お城の客室は、連れ込み宿ではありませんっ!!
※めっちゃ下ネタ。というか、終始下ネタ。でも、エロは無い。
※下ネタなので、R15推奨。
舞踏会……それは、華やかで煌びやかなお城の一大行事の一環です。
主導する王族の方は勿論、参加される貴族の方々も気合が入っております。
それは無論、実際に準備に動く使用人達も同様。計画の段階から様々な品物の手配をし、調整をし、掃除をし、配慮をし、…………etc.etc.
と、大変な労力を掛け、数日前からお城は修羅場状態。無事に開催され、怒涛の仕事量に忙殺され、何事も無く……とは行かず、細々としたトラブルが幾つも起こりつつも深刻になる前に対処し、舞踏会を大禍無く終えて漸く一息と言ったところでしょうか。
しかーしっ、舞踏会の翌日は・・・準備から開催中の修羅場とはまた違った修羅場が繰り広げられるのですっ!!
わたくし、王城勤務の使用人の中で中間管理職をしておりますが――――
とりあえず、アレっすわ。お城の客室は、連れ込み宿じゃねぇっての!
本来、他国からの来賓や遠方から来てタウンハウスを持っていない王候貴族、王都内で宿を取れなかった人、体調が急変した人、思わぬ事故に遭ってしまった人、保護が必要だと判断された方々が使用するのが、王城の客室の正しい在り方なのですが――――
色事大好きなエロ貴族! 煌びやかな舞踏会に当てられて盛り上がっちゃった若い男女! まあ、偶に同性同士もいますが……お城に来た記念にと、『なぜにそういう方面の記念にするっ!? もっと違う思い出作れよっ!!』という田舎のお上りさん! 更に更に、嫌がる人を無理矢理襲う外道や、媚薬や怪しい薬を盛って既成事実を画策するクソ共!
被害者の方の心身や尊厳の回復には、王城勤務の者一同よりお祈り申し上げますが――――
痴情の縺れで、男女や同性同士の愁嘆場や修羅場で刃傷沙汰とかマジ勘弁しろ! 無理心中するなら他所でやれ! もしも心中が成功したら、お城の怪談が増えるだろうが!
怪談は他人事で聞くのは楽しいが、自分の居住区(王城住み込み)でそんなん実際にあったらマジ気分悪いだろうがっ!! 殺人事件のあった事故物件に嬉々として住みたい奴は少数派だろっ!?
そんな、いろんな意味でアレな人々によって、ぐっちゃぐっちゃに汚されたお部屋の掃除をする可哀想な使用人の修羅場が始まるのです!
ちなみに、未成年には刺激が強過ぎるので、成人済みの使用人達がヤった後の部屋を清掃することになっています。
当然ながら、めっちゃ不人気だっ!! なんなら、舞踏会の時期に「有給取ろう!」とか、「身内に不幸があって……」とか言い出す奴もいるし。
無論、有給は却下。本当の病欠(診断書持って来い?)や誰が見ても明確な当日の体調不良、事故などなど、どうしようもないアクシデント以外で休もうとしたら普通に欠勤扱いだし、査定に響く。最悪、勤務態度に問題ありとして解雇されます。
身内の不幸などは、調査した上で嘘だと判ったら一番やべぇ部屋のお掃除に回すという鉄の不文律があるので、そのリスクを取る人は非常に少ないのですが。
そう……わたくし共王城勤務の使用人一同は、王城へ勤務できたことを誇りに思っている。故に、思う! わたし達は、手前ぇらのヤった後のぐっちゃぐっちゃどろっどろの汚い部屋や寝具を清掃するためにお城で働いてんじゃないやいっ!! と、心より強く、強く思っている!
寝具を洗濯する洗濯係なんか、舞踏会の後の客室の洗濯物を、それはそれは腐った魚の目の如く、光の消えて昏く濁った瞳の、死んだような表情で洗うのだ。
わかる! 人間の体液なんて、基本的に涙以外は大抵汚物のようなものだ。家族や恋人などの洗濯物ならともかく、見ず知らずの他人の体液塗れの寝具なんぞ、特殊性癖でも持ち合わせていない限り、見たくも触りたくもないだろう。
彼ら彼女らは、仕事だから仕方なく、心底からガチで厭だろうが洗濯してくれる勇者なのだ。心よりの尊敬と感謝、労いを捧げたいと思いますわ。
しかし、そうも言ってられない大変いたましい事態が起こってしまったっ!?
洗濯係の数人が、同じ性病に罹患。原因は、汚物を洗濯したときの飛沫感染だそうで……療養のため、労災で長期休暇の申請を通しました。
ばっちい汚物は、熱湯にぶち込んで消毒すれば……と思うでしょうが。残念ながら、情事後あとの寝具は、熱湯にぶち込むことはできません。
なにせ、ナニの体液はタンパク質汚れだからです! タンパク質汚れは、四十度以上のお湯で固まってしまい、繊維の奥に消えない汚れとして残ってしまうのです!
なので、性病罹患の危険性があっても、まずは水で手洗いしてある程度綺麗にしてからでないと、熱湯消毒ができないのですっ!! ちなみに、血液汚れも同様ですね。タンパク質汚れはまず、水洗い。これ、洗濯の基本です。
性病を撒き散らす迷惑千万な輩は、腐れ落ちて苦しみ抜いてもげればいいのにっ!! 誘いに乗る、淑女にあるまじき尻軽肉食ビッチ共も、胸部装甲が垂れ落ちて形崩れて萎めばいいのにっ!!
そして、こんな最悪な事態になってしまったからには、わたくし達も自分の身を守るために立ち上がらねばなるまいっ!!
というワケで、国王陛下へ直談判ですっ!!
クソ面倒な書類申請をして、半月掛けて謁見の許可を捥ぎ取りましたわよっ!!
「陛下へ直訴致しますわっ!! 舞踏会後の客室清掃係、及び洗濯係に危険手当を所望致しますっ!! これは、使用人一同の嘆願ですっ!! ちなみに、この嘆願申請が聞き入れられない場合、王城勤務の洗濯係、及び清掃係は性病罹患の危険性がある職場だと周知してくださいますよう、お願い致しますっ!!」
「はあっ!? いや、ちょっと待てっ! 一体どういうことだ?」
「どうもこうもございませんっ!! 危険手当については、以前より申請させて頂いておりました! けれど、一向に危険手当が付く気配が無いではありませんかっ!? そして、この度、洗濯係数名が同じ性病に罹患してしまったのですわよっ!?」
「いや、性病は個人の問題ではないのか? その……罹患した者の生活態度が乱れているとか、他の理由がだな……」
困ったような表情で、なんというか、面倒だと思っていそうな返答ですこと。
しかーしっ、わたくしが直談判するからには、今までのように曖昧に、のらりくらりと躱せるとは思わぬことですねっ!!
「王城居住で規則正しい生活をし、異性間の問題も特に無い人物ですが? しかも、とある色欲旺盛な貴族が王城に宿泊した際の寝具の洗濯をして、後に性病が発症したとのことですが? 宮廷医師の診断では、洗濯の際の飛沫感染の可能性が高いとのことですが? それでも陛下は、個人間の問題である、と仰せでしょうか? ちなみに、その色欲旺盛な貴族は……」
と、件の貴族の名前を告げると陛下は非常に渋いお顔をされました。あの方ならば、さもありなんと言ったお顔でしょうか?
「それに、下々のことまで陛下はご存知ないかもしれませんが。とある貴族の痴情の縺れに巻き込まれ、正妻と愛人が鉢合わせ……と言いますか、正妻が愛人をナイフで刺し殺そうとしていたところを止めようとした使用人が正妻に刺されてしまったり、酷い傷を負うような事故が数年に一回の頻度で起きています。過去には殉職した者もおりますわね」
殉職した使用人が今も城内で働いている、という怪談になっていましてよ?
「または、運悪くハニートラップで暗殺された貴族……それも粉を掛けられていた相手の第一発見者になってしまい、犯人であると疑われ、数ヶ月に渡って拘束され、疑いは晴れたものの王城内で殺人犯扱いされ、城にいられなくなって辞職してしまった使用人もおりますわ。ちなみに、犯人はその間に他国へ逃亡。現在も捕まっておりません」
たらりと、固まった陛下の額から汗が流れます。
こちとら、使用人の中間管理職。過去に起きたことは、調べようと思えば調べられる。
「それに、ご存知ないかもしれませんが……無礼な方は、王城勤務の使用人をご自分宅の使用人と勘違いなさっているようで、非常に横柄で横暴な態度を取られることもしばしば。なんでしたら、侍女やメイド達に夜伽を申し付ける恥知らずな痴れ者もおります」
セクハラや無体を働いた瞬間、尿管結石並みの激痛を伴ってナニが即行もげればいいのに。※尿管結石は、世界三大激痛のうちの一つと言われてるよ!
「更には、直属の上司を呼べと暴れる方もおりますわ? ああ、ちなみに、わたくし共侍女達の直属で最上位の上司は、王妃殿下に当たります。このような無礼者の戯言に王妃殿下をお呼び出しするのは忍びないので、毎度適当に言い包めておりますが。高位貴族がそのような無礼な戯言を申すのであれば、経験不足な使用人はいつか本当に王妃殿下のことをお呼び出しするかもしれませんわね。情事の後の気配が色濃く残る……というか、ぐっちゃぐっちゃどろっどろの臭くて汚い、性病に罹患する可能性のあるデンジャラスなお部屋へ。と、なりますが」
にっこりと言い募ると、
「そんなこと、我が妻にさせて堪るかっ!!」
陛下が真っ青なお顔で怒鳴りました。
「貴族と申しましても、皆が皆、紳士淑女で品行方正というワケではありませんものね? 中には、このように非常識な方も・・・かなりの頻度で交じっておりますもの」
溜め息を吐きながら言うと、
「わかった。危険手当は、許可しよう」
陛下が疲れたように、危険手当の許可を出してくださいました。
「ありがとうございます、陛下。ついでに、王城内での物品破損に対し、破損させた当人へと弁済を要求しては如何でしょうか? 寝具など、どろっどろぐっちゃぐっちゃの体液が付着していても、洗濯すればある程度使用できはするのですが……性病罹患の危険性があるので、いっそのこと廃棄、焼却処分してしまうと取り決めませんか?」
「・・・洗濯して、使っているのか」
非常に嫌そうに、陛下のお顔が顰められます。
「ええ。リネンなど、王城で使用する高級寝具ですから。それなりのお値段がします。一々買い換えていては、予算が幾らあっても足りませんわ。ですが、王城勤務の使用人の健康の方が大事です。というワケで、事後だと判明した寝具は廃棄。最悪、マットやベッド、家具なども全て廃棄しなければいけないこともありますし。それを国家予算から捻出されるよりは、使用して破損させた当人へと請求するのが筋かと」
「それは……確かに。その通りだな。というか、家具全てを総取り換えとは、どういうことなのだ?」
「特殊性癖ですわね。排泄物を××たり、身体へ××××ったりなどでしょうか? 翌日は、物凄く酷い悪臭が漂っているそうですよ? その部屋の清掃に当たった人が、突然失踪してトラウマを発症し、王城勤務を辞めるくらいには」※自主規制。
「人ン城でナニしてんのっ!?!? というか、そんな性癖あって堪るかっ!?」
陛下の絶叫が響きました。
「ええ。わたくし共も、心よりそう思っておりますわ。でも、過去にそのような事情で開かずの間となった部屋もあるようです」
お城って石造りだし、残念ながら特定の部屋だけを焼却処分とかはできませんもの。
「とんでも過ぎる穢らわしい理由だなっ!? 幽霊や化物の話の方が断然マシだったっ!?」
「ええ、本当に……ある意味、モンスター共ではありますが。王城の客室は連れ込み宿ではございませんものね! 盛るなら自宅か娼館でヤれ! と。あ、そうそう。他にも……」
「まだあるのかっ!?」
「はい。陛下はご存知ないでしょうが……陛下が王妃殿下や王子、王女殿下方のために整えさせた庭園でも、夜陰に乗じて盛っている連中がおりまして。偶に、庭園が酷く荒らされていることがあるそうで。庭師達が、どこぞの男の体液が掛かった花や植物を、それはそれは無念そうに処分していることが度々ございますわ」
「人ン城の庭でナニしてんのっ!?!? 外でヤるとか露出狂の変態共かっ!?」
再びの絶叫。
「はい。わたくし共も、心底そう思っておりますわ。以前には、王女殿下のためにご用意された薔薇の迷路がそのような輩に荒らされてしまい、庭師達が憤怒しながら、『このように穢された迷路を、王女殿下に歩かせるワケにはいかない』と。泣く泣く取り壊しておりましたもの」
「度々迷路が取り壊されてた本当の理由がそれかっ!? うちの姫が大層悲しんでいたんだぞっ!? よし、王城内の物品破損をした貴族共へ請求書を送ることは議会で可決させよう……いや、いっそのこと勅令を出すか」
「まあ! そうして頂けると助かりますわ!」
王城の庭園を破損とか、資産の少ない木っ端貴族や落ち目貴族は、一瞬で破産決定でしょうねぇ? 自業自得以外のなにものでも無いのですが。
「それと、直属の上司を呼び出せなどと言って来る輩には、『国王を呼べということか?』と、問うがいい」
「ありがとうございます!」
ああ、「直属の上司を呼べ!」で、『では、国王陛下をお呼び致します』と返したときの、身の程知らず共の顔が蒼白に変わって慌てる様が目に浮かびますわぁ♪
「そなた達が、これ程に身体を張っているとは思わなかったぞ。いつも、我が王城を清潔に保ち、快適に過ごせるよう尽力してくれていること、感謝する」
「勿体ないお言葉でございます」
こうして、舞踏会後の後始末に驚愕&激怒した国王陛下によって、王城内の客室に宿泊して物品破損をした貴族には、後日家門へと請求書を送ることが勅令として出されたのです。
支払いが滞ったり、バックレようとした場合、国から直々に公式の書類として、『異性or同性と同衾し、王城の寝具を汚損した請求』と、税収に上乗せするとのお達しだそうですわ。末代まで残る、最悪な黒歴史の記録になりますわね♪
思いっ切り恥を掻けばいい! 破廉恥色欲野郎共ざまぁっ!!
これにより、王城内で盛る貴族は多少減りました。まあ、懲りない人もいますが・・・そして、請求書がガチで実家や婿入り先に届いて最悪離縁されたり、家族や主家に王城出禁にされている人もいるのだそうで、その噂が流れた途端に大幅に減りましたが。
しかーし、まだまだ懲りない輩……その場で大金を払えばいいと思っているクズ共もいるので、我ら王城勤務の使用人達の、いろんな意味での修羅場は続くのですっ!!
今度、また国王陛下に直談判をしてみようかしら?
物品破損をした連中には弁済請求だけでなく、実際に自分が汚した汚物の洗濯をさせてみるのはどうでしょう? と。
王城で宿泊中に盛ったカップル(男女or同性同士、偶に複数人)が、翌朝に汚物と共に洗濯場に連行され、晒し者になって洗濯係に扱かれ、泣きながら自分達で汚した寝具を洗う光景が見られるようになったのは、数ヶ月後のことでした。
ハッ、エロ貴族共ざまぁっ!!
――おしまい――
読んでくださり、ありがとうございました。
めっちゃ下ネタですみません。でも、エロは無いというヤトヒコクオリティでした。(*ノω・*)テヘ
なんか、ラブホテルの客室清掃員がとんでもねぇ経験をした、というコラム記事を読んだときに思い付きました。(/∀≦\)
ほら? 舞踏会の後、盛り上がった気分で……という話がよくあるじゃないですか。アレって、王城勤務の使用人達に清掃や洗濯、後始末させてんだろうなぁ……と、思ってしまったので。
盛られたあとの部屋や庭園の後始末って、絶対厭だろうな、と。王城勤務使用人が、勤務環境改善のために国王陛下に直談判したらこんな感じになりました。(*`艸´)
この話を読んだ方は、そういう場面を目にしたらもう、後始末する人達が気になって思わず同情してしまうことでしょう。((`・∀・´))
ブックマーク、評価、いいねをありがとうございます♪(ノ≧▽≦)ノ
ヤトヒコの下ネタ満載。でもエロは無いよ! な話は、
『俺の暗殺を企んでいる(と思しき)婚約者に婚約破棄を叩き付けたら、社会的に抹殺されたっ!?』
『「まずは……手前ぇよりも上位の存在に犯されて来い。話はそれからだ」』
『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』
ですかね。一番上の『コメディ系な短編』リンクから飛べます。色欲王子や傲慢国王、その他モブがざまぁされて酷い目に遭ってます。(((*≧艸≦)ププッ
性犯罪者共へ苛烈なざまぁを! という話をお求めなら、
『真に遺憾ながら・・・あちらで『ヒャッハー!』していらっしゃるのがお宅の姫様です。』
ですかね。書いてる奴的には、私刑が割とエグめ。『真に遺憾ながら~』は連載短編。こっちみたいに下ネタメインではないですが、一話だけめっちゃ下ネタ。
ヤトヒコのマイページから、シリアス系な短編シリーズに入ってます。
感想を頂けるなら、お手柔らかにお願いします。
そして、現在体調不良のため、『感想の返信要らないよー』という方は、その旨を書いて頂けると助かります。(´-ω-)人
ありがとうの顔文字→『★-(ゝ∀・` Thank You!´ゝ∀・)-☆』をお返ししようと思います。