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空の王子


「ソレイユ様。また、大臣を死刑になさったのですか?」


 玉座の間にも劣らぬほど美しい女王の自室で、一人の女性がお茶の準備をしながら女王にそう話しかけました。


「えぇ、私の命令に従えないと言ったものだから」

「次から次へと死刑にしてしまっては、いずれ誰もいなくなってしまいますよ」


 女性はため息を一つ吐いてから諭すように言いました。


「私の言う事が聞けない者などいらないわ。それに、他の者がいなくなってもあなただけは側にいてくれるのでしょう?」

「それはもちろん。ソレイユ様が許してくださる限り私はずっとお側におりますわ」


 女性はそう言っていとおしそうにソレイユに微笑みました。


「なら心配いらないわ。うん、やっぱりルーナが淹れた紅茶は特別美味しいわね」


 ソレイユは紅茶を実に美味しそうに飲みながらそう言いました。

 ルーナはプラチナブロンドの髪に月の様な銀色の瞳で、太陽の女神の様な輝く美しさのソレイユと対極で静かで穏やかな雰囲気で月の女神のような姿と周りの召使達に言われている美しい女性でした。そして、ルーナはわがままなソレイユが唯一側にいて欲しいと望んだ幼馴染の召使でもありました。

 周りの人々がどれほどソレイユを恐れてもルーナだけはソレイユをとても大切にしており、ソレイユの望みは全てかなえてあげるほどでした。


「実はソレイユ様。至急お伝えしなければならない事があるのですが」

「何?」

「明日は月に一度の海の向こうのマーレ国から商人たちが来る日なのですが」

「えぇ、知っているわ。彼らはいつもとても珍しい物を持ってきてくれるもの」


 ソレイユは珍しい物や美しい物が大好きでマーレ国の商人がやってくるのをいつも楽しみにしているのだった。


「実はその船にマーレ国のスカイ王子もご一緒に乗って来られるとのことでして」

「まぁ、本当に?」


 ソレイユは驚いたようにルーナに聞きました。


「はい、マーレ国とデエス国は商人の行き来は多いにも関わらずそれ以外の交流があまりにもないのでぜひ一度訪れて、両国の交流を深めたいと申されているようでして」

「そうなの。マーレ国のスカイ様ねぇ、いったいどんな方なのかしら?」

「商人たちは頭が良く、剣の腕は一流、容姿も整っていて、何より誰にでも分け隔てなく優しい方だと一様に褒め称えていました」

「へぇ、そんなに素晴らしい方ならぜひともお会いしたいわね。まあ、それがただの身内贔屓でなければだけれど」


 ソレイユは興味をひかれたように微笑みながら言いました。


「御招待いなさいますか?」


 ルーナはそんな様子のソレイユに気づいてそう尋ねた。


「えぇ、準備をお願いね」

「かしこまりました」




***************




 次の日ソレイユは馬車に揺られながら港に向かった。


「ソレイユ様、港が見えてまいりましたわ」

「あら、もう船は着いているみたいね。早くスカイ様にお会いしてみたいわ。もっと急いでちょうだい」


 港には見渡す限りに人がいた。ソレイユたちが王子がどこにいるのかと思い見渡すと、ソレイユたちに近づいてくる男性が一人いた。


「失礼ですが、もしかしてソレイユ女王でいらっしゃいますでしょうか?」


 男性はソレイユにそう話しかけた。


「えぇ、あなたはもしや」

「はい、マーレ国王子スカイです」


 スカイは微笑みながらそう答えた。

 スカイは背が高く輝くような綺麗な金髪に空色の瞳で商人たちが言っていた様に美しい青年だった。

 そんなスカイをソレイユは一目で気に入った。


「はじめましてスカイ様。今回はわざわざ我が国にお越しいただきありがとうごさいました。よければ我が城に来てマーレ国のお話などを聞かせていただけませんか?」


 ソレイユは極上の微笑みを浮かべながらそう言いました。


「えぇ、もちろん。今回は両国の交流を深めたくて参りましたので、我が国のことを少しでも多く知っていただければ嬉しいです」


 スカイは微笑みながらそう言った。




***************




「まぁ、マーレ国にはそんなものがあるのですか?」

「えぇ、今度よければ我が国から贈り物として届けさせましょう」

「本当ですか!楽しみにしておりますわ」


 ソレイユはマーレ国の話をスカイに聞きながら実に楽しそうに笑いました。


「ねぇ、ルーナ。スカイ様は本当に素敵な方ねぇ」


 その日の夜、ソレイユは自室でルーナにうっとりとしながらそう言いました。


「そうですわね」


 ルーナはソレイユに優しい微笑を向けた。


「ずっと側にいてくださらないかしら」

「ソレイユ様が望まれるなら必ずそうなるようにいたしましょう」


 ルーナは何ともない様にそんなことを言った。


「そうね。この国の物は全て私の物。スカイ様は異国の方だけれどこの国にいる間は私の物も同然なのだから」


 そう言ってソレイユは幸せそうに微笑むのだった。




 そのことスカイは客室で一人、月を眺めていた。


「なんて美しい人なんだろう。あんなに美しくて優しい女性は今まであった事が無い」


 ソレイユと同じようなうっとりとした表情を浮かべながら。





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