カワセミとヤマセミ
川の神様は鳥が大好き。御屋敷には何羽もの鳥が一緒に住んでいます。鳥たちも川の神が大好き。
そんな鳥たちの中に、まるで兄弟のようにそっくりな二羽がいました。
一羽はカワセミ。もう一羽はヤマセミ。
二羽はとっても仲良しで、時には一緒に歌って、時には一緒に舞いを踊って川の神を楽しませていました。そんな彼らの特技は遠くまで素早く飛んでいける事。
ただ、どちらも体毛は真っ白。川の神ですら、どっちがどっちか見分けがつきません。
「カワセミや、ちと野イチゴを採って来てはくれんかのう」
「神様、僕はヤマセミですよ」
「ヤマセミや、すまんが、桑の実を集めてきてはくれんかのう」
「神様、僕はカワセミですよ」
こんな事が頻繁に起きていました。
ですが、仲良しの二羽はそんな事は気にもしていません。なぜなら、いつもの事だから。
そんなある日の事でした。
川の神が病気で倒れてしまいました。
鳥たちは慌てふためき、川の神様を元気づけないとと言い合いました。
舞いが得意な者は、川の神の寝床の周りで一生懸命舞いを踊りました。歌の得意な者は、朝から晩まで歌を歌って聞かせました。そして、狩りの得意な者は木の実を採ったり、川の魚を獲ったりして川の神に食べてもらいました。
ところが、川の神は一向に元気になりません。それどころか、どんどん具合が悪くなっていく始末。
そんな川の神を見て、ミミズクが言いました。
「川の神に元気になってもらうには、もっと遠くの川から魚を獲って来ねばならんだろうな」
希望が見えて一瞬喜んだ鳥たちですが、川の場所をミミズクが言うと、多くの鳥たちは尻込みしてしまいました。それは雪の舞い散る北の川と、常に雨が降り虹のかかる南の川。どちらも非常に遠く、しかも方や極寒、方や雨。
ですが、カワセミとヤマセミは、自分が行くと名乗り出ました。大好きな川の神のためなら、そんな事は気にしないと。
こうしてカワセミは虹のかかる南の川へ、ヤマセミは雪の舞い散る北の川に向けて飛んで行きました。
カワセミとヤマセミが飛び去ってから、何日もが経過しました。
川の神の病気はその間にもどんどん悪化。このままでは死んでしまう。もう他の鳥たちには祈る事しかできません。川の神を見て朝から夜まで泣きはらす者まで出る始末。
そんな中、遠くの空がキラキラと輝いたのです。そう、カワセミとヤマセミが帰ってきたのでした。
ですが、カワセミは魚を届けると、雨に濡れた疲労でそのまま倒れてしまいました。
ヤマセミも、魚を届けると凍えきってそのまま倒れてしまいました。
カワセミとヤマセミが命懸けで届けてくれた魚を食べた川の神は、そこから驚く早さで元気を取り戻していきました。それを見て鳥たちは大喜び。
「皆、ずいぶんと心配をかけたな。おかげでこの通り、元気になったぞ。ありがとう」
笑顔で御礼を言う川の神の周りで、鳥たちは大はしゃぎ。ですが、川の神はすぐに気が付きました。鳥たちの中にカワセミとヤマセミがいない事に。
「おや? カワセミとヤマセミはどうしたのだ?」
川の神がたずねると、バタバタとはしゃいでいた鳥たちは、急に飛ぶのを止め、川の神から顔を背けました。すると、鳥たちを代表してミミズクが川の神の前に立って言いました。
「川の神に魚を食べさせようと、カワセミは虹のかかる南の川へ、ヤマセミは雪の舞い散る北の川へ行ったのです」
「まさか、死んでしまったのか!?」
「まだ生きてはいます。ですが、もう……」
川の神は慌てて寝床から飛び出し、二羽が眠る寝床へ向かいました。
カワセミは雨粒が羽に張り付いている。ヤマセミの方は雪の粒が羽に張り付いている。共に息絶え絶え。このままでは死んでしまう、そう川の神は感じました。
「これはいかん! 皆の者、頼みがある。わしがこれから言う物を今すぐ集めてきてくれ!」
川の神が集めて欲しいという物は、木の実、土の中の虫、川の生き物など非常に種類が多く、それらを集めるため、全ての鳥たちが一斉に館から飛んで行きました。
徐々に鳥たちが館に帰って来て、川の神がお願いした物を持ってきました。川の神が、それらをゴリゴリとすり潰していくと、二つの丸い薬が出来上がり。黒い薬はヤマセミへ。緑色の薬はカワセミへ。
どうやら黒い薬は非常に辛いらしく、ヤマセミは黒い汗をたらたらと流しました。
緑の薬の方は非常に苦かったようで、カワセミは全身の羽を逆立てました。
「これで良い。明日には元気になるであろう」
川の神が安堵の微笑みを浮かべると、鳥たちはまた大はしゃぎしました。
翌朝、いつものように鳥たちが川の神に挨拶にやってきました。その中にはカワセミとヤマセミの姿も。
二羽とも元は真っ白だったのですが、ヤマセミは雪山のような黒い模様が、カワセミは虹の一部を貼り付けたような羽の色となっていました。
「おお、おお。元気になったようじゃな。これはまた、ずいぶんと綺麗な羽の色になったのう。今回は二羽とも本当に頑張ったのう。感謝してもしきれぬよ」
川の神に褒めてもらえて、カワセミとヤマセミは誇らしい気持ちで一杯でした。
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