第二話:始まりの鐘
三人はおしゃべりしながら校門へと歩いている。
辺りはもう真っ暗だ。
夏ならばまだこの時間は明るい。
だがやはり冬はそうもいかない。
もう夜と言ってもおかしくない暗さだ。
三人はその不気味さをまぎらわすかのようにあえて楽しくしゃべった。
木でできた扉を過ぎ、校門へと急ぎつつ歩いた。
すると、ようやくと言うべきか、校門が見えた。
校門と言っても特に門らしきものはなく、生徒たちはそこにある二宮金次郎の像を目印にしている。
昼間はなんとも思わない像だが、今は気味が悪くてしかたがない。
三人がその二宮像を確認した時、
キーン コーン
カーン コーン
チャイムが鳴った。
いつもは手があいている教師がチャイムを鳴らす。
だがすべての学年の授業が終わった今、チャイムが鳴るはずはなかった。
三人はその不自然な出来事に後ろを振り向いた。
時刻は四時四十四分。
どうにも恐ろしい数字だ。
「なんでこんな時間に鳴るんだろう?」
白い服を着ている泉が二人に聞いた。
しかし二人にも分かる訳もなく、首を傾げた。
その時
ガシャン ガシャン
あまり聞いた事のないような音がした。
三人が同時に振り向くとそこには、いつも気にはしないが見ている二宮像がいた。
歩いている。
三人はその事を分かっていた。
しかし心の中にある何かがそれを否定していた。
二宮像は普段あげる事のない顔をあげ、三人を見た。
三人は恐ろしくなり、後ずさりした。
二宮像は表情を変えないまま歩きだした。
三人は迫る二宮像と同じスピードで後ずさった。
二宮像は次第にスピードを早くする。
三人もだんだん二宮像に背を向け走ろうとした。
と、
ガシャン ガシャン
ガシャン ガシャン
ガシャガシャガシャ
二宮像も走りだした。
「き、きゃああぁぁぁ!!!!」
三人は二宮像に追いかけられるような形になり、走りだした。
時間は未だに四時四十四分だ。