俺様ナルシスト男には豆を投げ付けて、鬼退治致しました。
「わぁー痛い痛い辞めてくれー」
「鬼は外ー鬼は外ー悪い鬼は町から出て行けー」
「わぁー助けてくれー、リーナ俺が悪かった、頼むから呪いを解く方法を教えてくれ」
私は鬼を一瞥して背を向けて歩き出した。
「俺様の婚約者になれた事を有り難く思え」
「はい、シドニー様」
「俺様と婚約したい女は沢山居るのだ、毎日毎日俺様に感謝して過ごせよ」
「はい、シドニー様」
私はリーナ、家同士が決めた婚約者シドニーと1ヶ月後に結婚する予定なのだ。そして会う度に俺様に感謝しろよと言うのだ。
シドニーはとにかくナルシストだ。
確かに顔は良い方だと思うが、凄い男前という訳ではない。
シドニーの両親は一人息子のシドニーが可愛くて、幼い頃から甘やかして育てて来たのだが、流石に育て方を間違えたと今では後悔していた。
私は結婚したら一生シドニーに女中のように扱われてボロボロになり年老いて行くのだと思い
結婚生活に絶望していた。
そんなある日、結婚して家を出ていた姉のニーナが実家に遊びに来たのだ。
私は姉に我慢出来なくなり、シドニーの態度があまりにも酷いと泣きながら話した。
するとニーナは激怒して私に言うのだ。
「何で黙って言う事を聞いてるの?」
「だって、家同士が決めた結婚だし今更別れる事なんて出来ないし」
すると「私に良い考えがあるの、私に任せて」と姉が言った。
そして、数日後姉が又遊びに来たのだ。
姉は手に袋を下げて笑顔で私に言った。
「シドニーを町の広場に呼び出して頂戴」
「えっ、シドニーを呼び出して何をするの?」
「シドニーに思い知らせてあげるのよ」と姉は満面の笑みを浮かべた。
私は使いを出しシドニーを広場に呼び出した。
そして、姉と共に広場に向かった。
すると、広場には沢山の女性が集まっていたのだ。
その後シドニーがお洒落をして現れた。
「リーナ何の用だ、俺様を呼び出すなんて何様のつもりだ」
すると、集まっていた女性達が「きゃー素敵、こっち向いて」と叫び出したのだ。
シドニーは「全く俺様は存在自体が罪なんだな」と言いながら、女性達にウィンクをしたのだ。すると「きゃー素敵、眩し過ぎてこれ以上見ていたらクラクラしてしまいます」と姉のニーナが言いながらシドニーに何かを手渡した。
シドニーは「これは何かな?」と姉に聞くと、
「シドニー様のそのお顔は女性には眩し過ぎます、このお面を被って下さいませんか」と言った。
「眩しすぎるなんで俺の顔は本当に罪深いな」とニヤニヤしながらもシドニーはお面を被って見せた。
「あぁーこれでシドニー様にお近づきてなれるなんて思わないんだよ、さぁ、皆思いっきりやりやがれー」と姉の掛け声と共に、何と回りにいた女性達が一斉に豆をシドニー目掛けて投げ付け出したのだ。
「わぁー、痛い痛いこれはどういう事だ」とシドニーが叫ぶと姉は「あらー知りませんでしたの?この鬼の面は代々家に受け継がれた呪いのお面、一度被るともう外す事が出来なくなり、
徐々に顔の皮膚と同化して行き鬼になってしまう恐ろしいお面なのよ。ただ一つだけ呪いを解く方法が有るのだけど」
「それはどうすれば良いのだ?頼む教えてくれー」
「その方法は…私忘れてしまいましたの、リーナなら知ってるかも」
「リーナ頼む教えてくれ」
私はシドニーを一瞥して背を向けて無言で歩き出した。
勿論その後婚約破棄もした。
えっ、呪いを解く方法?
それは女が投げた豆を地面に這いつくばって全部食べたら解けるんじゃなかったかしら?
でも、もうナルシストの男なんてまっぴらごめんよ。
その後私は平凡だけどとても優しい男性と結婚して幸せになりました。