める。
作っていると子供が小屋から出て来る。
「おはようございます……」
「ああ、おはよう。もうすぐできるからな」
そういい小屋の中のテーブルにご飯をならべる。
「じゃあ食べるか」
子供たちもお祈りだろうか? それを終えてから食べ始める。
昨日何も食べずに寝ていたせいかおなかがすいているのだろう。
すごい勢いで食べている。
「おいおい、落ち着いてたべろよ」
おれは苦笑しながらいう。
「は、はいすいません」
食事が終わってから子供たちに聞く。
「お前たちこれからどうしたい?
俺はお前たちを魔物側に帰そうと思っている。
行くあてとかあるか?」
こいつらもこのままここにいたくないだろう。
そして俺としてもあまり長い間いてほしくない、
もし誰かに見られたら俺は裏切り者とされるに違いない。
そんなことにはなりたくない。
「私はもう……帰るところがありません。
私が他に知っていた村も滅ぼされてしまいました。
行くあても……」
そういって二人はうつむく。
姉だろう。驚いたことにかなりしっかりしている。
二人とも見た感じ13、14歳ぐらいの姉弟にしか見えない。
しかし行くあてはないのか……
どうしたものか。
俺が連れてきたんだ。責任は持ちたい。
次の戦いまで一週間だ。
それまでに答えを出しておかなければ……
恐らく今の俺は魔物を殺せないだろう。
家族を殺されあれだけ憎んだ魔物。
なのにいまでは全く殺せる気がしない。
俺の決意はこんなに薄いものだったのだろうか。
「俺は一週間後に戦いがある、それまでには決めてしまいたい。
それまでならここにいてもいいぞ。」
「あ、ありがとうございます!」
姉はそう言った。弟はうつむいたままだ。
「なるべく小屋の中で過ごすようにしてもらいたい。万が一ほかの人間に
見つかると面倒だしな。欲しいものがあったら言ってくれ。どうにかする」
ここには他の人が来ることは滅多にないから大丈夫だとは思う。
一週間ならばれることはないだろう。
「どうしてここまでしてくれるんですか?」
「前にも言ったろ、お前らは俺に似ているんだよ
逆に聞きたい、お前らは俺を恨んでないのか?
母親を殺したんだぞ」
そう、俺は殺した。
直接手をかけたのが俺ではないとしても。
「だけど、あなたは私たちを助けてくれました。
あなたじゃなかったら私たちは殺されていたでしょう。
私たちがいま生きているのはあなたのおかげです」
確かにオレ以外の奴だったら今生きてはいないだろう。
「俺はお前らをずっと殺し続けてきた。その中にお前らの
父親もいたかもしれない。それでもか?」
「それでもです。あなたが助けてくれたことには変わりません」
そう言い敬うような眼でこっちを見てくる。
正直恥ずかしい。俺は今までこのように感謝されたことがないのだ。
「と、とにかく一週間後までにはここを出て行ってもらうからな」
俺が照れながら言った。
「はい、短い間ですがお世話になります」
彼女はそういいながら微笑んだ。
―――
「とりあえずいろいろ聞きたいことがある
そしてこれからのことについてだ」
そう、これからのことについて話しておかなければならない。
「まず、名前を聞いていいか? 俺はフレイだ」
「私はライア・トールです」
「俺はロイ・トールだ。よろしくな兄ちゃん」
はだいぶ立ち直ったのか元気になっている。
いいことだ。
「さてライア、ロイ。お前らには一週間以内にどうするかを決めてもらう
俺の方でもいろいろ調べるつもりだ。」
「そうですね……私の方でもいろいろと考えてみたいと思います」
「俺はこの後お前らの服と食糧を買ってこようと思う
他に必要なものとかはあるか?」
「必要なものはありませんが……服なんて悪いですよ!」
「いや、それぐらい遠慮するな。その服だけでは不便だろ」
ライアとロイが着ている服はかなり焼けたり汚れたりしている。
体もところどころ汚れている。
こいつら昨日ベットで寝たよなぁ……
かなり汚れていることだろう。
「では私たちは何をしていればいいですか?」
「とりあえず体を洗っておいたらどうだ?近くに川がある。
そのあとは……まあ適当にくつろいでいてくれ」
「兄ちゃん! あれ使ってみてもいい?」
「ロイ!」
ロイが指差した先には俺が持っている剣があった。
俺の家にはさまざまな剣が蓄えてある。
やっぱ男だったら剣を使ってみたいよな。
「けがしたら危ないから俺が帰ってきてからな」
「分かった!じゃあ兄ちゃんが帰ってくるまで待ってるぜ!」
うん。元気がいいのはいいことだ。
「ロイがすいません……」
「これぐらい気にするな」
そういって彼女の頭をなでる。
耳の感触がとても気持ちいい。
「んっ」
彼女は顔を赤くして俯いている。
とてもかわいい。ずっと撫でていたい。
いかんいかん、俺も行かなければ。
「じゃあいってくるな」
そういって馬車を走らせる。
――――――
食糧を買いあとは服だけだ。
ロイの服は大丈夫だ。
しかしライアの服はどうしようか。
女の服なんて分からない…
よーく考えたら女性に服を渡すって結構あれじゃあ……
いやいや相手は子供だぞ。何を考えているんだ俺は。
気を取り直して
いつもの便利屋のところに行く。
「旦那が女性の服を買うなんて珍しいですな」
「まあいろいろあってな」
いつもお世話になっている。
こいつは金さえ払えばなんでも集めてきてくれる。
「では適当に3、4着入れておきますね」
「任せた」
そういっていつも通りお金を渡す。
俺は気づいていなかった……
便利屋の目がいつもより鋭いことに。
「まああいつが売るものなら大丈夫だろ」
服が入った袋を見ながら思う。
家にもうすぐ着くといったところですぐ近くで音がした。
ここら辺ではたまに獣が出る。
いつもは狩って毛皮を売ったり肉を食べている。
今は俺以外にあいつらもいることだしいくら食糧があっても
困らないだろう。そう思い剣をもって音のなった方に行く。
そこで俺は固まった。俺が向かった先には裸の少女がいた。
もちろんライアだ。
長い茶髪が腰のあたりまで伸び背中に張り付いている。
少女が気づいたのかこっちを振り向く
「え……」
振り向いたことにより控えめな胸が俺の視界に入る。
えーとおれはどうすれば……とりあえず
「きれいだね」
じゃないだろ。何を言っているんだ俺は。
「きゃあああああ! なんでいるんですかぁ!」
真っ赤になって両手で体を隠す。
「ごめん。音がしたから獣かと思って」
「とりあえず後ろ向いてください!」
そう言われ後ろを向く。
もうちょっとみたかったなぁとか思いながら。
「お! お帰りー兄ちゃん。あれ? 姉ちゃんも一緒だったの?」
「まあそこで一緒になってな。服も買ってきたぞ。悪いがライアの
服は俺には分からないから適当に見繕ってもらった」
そう言って二人に渡す。
「ありがとな兄ちゃん!」
「本当ありがとうございます」
まあ喜んでもらえてよかった。
「さてこれからどうする?何かしたいこととかあるか?」
「稽古してくれよ!」
ロイがそう言ってきた。
剣か……
「使ったことはあるのか?」
「昔から結構使ってたよ!」
そうなのか。その年で昔からというのは気になるが
まあいいだろう。
「じゃあどれくらいの実力か知りたいし
実戦形式で打ち合ってみるか」
「ほんと! やった!」
「ただし使うのはもちろん木刀な」
「あ~くそーまけたぜ兄ちゃん。さすがだなぁ」
打ち合った結果、俺は勝った。
勝ったがギリギリの勝負だった。
獣人族の身体能力もあるのだろうがそれ以上に
剣の腕がすごかったのだ。
下手したら俺よりも上かもしれない。
実戦経験の差がなければ確実に負けていただろう。
まさか13歳ぐらいというのにここまでやるとは……
「お前いつから剣を学んでいた?」
「んーと20年前ぐらいかな?」
「20年か、ってちょっとまてお前何歳だ?」
「生まれてからは30年ぐらいかな? どうかしたのか兄ちゃん」
どうみても13歳ぐらいにしか見えないのに30歳だと……
ということはひょっとしてライアも?
ライアの方に視線を向ける。
「私も今年で40年ぐらいですよ? 獣人族は人間より成長が遅いんです」
二人とも俺より年上だったのか。
驚きすぎて固まっていた。
そして夕飯。
「まさかお前らがそんなに生きていたとは」
「まあ精神年齢? は見た目どおりですよ」
いやまあそれは見た目通りっぽいがそれにしてもなぁ。
「そういえばお前たち魔物はなぜ人間と争っているかしっているか?」
そう、これは聞こうと思っていたことだ。
「確かあなた方は昔魔物が襲ってきてそれに対抗するために
争いを始めた。魔物たちがいつも襲ってくる場所は魔物の
力を弱めるための何かが封印されているとされてますね?」
「ああ、だいたいその通りだが……なぜそこまでしっている?」
「俺の村にいた人間が教えてくれたんだよ!」
魔物の村にいた人間?
「ロイの言うとおりたまにいるんですよ。森で迷ったりして
魔物の村に来てそのまま過ごす人間が」
「そうなのか……」
「話がそれましたね。ええと、大昔も魔物と人間は争っていました。争い始めて100年後ぐらいには魔王様と呼ばれる者が現れました。
魔王様は魔物をまとめ上げ人間と共存できるようにと手を尽くしお互いに手を
出さないという条約を結ぶまで至りました。そのとき魔王様は人間に裏切られ
体を裂かれました。その体が様々な街に封印されています」
「その街ってのが魔物が襲う街なのか?」
「はい。その通りです。そして魔王様の力はほかの魔物たちにも
力を与えるのです。そして魔物のほとんどが魔王様に恩を感じ
ていました。だからほとんどの魔物が魔王様を救おうとしています」
「じゃあ俺の村はなぜ襲われたんだ!? 一回しか襲われたことはないぞ!」
「それは……」
「それはね兄ちゃん、生贄なんだよ。
魔王様の体を封印するために神の力を借りているからね。
神に対する生贄が必要なんだよ」
「生贄だと……?」
「そうです。人間たちはその結界を維持するために
一年周期で大量の人間を殺しているのです」
俺の家族は人間に殺されたのか……?
いままでずっと魔物が村を襲ってのだと思っていた。
周りの人もそういっていた。
ということは俺が恨むべき物は魔物じゃなく人間なのか?
「ちょっとまて。その話が本当だという証拠はないのか」
「これは村にいた人が言っていた話ですが人間の王都という
場所の地下には大量の奴隷と住処がない人がいますよね?」
「ああ、聞いたことがある。結構人数がすんでいるらしいな」
「今まではその人達が犠牲になっていたそうです。
しかし人がいなくなったせいで最近は村を生贄にしているそうです。
ここ数年村が滅んでいませんか」
確かにここ数年で滅んだ村がある。
俺の村は、俺の家族は、生贄に、
人間に殺されたのか。
「それを続けているのは王族か?」
一般に知られてないということは王族、または
その周りの奴らが隠しているのだろう。
「恐らくそうでしょうね。昔裏切ったのも王でしょうし」
俺は魔物じゃなく人間を恨むべきだったのか。
いや、元とは言えば魔物のせいか?
だがそれも昔人間が裏切ったせいだ。
それなら俺のやることは一つしかない。
そいつらを殺す。
そのための準備も必要だな……
その前にこいつらもどうにかしないとな。
最低限こいつらをどうするか決めときたいな。
「さて、もう寝るか。お前らは中のベットを使ってくれ」
「そんな、悪いですよ! 私たちは外で寝ますから!」
「いや、いいよ。中で寝てくれ。お前らの布団も
買ってきているからさ」
これも食糧や服と一緒に買ってきておいた。
「いいじゃん姉ちゃん。お世話になろうよ。
ここにいるのもあと少しだろうしさ」
ロイがそう言ったことで折れたのか
「うう、ではせっかくの善意を無下にするのも悪いし
お世話になります……」
「よし! じゃあそういうことで! 明日からは
お前らの行く先を考えるとしよう」
そういい俺たちは寝る。
俺は外で木に寄り掛かる。
あいつらの言うことはすぐに信じられるものではなかった。
だが不思議と信じる気になっている。
なんでだろうか……?
あの二人とあって、俺は魔物を殺す気がなくなっていた。
本当に恨むべきものが魔物ではなかったと分かったからだろうか。
いや、魔物と人間の争いで人間だけではなく
魔物も家族を失ったものがいるということに
気づかされたからだろう。
これ以上俺みたいなのを作らないためにはどうしたらいいのだろうか。
争いをとめる? いまこの争いを止めるためにはどうしたらいいのだろうか。
そんな方法思いつきもしない。
というかそもそも俺は家族を殺された恨みで
魔物を殺していたんだよなあ……
あいつらと会ったせいでそんなことを
考えてしまっている。
あいつらだけでなく俺もどうするかな。
そんなことを考えながら眠りについた―――
朝、いつも通りトレーニングをする。
そして朝食を作り終わる頃に二人が起きてくる。
「おはよう。よく眠れたか?」
「おはようございます……」
ライアはまだあまり目が覚めてないのか
眠そうに目をこすっている。
対照的にロイは朝から元気だ。
「兄ちゃんおはよー!」
「おう! 飯できてるぞー」
「やった!」
三人で飯を食べ始める。
途中でライアの目が完全に覚めたのか、
「す、すいません! いろいろお世話になっているのに
手伝いもしないなんて!」
「だから気にするなって」
「そういうわけには……今度は手伝わせてくださいよ」
ライアが睨むような目でこっちを見てくる。
どうやらライアは少し面倒くさい性格のようだ。
「さてと、なにか思いついたことはあるか?」
朝食が終わってから俺たちは話し合いを始めた。
無論これからのことについてだ。
「えーと、魔物と人間が共存している村があるらしいです」
「魔物と人間が共存している?」
「はい。争いが嫌になって集まった方が作り上げたそうです。
噂ではどんな者でも受け入れるそうです。私たちはそこに行こうと思います」
そんな村があったのか……
少なくとも人間側では知られていない。
しかし、
「戦いに参加しないことについて文句を言う奴らとかいるんじゃないのか?」
「詳しいことは分かりませんがいう魔物はいないそうですよ」
なんとも不思議な村だろうか。
「じゃあ今日にでも出発するのか?」
なるべく早く出たほうがいいだろう。
その方が見つかる可能性も低い。
「それですが……このままお世話になりっぱなしも悪いので
せめて恩を返してからにしようかと思いまして……」
ライアが頬を赤く染めながら言う。
なぜ頬を赤く染めるのだろうか?
となりでロイがニヤニヤと笑っている。
「ということで兄ーちゃん、もうちょっとここにいさせてもらうよー」
「まあ別にかまわないが……」
正直俺はこいつらがまだここにいるといって嬉しくもあった。
こいつらと一緒にいるのは不思議と楽しかったからだ。
それから三日間俺はライアとロイと楽しく過ごした。
ロイとは剣の稽古をしたり、
ライアとは獣人族がよく使う身体強化の魔法について
いろいろと教えてもらった。
なぜこの魔法かというと俺に一番役に立つからだ。
なぜ今まで学ばなかったか言うと人間側にはなぜか
この魔法が使える人が少ない。
ライアに聞いてみると、
「えーと、人間と魔物では魔法の使い方が違うんですよ」
そういって詳しく説明してくれたが
俺にはさっぱりだったのでどうしようもなかった。
あいつらは明日、ここを出てその村とやらに向かうらしい。
夜、俺は思っていた。
このままこの日々が続けばいいのになと……
それほどあいつらと過ごす日々は楽しい。
あいつらにずっとここいてもらおうか?
しかしそれが無理なことは分かっている。
こんなところに住んでいたらいずればれてしまうだろう。
俺はもう魔物を殺すつもりはない
俺の家族が死んだ本当の原因は人間のほうだったのだ。
いままで殺した魔物には償いようがない。
だからせめて魔王様とやらの封印を解くのを手伝おうと思う。
それで少しは償えるだろうか?
兎に角、あいつらが出て行ってからの
話になるだろう。
さてどうするかな。
そんなことを考えていたら家の中からライアが出てきた。
「ん? どうしたんだ」
「いえ、ちょっと眠れなくて。フレアさんも?」
「まあそんなところだ」
ライアは俺の横の木に座る。
「フレアさんはこれからどうするんですか?」
「俺は……」
俺が答えられないでいると
「私、フレアさんには死なないで欲しいです」
「死なないでほしい?」
「はい、フレアさんはこれから命を投げてまで
なにかをするつもりでしょう?」
まあ、命を捨てても構わないとは思っているが
「なんでだ?」
なぜライアがそういうのかが分からない。
「私とロイはフレアさんに助けられました。
恩人には死んでほしくないですよ。それに……」
そういうとライアは俺の胸に飛び込んできた。
俺が驚いていると、
ライアはこう言った。
「私が殺すからですよ」
そういいライアは俺の胸に短剣を突き立てる。
「そんな……なんで?」
「なんで? そんなの決まっていますよ。
私の親を殺したからに決まっているじゃないですか」
「君は恨んでないと……」
「恨んでない? そんなわけないですよ。あなたが助けてやるって言ってくれた
おかげでこうやって復讐することができました。感謝していますよ」
俺はただこいつらを救おうと思っただけなのに……
今まで魔物を殺してきた罰なのだろうか?
俺は死んでしまうのか……
「これからお前達はどうするんだ」
「私達はその魔物と人間が一緒に生きている村にでも行ってみようかと思っていますよ。
争いもしたくないですしね」
それなら俺みたいになることもないだろう。
それならそれでもいいかもしれない。
俺が死ぬだけなんだから。悲しむ人もいないだろう。
「では、サヨウナラ」
そういってフレアが剣を振り下ろした。
それからこいつらがどうなったかは分からない。
ただ、何事もなく幸せに暮らしてほしいな……
殺してしまった。この恩人をだ。
私は最初助けられた時からこの人を殺すつもりだった。
だけど話しているうちにだんだんと恨めなくなってしまっていた。
それどころか好きになり始めていた。
助けてくれ、そして世話をやいていてくれたこの人を。
この人が魔物を殺してきたことは確かだけれども
この人が来なかったら私たちはしんでいただろう。
もう一人の男がこなかったら母も助かっていたかもしれない。
もしかしたらこの人と一緒にすごせる未来もあったかもしれない。
だけれどもう遅い。
そんなことを考えるのはやめて先のことを考えよう。
これから弟と二人で……
母のためにも、私を助けてくれた、私が殺した人のためにも……