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とある女学生の独白
ああ、痛い。どうして私はこんな何もない道端で死ななくてはいけないの。
それはもうすぐ夏になるかという頃。
私は田舎のただの女学生で、今日は私の婚約者に会うのだと聞かされていた。
いつもより急いだのがいけなった?
話しかけてきた級友を無視して、田んぼに囲まれた畦道を、気持ち早歩きしていただけだった。
遠くから飛行機の低い唸り声がして振り返った。我が国が戦になってから何度も見てきた忌々しい鉄の塊がこちらに向かってくる。
走って、走って走って!
あとちょっと、あとちょっとで一番近い防空壕だから、そう思った次の瞬間。
背中が熱くなって、焼けるような痛みが襲う。
あぁ、痛い!熱い!痛い、痛い、痛い痛い痛い!
口の中に広がる鉄の味、どうして私がと思う。
今日は婚約者に会うのだ。母が、化粧をしてくれる約束をしていたのに。どうして、どうして。
意識が遠くなる。眠くて仕方ない、瞼を落とす瞬間に聞こえたのは誰の声だったのだろう。